医学検査
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Letter to the Editor
「医学検査」掲載論文の査読に関する疑義について
藤井 和晃
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2017 年 66 巻 5 号 p. 600

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いつも興味深く読ませていただいております。

医学検査に掲載された論文の内容について,査読委員の先生方に確認したいことがあり,Letter to the editorとして投稿いたします。

医学検査Vol. 66 No. 1のpp. 60–67に掲載された「7種の臨床材料を使用した液状化検体細胞診3方法における細胞所見の比較」(香川 昭博氏 ほか)において,ThinPrep(TP)法は,SurePath(SP)法やTACAS(TAC)法に比して判定不可が有意に高率であり,同じLBC法でも標本作製原理や固定液等が異なると,細胞の塗抹量や形態に差異が生じることが明らかになったと結論づけています。

しかしながら,本論文(資料)を拝読する限り,ThinPrepのメーカーであるHologic社が推奨し,かつ機器取扱説明書に記載されている検体処理法が適切になされたか不明です。

著者,共著者が医学検査Vol. 62 No. 5のpp. 597–602に投稿された「ThinPrep法でのCytoLyt液による溶血処理法の検討」は,今回の論文で引用されておりませんが,CyL処理における細胞数について,CyL処理が行われた直後以降,細胞数は多く改善が認められたと記載されておられます。

本論文の著者,共著者は過去の検討から,Hologic社が推奨している方法により,細胞塗抹量が改善されることを承知しているにも関わらず,今回の論文では,TP法での判定不可標本は判定できないレベルの細胞塗抹量であったと記載していることから,適切な検体処理を実施した上での検討ではないと考えられます。

TAC法においては,非婦人科検体に固定保存液TACAS GYNが使用され,メーカーが推奨している非婦人科細胞診用固定液RubyまたはAmberを用いていません。

その一方で,SP法は非婦人科用保存液であるCytoRich Redが検討に使用されていることから,SP法のみメーカー推奨の方法で実施されています。

本論文は,各メーカーにより提示された検体処理,標本作製方法により,適切に検討がなされたかどうかを,査読委員の先生方がチェックされたのか,疑義があります。

会員は,本誌の論文を参考にしながら,日々のルーチン業務に役立てています。そのため査読委員の先生方により精査された適確な論文を掲載することが重要であると考えます。

最後に,今後益々「医学検査」が会員のために発展することを祈念しております。

 
© 2017 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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