臨床検査技術の進歩はめざましいものがある。特にIT技術の進歩により現在でも数多くの新しい臨床検査項目の拡大がなされている。さらに,医師や看護師等の病棟スタッフは安心安全を求める現在の医療体制から多忙な状況であり,日々進化する臨床検査に対応できず,臨床検査領域については臨床検査の専門家に任せたいとする要望が多い現状がある。この状況を背景に厚生労働省では平成19年から,各医療機関の実情に応じた適切な役割分担を推進するよう周知すると共に,日本の実情に即した医療スタッフの協働・連携の在り方等をとりまとめた平成22年4月30日付けの厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」を提言した。これを受けて日本臨床衛生検査技師会(以下日臨技)では,病院の臨床検査室で検体を待ち,結果だけを返すという受動的臨床検査技師から,患者の居る場所に出向き,患者に寄り添い医療の一端を担うことのできる能動的な臨床検査技師への新生を目指し,現在まで様々な取り組みを行ってきた。本稿ではこれまでの日臨技としての取り組みを紹介するとともに,臨床検査技師の方向性について論じてみたい。
日本臨床衛生検査技師会(以下,日臨技)がまず取り組んだのは病棟で必要となる臨床検査技術の整備である。もともと臨床検査技師が積極的に取り組んでいたチーム医療としての感染管理,栄養管理,糖尿病指導などに加えて,病棟では,採血などの検体採取,検査説明・相談,認知症患者への対応,医療安全,救急医療技術が求められる。たとえば検体採取では,採血に加え法改正により鼻腔や表在などの検体採取が新たな業務として追加された。検査説明・相談では正確なデータを報告するだけの分析指向の見方だけでなく,検査情報を活用し臨床検査技師自らが診療に参画することを見据えた「検査説明・相談ができる臨床検査技師育成事業」を全国展開した。また,急増する認知症患者へ対応するために創設した認定認知症領域検査技師制度は,病棟においても求められるスキルである。医療安全への考え方についても同様である。また,病棟で発生するインシデントは検査に関連することも多く散見され,それらに対応するとともに医療安全全般のマネジメントができる人材育成を目的とし日臨技による医療安全管理者養成講習会を創設した。本講習会は医療安全対策加算算定に必要な医療安全管理者となる要件をクリアしたカリキュラムであり,受講者は具体的な安全管理と品質管理の基本事項の確認から実務指導に至るまでを研鑽し,病院における安全管理体制を構築するために必要な幅広い知識を習得する。また患者への直接的な関わりが増えていく中で必要とされる,患者急変時への対応能力向上と救急現場に求められる臨床検査技術に精通した人材を育成するために認定救急検査技師制度を創設した。
以上のように,従来から行ってきたチーム医療の技術(感染管理・栄養管理・糖尿病指導等)に加え,それら5つの技術も病棟において必要と推測される各事業として構築し,今後は業務定着化と更なる発展を目指す。
平成27年3月に日臨技会長宮島喜文氏に2つの病棟業務関連報告書を提出した。一つはメディカルスタッフ業務推進ワーキングからの提言書1)であり,もう一つは病棟業務検証委員会報告2)である。
メディカルスタッフ業務推進ワーキングでは病棟において臨床検査技師はどのような関わりを持つのかを提言書としてまとめ上げた。要約すると臨床検査には検査前工程・検査工程・検査後工程と3つの工程に区分されるが,多くは検査工程に重きを置き,その前後の工程への関わりは希薄である。2025年問題への対応と,これからの臨床検査技師が医療の現場で必要不可欠な存在となるために,3つの工程全てに関わる臨床検査技師の創出の必要性を提言した。また,病棟業務検証委員会では医療資源(人材)の効果的かつ効率的な活用方策および患者サービスの向上の観点から病棟における臨床検査技師の業務を模索すべく,先進的に病棟業務実施をしている施設へアンケート調査を依頼し検証した。医師・看護師・患者へのアンケート結果から臨床検査技師の病棟配置の有用性について確認でき,臨床検査技師が病棟で実施すべき業務について項目として設定した“病棟業務一覧表”の作成が成果として報告された(Table 1)。
医師 | 看護師 | 看護補助 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
採血管や検体容器の管理 | 10~30分 | |||
