2015 年 64 巻 1 号 p. 34-39
染色体上にAmpC型β-lactamase産生遺伝子を有しているEnterobacter cloacaeは,抗菌薬の存在下で過剰産生が誘導される。今回,臨床検体から分離されたE. cloacae菌株を用いてAmpC型β-lactamase過剰産生株の検討を行った。第3世代セフェム系薬感受性株でディスク拡散法による誘導後,シカベータテストにてAmpC型β-lactamaseを検出した株は3.7%であり,CAZをSub-MIC値(MIC以下の濃度範囲)に調整した液体培地の振盪培養による誘導では80%という結果となった。後者はヒト体内の環境に近く,臨床分離株からAmpC型β-lactamase検出が無い場合でも,患者体内で過剰産生株が存在する可能性があると考える。血中濃度のピーク値がMICを超えない抗菌薬投与量はAmpC型β-lactamase過剰産生を誘導させ難治化する恐れがあるため,適切な投与量を守った治療を行うことは非常に重要である。