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技術論文
BioPlex2200を用いた新規抗EBV抗体スクリーニング検査の性能評価
大金 亜弥永友 利津子久米 幸夫常名 政弘曽根 伸治蔵野 信矢冨 裕
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2018 年 67 巻 1 号 p. 13-22

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Abstract

Epstein-Barr virus(EBV)は伝染性単核症(infectious mononucleosis;以下IM)の病原ウイルスであるが,抗EBV抗体検査が診断に必要不可欠である。その特異抗体には,VCA(virus capsid antigen)抗体,EA(early antigen)抗体,EBNA(EBV nuclear antigen)抗体の3種類があり,初感染ではVCAに対するIgMが,その後IgG抗体が増加し,それらの組合せで病態や病期を判断する。BioPlex2200システム(バイオ・ラッド社)は,マルチプレックス法を原理とした免疫蛍光分析装置であり,抗EBV抗体試薬ではIgGが3種,IgMが2種の抗体の同時測定が可能である。測定結果は,独自の抗体価指標,Antibody-index(A.I.)によって示され,陽性・陰性を判定する。今回,BioPlex2200を用いた抗EBV抗体試薬の基礎的性能評価,および他法との比較を行った。同時再現性は概ね良好であったが,日差再現性は一部の項目にばらつきを認めた。また,干渉物質の影響を受けやすいため,試薬の改善が望まれる。EIA法との一致率は概ね良好であった。本法は,より少量の検体量で迅速に測定結果を報告することができるため,EBV関連疾患の診断に有用であると考えられた。

I  目的

Epstein-Barr virus(EBV)は伝染性単核症(infectious mononucleosis; IM)の病原ウイルスである。EBVは唾液や既感染者からの輸血や臓器移植で感染し,一度感染すると終生ウイルスキャリアとなる1),2)。2~3歳までに感染率は7割前後に達し,ほとんどが不顕性感染である。しかし,急性感染症である伝染性単核症を発症すると,数日から2週間程度発熱,咽頭痛,頸部リンパ節腫脹が持続し,末梢血液中に反応性リンパ球の出現を認め,約8割の患者に肝機能障害を認める1)~3)。多くの症例が発症後2週間以内に対症療法のみで軽快するが4),一部の症例では著明な肝機能異常,巨大脾腫などを合併する場合がある1)~4)。また,通常EBVはB細胞に感染するが,一部の症例でT細胞やNK細胞に感染し,これら感染細胞の異常増殖により様々な組織障害を引き起こす。特に,慢性活動性EBV感染症(chronic active EB virus infection;以下CAEBV)や1),4),5),血球貪食症候群を合併する場合は致死的経過をとる可能性がある6)~8)

現在,EBV感染症の診断には蛍光抗体法や酵素免疫測定法によるEBV特異抗体の検出が用いられている9)。臨床検査で測定されている抗EBV抗体は主に4種類あり,それらの組合せで病態や病期を判断する1),9)。ウイルスのカプシド膜に対する抗体であるEBV-viral capsid antigen antibody(VCA)には,初感染を示唆するIgMと,EBV感染の既往の有無の判定に有用なIgGがある。ウイルスの核に対する抗体であるEBV-nuclear antigen(EBNA)antibodyはIgGであり,伝染性単核症の回復期やEBVの既往がある場合,慢性化した場合に陽性となる3),4)。また,EBV-early antigen(EA)antibodyのうち,IgGは急性期にVCA-IgMより遅れて上昇するが,VCA-IgMに比べて検出期間が長く,回復期以降も陽性となる場合がある2),4)

BioPlex2200システム(バイオ・ラッド社製)は,マルチプレックス法を原理とした免疫蛍光分析装置である。この装置を用いれば,IgGはVCA-IgG,EA-IgG,EBNAの3種,IgMはVCA-IgM,異好抗体の2種を同時測定することが可能である。測定結果は独自の抗体価指標,Antibody-index(A.I.)によって示され,その値により,陽性・陰性を判定する。今回,BioPlex2200を用いた抗EBV抗体試薬の有用性を検討するために,基礎的性能評価,および他法との比較を行った。なお,異好抗体が陽性となる血清を十分に用意することができなかったため,IgM試薬についてはVCA-IgMのみを検討対象とした。