採血管作成(準備)(3~5分) | 30~60分 | |||
採血業務(通常・緊急・負荷採血)(3~5分) | 1~2時間 | 8:30~9:00で60~100名採血を検査科で行っている | ||
静脈ラインの確保(生食ロックまで)(3~5分) | 1~2時間 | |||
負荷試験補助(糖尿病検査では耐糖試験など準備)(5~10分) | 1~2時間 |
医師 | 看護師 | 看護補助 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
蓄尿管理(説明を含む)(3~5分) | 30~1時間 | |||
蓄尿の尿量・採取(3~5分) | 20~30分 | |||
蓄尿の廃棄(1~2分) | 10~30分 | |||
バルーン留置患者の尿量測定と検体採取(3~5分) | 20~30分 | |||
バルーン留置患者の尿の破棄(2~3分) | 10~30分 | |||
ドレーン留置患者の量測定と検体採取(3~5分) | 20~30分 | |||
ドレーン留置患者ドレーンの廃棄(1~2分) | 10~30分 |
医師 | 看護師 | 看護補助 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
表在(皮膚)や鼻腔からの検体採取(2~3分) | 10~1時間 | |||
簡易キットでインフルやノロ,溶連菌,アデノなどの測定 | 一般や細菌室で行っている | |||
動脈血採血の補助と測定(5~10分) | 10~30分 | |||
骨髄穿刺の補助(15~20分) | 20~30分 | |||
血液培養採取やその他の体腔液採取の補助(10~15分) | 20~30分 | |||
病棟にてグラム染色 | 細菌室で行っている | |||
POCT機器を用いて検査を行う(15~30分) | 10~30分 | |||
留置式尿道カテーテル挿入の介助(10~30分) | 10~30分 | |||
動脈ラインからの間接的採血(5~10分) | 5~10分 | |||
外科処置の介助(10~20分) | 10~20分 | |||
中心静脈カテーテル挿入の介助(10~20分) | 10~20分 | |||
動脈ライン挿入の介助(5~10分) | 5~10分 | |||
挿管等の介助(5~10分) | 5~15分 |
医師 | 看護師 | 看護補助 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
各種検査説明(10~30分) | 10~2時間 | |||
各種検査結果説明(医師の同意が取れたもので診断は除く) | 10~1時間 | |||
自己血糖測定患者の教育および測定手技の指導(10~20分) | 10~20分 |
医師 | 看護師 | 看護補助 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
緊急心電図検査(5~10分) | 検査技師以外記録しない(胸痛時間に合わない) | |||
心停止・心静止時の蘇生(10~60分) | 10~1時間 | 10~1時間 | ||
ルーチンでの心電図検査(5~10分) | 20~30分 | |||
緊急時の超音波検査(10~15分) | 10~15分 |
医師 | 看護師 | 看護補助 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
輸血製剤の搬送と保管 | 10~20分 | 保管は看護師は行っていない | ||
輸血に関する説明(5~10分) | 1~5分 | |||
不規則性抗体陽性者に対する説明(10~20分) | 1~5分 | |||
輸血同意書取得時の立ち会い(10分程度) | 10分 |
医師・看護師・その他の職種からの問い合わせに応える | ||||
医師・看護師・その他の職種へ資料提出 | ||||
医師・看護師・その他の職種からの学習会依頼に応える |
医師 | 看護師 | 看護補助 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
バイタルサイン測定 | 30~60分 | |||
清拭などの患者ケア | 30~90分 | |||
患者搬送や移動 | 30~90分 |
機器の精度管理 | ||||
簡易検査機の選定・導入 |
