医学検査
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技術論文
急性冠症候群の診断における高感度心筋トロポニン測定の臨床的意義―ROC解析によるAUC値の比較―
久住 裕俊村越 大輝小杉山 晴香雨宮 直樹薗田 明広島田 俊夫
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2016 年 65 巻 6 号 p. 636-641

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抄録

ACSの客観的な診断指標として心筋バイオマーカーの測定が重要となっているが,心筋バイオマーカーの選択は施設規模や施設を取り巻く環境に影響を受けるため,個々で異なっているのが現状である。本研究において,我々は,急性胸痛を主訴として当院救急外来を受診し,総合的にACS・非ACSと診断された患者を対象に,ACS診断における高感度心筋トロポニンI,T(hs-cTnI, hs-cTnT)測定の有用性についてH-FABP,CK-MB massと比較検討した。ROC解析の結果,hs-cTnI,hs-cTnT,H-FABP,CK-MB massのAUC値はそれぞれ0.955,0.946,0.827,0.896,Cutoff値は155.5 pg/mL,91.0 pg/mL,25.6 ng/mL,6.4 ng/mLであった。また,各マーカーのAUCを各々2マーカー間で比較検討した結果,hs-cTnI,hs-cTnTはH-FABP,CK-MB massと比較してACSに対する診断能力が高く,CK-MB massはその中間的な診断能力を有する心筋バイオマーカーであると考えられた。従来の心筋バイオマーカーによるACSの診断能力は決して低くはないが,高感度心筋トロポニンははるかに優れた診断能力を有していた。高感度心筋トロポニンはACSの早期診断・早期治療に有用な心筋バイオマーカーとして,第一に選択すべきであると結論する。

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© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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