II  対象および方法

1. 対象

2014年6月~2016年3月まで,東京大学医学部附属病院を受診された患者検体の残血清を使用した。検体は3,500 rpm,5分にて遠心分離後,−80℃以下で保存した。本研究は東京大学大学院医学系研究科・医学部倫理委員会の承認を受け実施した。

2. 原理および方法

1) BioPlex2200システムの測定原理

免疫蛍光装置BioPlex2200システムと抗EBV抗体試薬(IgGおよびIgM,以下,BioPlex)は,マルチプレックス法を測定原理とする。抗体試薬中には,IgGキットであればEBV VCA p18抗原,EBV EA-D抗原,EBV NA-1抗原の3種類,IgMキットであればEBV VCA GP125/p18抗原,Horse erythrocyte extract抗原の2種類が,それぞれコーティングされている直径8 μmの磁性ビーズが入っている。また,非特異反応の検出,血清・血漿の種類の鑑別,検出時の揺らぎの補正を管理する,3種類の内部コントロールビーズも含まれている。これらのビーズ試薬と血清5 μL,希釈液を反応ベッセルにて37℃で20分インキュベーションし,専用洗浄液を用いて洗浄し,余分な検体を除去(B/F分離)後,IgGキットは蛍光色素フィコエリスリン標識抗ヒトIgGマウスモノクローナル抗体を,IgMキットは蛍光色素フィコエリスリン標識抗ヒトIgMロバモノクローナル抗体を加え,37℃で10分インキュベーションすることにより,サンドイッチ複合体を形成する。再度B/F分離後,これらの混合液を測定部へ導入する。フローサイトメーターを用いて磁性ビーズを分類した後,532 nmの励起波長を用いて565~585 nmの蛍光を測定して磁性ビーズに結合した抗体を検出し,検量線から結果を判定する。

BioPlexは独自の抗体価指標,A.I.として結果を算出する。0.8 A.I.以下を陰性,0.9,1.0 A.I.を判定保留,1.1 A.I.以上を陽性として判定する。

2) 基礎的性能評価

① 同時再現性

患者検体を用いて4項目それぞれについてプール血清を作製し,10回連続測定した。

② 日差再現性

患者検体を用いて4項目それぞれについてプール血清を作製し,10日間測定した。

③ 希釈直線性

患者検体を用いて4項目それぞれについてプール血清を作製し,BioPlex専用希釈液を用いて10ポイントの希釈系列を作製し測定した。

④ 干渉物質の影響

患者検体を用いて4項目それぞれについてプール血清を作製し,シスメックス社の干渉チェック・Aプラスを用いて,ビリルビンF(Bil-F),ビリルビンC(Bil-C),溶血ヘモグロビン,乳びの影響について検討した。また,干渉チェック・RFプラスを用いて,リウマトイド因子(IgM型reumatoid factor;以下RF)についても同様に検討した。

3) EIA法との比較

シーメンス社製の抗EBV抗体試薬,エンザイグノストはマイクロプレートを用いた酵素免疫測定法(以下EIA法)であり,IgGとIgMを種類別に区別することなくまとめて測定する。そのため,BioPlexで測定した結果については,IgGについては3種のうち1種でも陽性な場合,IgMについてはVCA-IgMが陽性な場合に「BioPlex陽性」とし,判定一致率を求めた。また,判定不一致例の精査にBML社のVCAテスト・BML「IgG」テストと「IgM」テスト(蛍光免疫測定法,以下FIA法),デンカ生研社のウイルス抗体EIA「生研」EB VCA-IgGとEB VCA-IgM(EIA法)を使用した。

4) EBV感染患者における臨床的有用性

EBV感染症の急性期の病態である伝染性単核症の患者について,測定結果と反応性リンパ球の出現率について,診断時とその後について経時的変化を追った。また,EBV感染を契機にEBV関連血球貪食症候群(EB virus-associated hemophagocytic syndrome;以下EBV-AHS)を発症した一症例について,患者の病態,BioPlexの測定結果と生化学検査・血液検査結果の経時的変化を比較し,BioPlexの臨床的有用性を検討した。

