抄録
わが国の3大死因のひとつである悪性新生物は一貫して上昇を続け,死因の第1位であり,その中でも消化器癌は半数以上を占め,胃癌においてはその羅患率も高い。そこで日常診療と人間ドックでの上部消化管内視鏡検査を調査し,その有効性と詳細情報を知りたいと思い検討した。当院は,胃・腸疾患に特化した民間病院であり人間ドック健診部も併設している。当院において上部消化管内視鏡検査下で採取され病理組織診断を行った2004年から2008年までの計7,661症例を癌か否かに分類し,年齢・性別・日常診療・人間ドック,内視鏡診断(肉眼診断),病理組織診断について分析し,結果を対比して検討した。癌の内視鏡診断(肉眼診断)では,早期癌(表在癌)と診断されたのは,日常診療では約51.7%であるのに対し人間ドックでは80%と高く,早期発見・早期治療の重要性を裏づける結果となった。また,人間ドックでも日常診療でも早期癌は陥凹型II cが最も多いが,内視鏡診断で非癌の生検組織から癌が発見されるなど,内視鏡検査から病理検査へのプロセスが重要である。今回の検討で明らかとなった特徴は,①内視鏡施行率が人間ドックでは男性の方が多く,生検検査の0.7%に癌が発見され,②日常診療での病理組織診断による癌発見率は男性:4.3%,女性:2.8%と男性の方が高く,③癌の年齢分布は,人間ドックは50歳代,日常診療は60歳代がピークであった。この特徴は人間ドックで内視鏡受診率を高める有益な情報と考える。