業務の効率化(問い合わせ窓口の1本化) | ||||
検査関連インシデントの減少 | ||||
研修医や新人看護師への検査関連教育の定着 | ||||
看護師病棟定着率の向上 |
次に,病棟で臨床検査技師が採血・鼻腔や表在からの検体採取・検査説明など臨床検査に関連する業務を看護師に代わって実施し,実施回数や所要時間などから病棟業務の定量化を図った。加えて医師・看護師を対象に臨床検査関連業務に対する負担感などについてアンケート調査を実施した。実地検証施設には中規模施設として聖隷横浜病院(300床),大規模施設として聖隷浜松病院(700床)が選定された。いずれも臨床検査技師を特定の病棟に配置し,予備調査で確認した検査関連業務を実施してもらい多元ワークサンプリング法の固定30秒間瞬間観測法を用いて作業時間の測定や作業動作内容を記録した。その結果,採血・検体採取,検査説明・相談,心電図,検査情報管理,簡易検査などの実際の業務時間が測定され,全てを合計すると,病棟で実施される検査関連業務は毎日5時間から6時間程度であることが判明した。さらに医師・看護師対象のアンケート結果では臨床検査技師配置前後の変化として,業務負担感の軽減・インシデントの軽減が挙げられた。また患者対象のアンケート結果からは,検査結果の説明を希望する意見が多く出された。この事業報告については本号に掲載しているので参照いただきたい3),4)。
病棟業務推進の方策は3つの事業を実施した。
1. 病棟業務推進施設情報連絡会の設置連絡会では病棟業務に関しての情報交換や普及・啓発活動をリアルタイムに行うために,ネット上のグループウェアシステム(サイボウズLive)を活用した。平成29年3月現在756施設が登録している。本システムを用いて病棟業務に関するリアルタイムなアンケート調査を実施し,その結果を第65回日本医学検査学会(平成28年9月:神戸)にて報告した。アンケート調査結果の詳細については,本号に掲載しているので参照いただきたい5)。
2. 第65回日本医学検査学会や各支部学会における病棟業務ミニシンポジウムの実施当学会では病棟業務関連の一般演題39演題をシンポジウム形式で開催した。当日の発表会場は連日立ち見がでるほど盛況な企画となった。その後,各支部学会でも盛況に開催され,会員の関心の高さを窺うことができた(Table 2)。
時間 | 施設名 | 演者 | 演題内容 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
(第8会場)神戸国際会議場 5階 504 + 505会議室 | 10:30~11:30 | 9月3日① | 日臨技企画 | 聖隷横浜病院 | 吉田 功 | 聖隷横浜病院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み① |
聖隷横浜病院 | 杉岡 結衣 | 聖隷横浜病院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み② | ||||
日臨技 政策調査課 | 板橋 匠美 | 聖隷横浜病院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み③ | ||||
日臨技 政策調査課 | 柿島 博志 | サイボウズLiveを利用した「臨床検査技師の病棟業務」推進に向けた情報提供 | ||||
15:00~16:00 | 9月3日② | 1 | 白鷺病院 | 前田 富士子 | 透析施設のフットケアの取り組み | |
2 | くまもと温石病院 | 本田 和恵 | 当院における臨床検査技師によるノロウイルス検査の現状 | |||
3 | 荒木脳神経外科病院 | 尾茂 麻衣子 | 当院における臨床検査技師の業務拡大への取り組み | |||
4 | 因島医師会病院 | 向井 聖子 | 当施設における臨床検査技師の病棟業務に関する試み | |||
5 | 行田総合病院 | 原 誠則 | 臨床検査技師の病棟業務に関する当院の取り組み | |||
6 | 豊田厚生病院 | 中根 生弥 | 当院における鼻腔咽頭からの検体採取実施と効果について | |||
7 | 亀田総合病院 | 金井 麻衣 | 臨床検査技師によるインフルエンザ医療関連感染症の予防 | |||
8 | 亀田総合病院 | 野村 俊郎 | 新・検体採取による業務拡大への取り組み | |||