III  結果

1. 同時再現性

変動係数(coefficient of variation; CV%)はVCA-IgG:2.97%以下,EA-IgG:3.64%以下,EBNA-IgG:10.43%以下,VCA-IgM:6.15%以下であった(Table ‍1)。

Table 1  Within-run precision of anti Epstein-Barr virus antibodies on BioRad BioPlex2200 (A.I.)
n = 10 Level 1 Level 2
Mean (A.I.) SD (A.I.) CV (%) Mean (A.I.) SD (A.I.) CV (%)
VCA-IgG 1.42 0.04 2.97 5.52 0.13 2.39
EA-IgG 1.20 0.00 0.00 4.15 0.15 3.64
EBNA 3.22 0.34 10.43 6.89 0.15 2.21
VCA-IgM 0.84 0.05 6.15 1.88 0.11 6.04

SD: standard deviation, CV: coefficient of variation

2. 日差再現性

CV%はVCA-IgG:6.36%以下,EA-IgG:5.62%以下,EBNA-IgG:14.43%以下,VCA-IgM:18.51%以下であった(Table 2)。

Table 2  Between-day precision of anti Epstein-Barr virus antibodies on BioRad BioPlex2200 (A.I.)
n = 10 Level 1 Level 2
Mean (A.I.) SD (A.I.) CV (%) Mean (A.I.) SD (A.I.) CV (%)
VCA-IgG 3.38 0.21 6.36 5.20 0.15 2.81
EA-IgG 0.51 0.03 5.62 1.96 0.11 5.48
EBNA 3.46 0.50 14.43 6.00 0.22 3.61
VCA-IgM 0.98 0.18 18.51 1.20 0.21 17.12

3. 希釈直線性

希釈直線性は,いずれの項目においても緩やかなシグモイド曲線を示したがVCA-IgG:5.3 A.I.,EA-IgG:4.6 A.I.,EBNA-IgG:6.9 A.I.,VCA-IgM:1.5 A.I.までフック現象を認めなかった(Figure 1)。VCA-IgMについてはプール血清を十分に用意することができなかったため,1濃度分のみ測定した。

Figure 1 

Linearity of dilution

a) VCA-IgG, b) EBNA, c) EA-IgG, d) VCA-IgM

4. 干渉物質

Bil-F,Bil-C,溶血ヘモグロビン,乳び,RFのいずれの干渉物質でも,その濃度の上昇に伴いA.I.も上昇する傾向を示した。特に,カットオフ値付近では陽性・陰性の判定結果が逆転する場合もあった(Figure 2)。

Figure 2 

Influence of interference materials on anti Epstein-Barr virus antibodies measured with BioRad BioPlex2200

a) Bil-F, b) Bil-C, c) Hemoglobin, d) Lipid, e) RF

5. EIA法との比較(Table 3
Table 3 

Positive and negative concordance rate

a) IgG
Enzygnost IgG EIA
Positive Indeterminant Negative
BioPlex IgG
(VCA-IgG, EA-IgG, EBNA)
Positive 93 5 1
Indeterminant 2 0 0
Negative 7 2 35

Positive concordance rate: 91.2%

Negative concordance rate: 91.7%

b) IgM
Enzygnost IgM EIA
Positive Negative
BioPlex IgM
(VCA-IgM)
Positive 33 11
Indeterminant 2 2
Negative 2 94

Enzygnost: Micro plate ELISA, SIEMENS

Positive concordance rate: 89.2%

Negative concordance rate: 87.0%

EIA法との陽性・陰性一致率は,IgG:91.2%,91.7%,IgM:89.2%,87.0%であった。判定不一致例について,IgGにおいてBioPlexで陰性,エンザイグノストで陽性となった7例と,IgMにおいてBioPlexで陽性,エンザイグノストで陰性となった11例について,別途詳細を示す(Table 4)。まずIgGについては,エンザイグノスト以外にBML社のVCA-IgG(FIA法)とデンカ生研のVCA-IgG(EIA法)でも測定したが,陽性と判定された。IgMについては,BML社のVCA-IgM(FIA法)では2例が陽性,デンカ生研のVCA-IgM(EIA法)では3例が陽性,2例が判定保留となった。また,1,3番についてはIgGが高値,11番はRFが高値の検体であった。

