医学検査
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早期公開論文
早期公開論文の7件中1~7を表示しています
  • 片岡 浩巳
    原稿種別: 第1部 情報科学概論
    論文ID: 24J2-1
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー 早期公開

    情報科学(computer science)とは,「人間が持つ情報処理能力をコンピュータ(いっしょに考える機械)で実現させる研究を行う科学」と定義づけられ,現代の日常生活においても重要な役割を果たしている。我が国においてもSociety 5.0「第5期科学技術基本計画」が打ち出され,目指すべき未来社会の姿を支える基盤的な学問領域といえる。身近に発生する情報はアナログ信号として得られるが,現在主流に用いられているノイマン型のコンピュータ(プログラムをデータとして記憶装置に格納し,これを順番に読み込んで実行する)で処理する場合はアナログ信号をデジタル信号に変換して「0」と「1」の2種類で表現したデータの集まりを用いて大規模な情報処理を行う仕組みとなっている。アナログ信号からデジタル信号に変換するにはA/D変換装置を用い,コンピュータで数値計算をした後,データの記憶,人工知能アルゴリズムを適用して社会を支えるシステムへと応用される。本章では,アナログからデジタルへの変換技術の基礎とデジタルデータを用いた数字や文字の表現,画像や動画の仕組みについて解説する。

  • 片岡 浩巳
    原稿種別: 第1部 情報科学概論
    論文ID: 24J2-2
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー 早期公開

    近代論理学はAND,OR,NOTの3つの論理回路の組み合わせを用いることにより,論理的な演算であればどのような複雑な論理でも表現が可能である。この3つの基本論理回路を用いてXOR回路が考えられ,次に,XOR回路とAND回路から半加算回路が生まれ,1ビットの足し算が可能となる。さらに半加算回路を2つ組み合わせると複数桁の足し算が可能な全加算回路が生まれた。次に2の補数の理論を用いることで,全加算回路とNOT回路の組み合わせで引き算が可能となる。さらに掛け算と割り算は,シフトレジスタと呼ばれるビットを左右にシフトさせることができる回路から実現できる。現在主流で使われているノイマン型コンピュータは,AND,OR,NOTの3つの論理回路から,演算装置,記憶装置,そして制御装置を構成し,記憶装置にプログラムとデータを配置して,プログラムの手順に従って効率的に演算ができる仕組みを構築している。本章では,これらの仕組みの理解を目的として論理回路の基礎とコンピュータの仕組みについて解説する。

  • 中原 貴子
    原稿種別: 第2部 医療情報管理学
    論文ID: 24J2-12
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    臨床検査部門の管理運用を支援するシステムには,検体検査,生理検査の各業務を行う情報システムがあり,オーダエントリシステムや電子カルテシステムなどを含む病院情報システムと独立して構築されている。検体検査では検査情報システム(LIS)の下に,採血支援システム,血液製剤の管理を行う輸血管理システム,感染制御部門と連携した細菌検査システム,病理診断を行う病理情報システムが導入されている。検体検査では,検査依頼,患者受付,検体採取,検体前処理,分析,精度管理,報告の順に業務が進められる。大規模な病院では,各自動分析装置を搬送ラインで接続した検査自動化システム(LAS)を導入している。また,生理検査では,受付管理,準備作業,実施管理,精度管理,報告の順に業務が進められる。超音波検査やMRI検査などで扱っている画像や波形などの情報は各モダリティから医用画像システム(PACS)に送信された後,結果が必要な検査ではレポートを作成することにより基幹システム(HIS)の参照機能で検査結果を確認することができる。