16:00~17:00 | 9月3日③ | 1 | 相馬中央病院 | 齋藤 由枝 | マンパワー不足でも病練業務に関わるメリット | |
2 | 浦田病院 | 吉本 みどり | 当院の病棟における糖尿病関連検査と指導の紹介 | |||
3 | 八王子山王病院 | 高橋 嘉明 | 当院で実施している臨床検査科の病練採血業務について | |||
4 | 函館五稜郭病院 | 佐藤 孝男 | 心臓リハビリを始めるにあたっての検査科の役割は何か | |||
5 | 竹田綜合病院 | 星 勇喜 | 当院における周術期肺塞栓予防の取り組み | |||
6 | 聖路加国際病院 | 山上 慎二 | 血液ガス分析装置の臨床検査科集中管理の経験 | |||
7 | 近畿大学医学部附属病院 | 前田 岳宏 | 輸血専任技師による病棟・臨床支援のこころみ | |||
8 | 済生会松阪総合病院 | 山本 幸治 | CAG施行患者への採血結果説明の実施について | |||
9:00~10:00 | 9月4日① | 日臨技企画 | 聖隷浜松病院 | 直田 健太郎 | 聖隷浜松病院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み① | |
聖隷浜松病院 | 渡辺 真世 | 聖隷浜松病院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み② | ||||
日臨技 政策調査課 | 板橋 匠美 | 聖隷浜松病院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み③ | ||||
日臨技 | 深澤 恵治 | 病棟業務推進施設情報連絡会へのアンケート調査結果について | ||||
10:00~11:00 | 9月4日② | 1 | 島田病院 | 中村 知世 | 当院における病棟業務へのかかわり | |
2 | 国民健康保険 志雄病院 | 西川 理夫 | 当院での現状 | |||
3 | 熊本第一病院 | 新屋敷 紀美代 | 自施設における臨床検査技師の病棟業務に関する試み | |||
4 | とちぎリハビリテーションセンター | 荒川 正子 | 当センターにおけるチーム医療及び業務拡大への現状と今後の取り組み | |||
5 | さくら病院 | 宮原 瑞恵 | 自施設での検査科の状況と他部門との関わり方 | |||
6 | 北仁会 石橋病院 | 佐藤 さなえ | 小規模検査室における業務拡大の取り組み | |||
7 | 北仁会 石橋病院 | 佐藤 さなえ | 電子カルテを利用した他部門との連携 | |||
11:00~12:00 | 9月4日③ | 1 | 菊名記念病院 | 瀧澤 千里 | 自施設における臨床検査技師の病棟業務に関する試み | |
2 | 増子記念病院 | 山内 直樹 | 臨床検査技師が関わるチーム医療の実践例について | |||
3 | 光ヶ丘スペルマン病院 | 三宅 温子 | 当施設の病棟関連業務の取り組み | |||
4 | 枚方公済病院 | 薮 圭介 | 救急室における検査技師の支援業務 | |||
5 | 飯田市立病院 | 實原 正明 | 業務拡充からみる病棟業務 | |||
6 | NTT東日本関東病院 | 伊藤 ゆづる | チーム医療への新たな試み | |||
7 | 増子記念病院 | 山内 直樹 | 医療安全的見地から見たパニック値報告とチーム医療について | |||
8 | 白鷺病院 | 前田 富士子 | 医療安全 事例検討委員会での検査技術科の取り組み |
各支部学会における病棟業務推進ミニシンポジウム企画
日程 | 平成28年10月1日(土) |
時間 | 11:00~11:45(45分) |
会場 | (第4会場)3階 301B 中会議室 |
座長 | 深澤恵治:日臨技 執行理事 |
演題1 | (山﨑正明)独立行政法人 国立病院機構 さいがた医療センター:当院における臨床検査技師の病棟業務への関わり |
演題2 | (坂本和晃)厚沢部町国民健康保険病院:当院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み |
演題3 | (齋藤浩治)青森市民病院:ベットサイドでの輸血実施時に関する取組みについて |
演題4 | (櫛桁久美)医療法人 日新堂 八角病院:病棟における検体採取業務について |
日程 | 平成28年10月9日(日) |