Table 4 

The cases of disagreement between the BioRad BioPlex2200 assay and the EIA method

a) IgG
BioPlex EBV IgG Micro plate ELISA FIA EIA
VCA-IgG
(A.I.)
result EA-IgG
(A.I.)
result EBNA
(A.I.)
result Enzygnost IgG BML
VCA-IgG
Denka-Seiken
VCA-IgG
10.40.3< 0.27.3 (+)160 (+)3.0 (+)
20.50.7< 0.25.2 (+)160 (+)0.6 (±)
30.2< 0.2< 0.24.9 (+)160 (+)0.6 (±)
40.40.2< 0.23.5 (+)640 (+)1.0 (+)
50.20.4< 0.23.0 (+)160 (+)2.1 (+)
60.70.2< 0.22.4 (+)160 (+)2.6 (+)
70.70.4< 0.22.2 (+)160 (+)6.3 (+)
b) IgM
BioPlex EBV IgM Micro plate ELISA FIA EIA IgG
(mg/dL)
RF
(IU/mL)
VCA IgM
(A.I.)
result Enzygnost
IgM
BML
VCA IgM
Denka-Seiken
VCA IgM
1> 4.0 AI+0.9 (−)< 10 (−)0.3 (−)2,5970
2> 4.0 AI+0.9 (−)10 (+)0.4 (−)1,6761
3> 4.0 AI+0.8 (−)20 (+)3.7 (+)2,8721
4> 4.0 AI+0.6 (−)< 10 (−)2.3 (+)
5> 4.0 AI+0.6 (−)< 10 (−)0.7 (±)4260
62.9 AI+0.5 (−)< 10 (−)0.4 (−)1,3432
71.5 AI+0.4 (−)< 10 (−)0.2 (−)
81.1 AI+0.4 (−)< 10 (−)0.7 (±)7640
91.6 AI+0.4 (−)< 10 (−)0.1 (−)9442
101.1 AI+0.3 (−)< 10 (−)0.3 (−)5440
11> 4.0 AI+0.1 (−)< 10 (−)1.4 (+)2,395430

EIA: Enzyme Immunoassay, FIA: Fluorescence Immunoassay, RF: rheumatoid factor

Enzygnost IgG; (−): < 0.10, (±): ≥ 0.10, ≤ 0.20, (+): > 0.20, IgM; (−): < 0.12, (+): ≥ 0.12

6. 臨床的有用性

1) 伝染性単核症

症例1.4歳女児,38℃以上の発熱,頸部リンパ節腫脹,肝脾腫のため入院となった。来院時からEBNA以外のすべての抗体が陽性となっており,反応性リンパ球も多数認めた。アセトアミノフェンによる対症療法を5日間行い,症状が軽快したためday 6に退院となった(Table 5a)。

Table 5 

Time course of anti Epstein-Barr virus antibodies measured with BioRad BioPlex2200 in cases of Infectious mononucleosis

a) Case 1
day 1 4
VCA-IgG (A.I.) 4.4 Symptomatic
treatment
5.2
EBNA (A.I.) < 0.2 < 0.2
EA-IgG (A.I.) 4.2 3.0
VCA-IgM (A.I.) > 4.0 > 4.0
A-Ly (%) 21.0 41.5
b) Case 2
day 1 4 11
VCA-IgG (A.I.) 0.6 Symptomatic
treatment
1.4 Remission
discharge
1.6
EBNA (A.I.) < 0.2 < 0.2 < 0.2
EA-IgG (A.I.) 0.3 0.3 0.3
VCA-IgM (A.I.) > 4.0 > 4.0 > 4.0
A-Ly (%) 6.0 50.0 15.0