  • 吉田 美帆
    原稿種別: 第2部 医療情報管理学
    論文ID: 24J2-15
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    遠隔診断には様々な形態があるが,画像伝送を用いるものとしては遠隔画像診断があり,遠隔放射線診断と遠隔病理診断の2つが主体である。近年,病理スライドをデジタル画像化する技術や画像解析処理技術,AIなどの発展,ネットワーク整備が進み,遠隔病理診断の保険診療が遠隔放射線診断に大きく遅れたもののようやく可能となった。遠隔病理診断は,従来顕微鏡画像の一部分のみの静止画で行っていた。近年WSI(whole slide imaging)というプレパラート全体をデジタル画像化する技術が確立されたことで,モニター上で病理診断を行うシステムへの移行が構想されている。この技術は遠隔診断だけでなく,日常診療や教育,コンサルテーション,精度管理などへの活用が期待される。しかし,高額なスキャナの導入,膨大な画像データの保管管理やネットワーク環境などWSI環境管理の導入は必ずしも容易ではないため,導入に際してこれらの課題を認識しておく必要がある。本章では,遠隔診断の中でも,遠隔病理診断システムに重点を置き概要ならびに運用の実際を解説する。

  • 上野 民生
    原稿種別: 第1部 情報科学概論
    論文ID: 24J2-4
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    データ構造は,配列,リスト,キュー,スタック,グラフ,ハッシュテーブルなどを利用して大量のデータを効率的に管理するための仕組みである。データへの接続速度,格納後の変更,探索など,それぞれの用途に応じて最適なデータ構造が選択される。アルゴリズムはデータ構造を基盤として運用される。探索アルゴリズムでは線形探索,二分探索,ハッシュ探索について,ソートアルゴリズムではバブルソート,選択ソート,クイックソートについて,それぞれの利点と計算法を述べる。再帰アルゴリズムは,ある関数の中に,その関数が含まれ計算結果を再利用する仕組みである。さらに,アルゴリズムの最適化の一環としてループと分岐予測を紹介する。

  • 大井 悠成
    原稿種別: 第1部 情報科学概論
    論文ID: 24J2-7
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    情報システムは現代社会において不可欠であり,医療業界でも極めて重要な存在である。情報システムの開発プロセスは要求定義・要件定義,外部設計,内部設計,開発,テストの段階に分かれており,開発プロジェクトを効果的に管理するために,V字モデルが用いられる。要求定義・要件定義ではシステムの目的や機能を明確にし,外部設計ではシステムの基本となる設計を行い,仕様を決めていく。内部設計では機能をプログラム単体に分割し,詳細に設計し,開発ではその設計に基づいてコーディングが行われる。テストではシステムが要件を満たし,期待どおりに動作するかを確認する。システム開発プロジェクトを計画,実施,管理するための構造化された方法論やアプローチとして,開発プロセスモデルがある。開発プロセスモデルとして,ウォーターフォールモデルやアジャイルモデル,プロトタイピングモデル,スパイラルモデルなどがあり,プロジェクトの性質や要件に合わせて適切なモデルを選択することが重要である。テストにおいては,単体テスト,結合テスト,システムテスト,受け入れテストといった段階的なアプローチが取られ,品質保証と問題やバグの発見が主な目的である。また,ホワイトボックステスト,ブラックボックステスト,グレーボックステストなどのさまざまなテスト手法が存在する。

  • 大井 悠成
    原稿種別: 第2部 医療情報管理学
    論文ID: 24J2-9
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    医療情報は簡潔に言えば,医療に関する情報のことであり,診療過程で個人から発生する診療情報から医療関連施設・地域・国レベルで必要とされる医療情報,伝達価値が高い診断・医療に関する知識情報まで医療情報に含まれる。医療情報には大きく分けて4つの特性,①マルチメディア性,②内容の多層性,③内容の連続性・時系列データ,④高い機微性がある。①診療の過程で検査機器などから発生する情報は表現形態が多種類であり,コード情報や数値情報,画像情報など表現形態は様々である。②医療情報は内容も多彩であり,定性的な結果表現をするものもあれば,定量的に結果表現するものもある。検査結果や患者の主訴や生活背景など,多層的で様々な情報がデータベース上に展開されている。③医療情報は患者が診察を受けて,検査をして,治療を受けるといった一連の診療過程の連続的な繰り返しのなかで発生している。時間の経過に従って発生している医療情報は時系列データとして扱う必要がある。④医療情報は個人情報の塊であり,プライバシーの保護と守秘性の確保が求められるため,医療情報を取り扱うすべての関係者は高い倫理性が必要である。

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