時間 | 10:30~12:00(90分) |
会場 | (第3会場)1階 イベントホール |
座長 | 丸田秀夫:日臨技 常務理事 |
演題1 | (吉田 功)社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷横浜病院:臨床検査技師の病棟業務に関する試みについて① |
演題2 | (吉田 功)社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷横浜病院:臨床検査技師の病棟業務に関する試みについて② |
演題3 | (平田哲也)重工記念長崎病院:当院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み |
演題4 | (坂口麻亜子)社会医療法人財団白十字会 佐世保中央病院:検体採取における病棟への介入 |
演題5 | (神谷乗敏)社会医療法人 かりゆし会 ハートライフ病院:当検査科の業務拡大と病棟業務取組みの現状 |
日程 | 平成28年10月29日(土) |
時間 | 16:00~17:20(80分) |
会場 | (第1会場)2階 扇の間 |
座長 | 千葉正志:日臨技 執行理事 |
演題1 | (吉田 功)社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷横浜病院:臨床検査技師の病棟業務に関する試みについて① |
演題2 | (杉岡結衣)社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷横浜病院:臨床検査技師の病棟業務に関する試みについて② |
演題3 | (塚原 晃)医療法人社団東光会 戸田中央総合病院:当院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み |
演題4 | (大澤秀吉)医療法人社団淳英会 おゆみの中央病院:臨床検査技師の病棟業務に関する当院の現状 |
演題5 | (土田孝信)秦野赤十字病院:中規模病院における検体採取の取り組み |
演題6 | (石合早苗)順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院:病棟におけるICT業務の取り組みについて |
日程 | 平成28年11月27日(日) |
時間 | 9:45~11:15(90分) |
会場 | (第5会場)7階 第3展示場 |
座長 | 丸田秀夫:日臨技 常務理事 |
演題1 | (直田健太郎)社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院聖隷浜松病院:臨床検査技師の病棟業務に関する試みについて① |
演題2 | (直田健太郎)社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院聖隷浜松病院:臨床検査技師の病棟業務に関する試みについて② |
演題3 | (浜村 寛)出雲医療生活協同組合 出雲市民病院:病棟での検査物品管理業務について |
演題4 | (伊佐田耕人)鳥取県済生会 境港総合病院:臨床検査技師としての,病棟における糖尿病ケアへの取り組み |
演題5 | (斉藤香織)社会医療法人 千秋会 井野口病院:当院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み |
演題6 | (樫山誠也)済生会 広島病院:業務拡大に伴う人員補助コントロール |
日程 | 平成28年12月10日(土) |
時間 | 10:40~11:50(70分) |
会場 | (第1会場)2階 ダイヤモンドB |
座長 | 深澤恵治:日臨技 執行理事 |
演題1 | (山田幸司)JA愛知厚生連足助病院:検査科看護部ワーキングから病棟検査技師活動への試み |
演題2 | (水落富士代)公立南砺中央病院:病棟における検体採取への業務拡大について |
演題3 | (新井一輝)医療法人 医仁会 さくら総合病院:病棟における早朝採血結果の確認,報告について |
演題4 | (坂下真紀子)特定医療法人社団 勝木会 やわたメディカルセンター:病棟における検査備品管理について |
演題5 | (小倉敦子)公立松任石川中央病院:当院における臨床検査技師の病棟業務に関する試み |
演題6 | (水口和代)安城更生病院:当院における新生児センター専任技師の取り組みと役割 |
