昨今超音波診断装置の発達により,比較的容易に末梢神経を描出することが可能である。しかし,加齢が末梢神経の形態に及ぼす影響を超音波検査で解析した報告は認められない。そこで今回正中神経に与える加齢の影響を超音波検査で評価できるか検討したので報告する。対象は健康なボラティア34名(平均値±SD 38.3歳±14.4,22~78歳)の右手34手で施行した。超音波検査を施行する際,12 MHz高周波リニアプローブを用いて検査を行った。運動神経伝導速度(MCV)は既に加齢による影響が報告されているため,運動神経伝導検査も同時に施行し,超音波検査で測定した正中神経の断面積とMCVとの相関を検討した。MCVは加齢により有意に減少していたが,断面積は有意な減少を認めなかった。MCVと断面積との相関を確認したところ,20歳~30歳代に統計学的有意差を認めたが,残りの年齢群に有意差は認められなかった。今回の結果から,MCVで加齢による影響は確認できたが,超音波画像上神経の断面積で確認はできなかった。手根管症候群のような病的診断に超音波検査は有用であるが,加齢による影響は観察できないと考えられた。