演題7 | (清水憲雄)磐田市立総合病院:当院での臨床検査技師による病棟採血実施の経緯と現状について |
平成28年2月に病棟業務推進施設情報連絡会の発足式に続き行われた「病棟業務推進講習会」では日本病院会会長の堺先生や国際医療福祉大学大学院教授の武藤先生から,講演していただいた。日本全国から125名が参加した本講習会のグループワークでは,①検査部門スタッフに業務追加の理解を得るための具体的解決法,②施設から病棟常駐検査技師配置の了承を得るための具体的解決法,③施設からの検査部門の評価を高めるための具体的解決法の3つについて沢山の積極的な意見が出されていた(Figure 1)。
病棟業務推進講習会(平成28年2月開催)講習会風景
平成29年2月には大阪・東京の2会場で病棟業務課題解決実践講習会を実施した。本講習会は臨床検査技師による病棟業務を施設内取り入れる際に課題として挙げられる3つの要素“人員不足への対策”,“検査部スタッフの理解獲得”,“施設への説明と了承”について具体的な解決方法を見いだすことを目的とした。基調講演には聖隷横浜病院院長の林先生,日本病院会副会長の安藤先生にご講演いただいた。2会場併せて104名が参加し,講習会の最終セッションでは各講演での内容を踏まえ,先の3つの課題についてどのように対応していくかについてグループワークにおいて討議を行った(Figure 2)。
病棟業務課題解決実践研修会(平成29年3月開催)講習会風景
平成29年3月に実施した病棟で必要な能力開発実践研修会は,病棟で求められる業務に対応できる人材の育成を目的に実践的な知識・技術を習得する場として開催された。病棟という新たなフィールドで業務を遂行するにあたり,他職種の考え方や業務の進め方などについて理解を深めるための座学が用意された。日本看護協会,日本病院薬剤師会,日本モニター学会などからご推薦頂いた講師陣から,コミュニケーションスキルの伝授など多岐に渡り大変有用な内容の講習会となった。講義の終わりには参加者からの切実な悩みについて日臨技上層部がアドバイスをするスタイルを取り,新しい形のパネルディスカッションとして進められた。
このように日臨技では病棟で必要となる技術研修会を企画中であり,この技術研修会を各地臨技に伝達して,日本全国に広めてもらえるような事業を思案中である。もちろん病棟関連の報告会として開催しているミニシンポジウムなども日臨技から支部そして各都道府県へと広めていきたいと考えている。
医療技術の進歩はめざましい速度で進んでいる。私たち臨床検査の業界も同様である。また,最近の医療の話題は人工知能(AI)による私たち医療現場の効果(影響)がメディアや多くの雑誌で取り上げられている。現在の話題は医療資源(ビッグデータ)をいかに診断支援に結びつけるかが主流ではあるが,今後は様々な医療業種へAIの技術を応用した革新的なシステムが実際の医療現場に導入されることが想定される。その時に私たち臨床検査技師がAIに利用され駆逐されるのではなく,AIを管理・使用する立場にいるべきではないかと考えている。そのために必要となるのは患者に直接的な医療を提供し,臨床検査データに基づき他のメディカルスタッフと協働することが必要である。
臨床検査(検体検査)の「病棟」における検査前工程並びに検査後工程については医師,看護師に依存している部分が多い。今回,日臨技の研究成果として臨床検査技師が,医師・看護師の負担軽減および医療の質の向上,そして医療安全確保の観点から病棟でも十分に活躍できることは,本稿で述べた調査や事業によって証明された。病棟業務に進出しようとする臨床検査部門のスタッフは検査内部での業務拡大(病棟進出)の準備と同時に,病院幹部や病棟スタッフなどへの理解を得ることも必要である。また,診療報酬に収載されれば(例えば病棟臨床検査技師加算など)病院幹部の理解も得られやすく,浸透しやすいとの声を聞くが,診療報酬に収載されるには,数多くの施設においての診療の質の向上や効率的な医療への貢献についてのエビデンスが必要となる。そのためにも多くの施設で病棟業務の事例を重ねていただき,その情報を収集・解析し厚生労働省へ提示していきたいと考えている。
今後,より多くの施設で,病棟業務が浸透していくことを期待しながら本稿の結びの言葉としたい。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。