A-Ly: Atypical Lymphocyte

症例2.5歳男児,38℃以上の発熱,頸部リンパ節腫脹のため入院となった。来院時にはVCA-IgMの上昇しか認めず,反応性リンパ球の上昇も軽度であった。入院し対症療法を行っていく過程でVCA-IgGが陽性化していき,反応性リンパ球も著明に増加した。アセトアミノフェンによる対症療法を4日間行い,症状が軽快したため退院となったが,発症から1週間以上経過した外来採血でも,VCA-IgMは低下しておらず,反応性リンパ球の出現も認めた(Table 5b)。

2) EBV関連血球貪食症候群

16歳男性,1週間ほど持続する発熱・咽頭痛のため他院を受診し,著明な肝障害を指摘されたため当院に救急搬送された。著明な肝脾腫,頸部・腋下・鼠径リンパ節腫脹を認め,血液検査の結果,反応性リンパ球の上昇があり,DICを併発していたため緊急入院となった。救急外来受診翌日の血液検査では,血小板の減少(5.1 × 104/μL)と反応性リンパ球の増加(24%)を認めた。また,生化学検査ではLD 7,599 U/L,AST 2,455 U/L,ALT 856 U/L,T.B 7.2 mg/dL,D.B 5.2 mg/dL,sIL-2R 18,917 U/mL,フェリチン89,400 ng/mL,凝固検査ではFDP 21.2 μg/mL,D-D 18.0 μg/mLであり,EBV感染に伴う血球貪食症候群併発を疑い,入院3日目に骨髄検査を施行した。骨髄像では血球貪食像を多数認め,EBER-ISH陽性リンパ球を多数認めたため,EBV-AHSと診断された。

入院時からの経過を示す(Table 6, Figure 3)。入院時の段階ではVCA-IgM,EBNA,VCA-IgGの上昇と反応性リンパ球の増加を認めた。EBV抗体は上昇した状態が持続していたが,反応性リンパ球は1週間で消失した。この患者はその後EBV-AHSの再燃を繰り返したが,その際白血球数は1,000/μL前後まで低下しており,反応性リンパ球も認めなかったのに対し,EBV抗体,特にVCA-IgMの上昇が顕著であった。

Table 6  Time course of anti Epstein-Barr virus antibodies measured with BioRad BioPlex2200 in a case of EBV-VAHS
day A-Ly
(%)
LD
(U/L)
AST
(U/L)
ALT
(U/L)
T-Bil
(mg/dL)
Ferritin
(ng/mL)
sIL-2R
(U/mL)
2 24.0 7,599 2,455 856 7.2 89,400 18,917
3 11.5 8,952 2,893 871 9.1
4 11.0 9,119 3,076 912 11.9 170,000
7 0.0 2,421 723 701 18.1
8 0.0 1,646 322 522 16.9
9 0.0 1,372 165 446 14.0 20,725
10 0.0 974 97 348 9.7
11 0.0 789 71 282 7.7
14 0.0 534 54 179 5.2
16 0.0 426 52 149 4.0
35 0.0 200 43 166 1.4 1,439 2,507
37 0.0 167 24 117 1.4
41 0.0 152 22 68 1.1 780
43 0.0 185 23 67 1.1
45 0.0 231 30 72 0.9
48 0.0 348 85 210 1.0 1,173 3,251

A-Ly: Atypical Lymphocyte, LD: Lactate Dehydrogenase, AST: Aspartate Aminotransferase, ALT: Alanine Aminotransferase, T-Bil: Total Bilirubin, sIL-2R: Soluble interleukin 2 receptor

Figure 3 

A case of EB virus-associated hemophagocytic syndrome (EBV-VAHS)

DEX; dexamethasone, CyA; cyclosporine A, VP-16; etoposide, FUT; nafamostat mutilate, A-Ly: atypical lymphocyte, HPS; hemophagocytic syndrome

IV  考察

同時再現性は概ね良好であった。日差再現性はEBNA-IgGとVCA-IgMでCV%が14.4~18.5%とばらつきを認めたため,今後試薬キットの更なる改良が望まれる。

希釈直線性試験では,6.9 A.I.まではプロゾーン現象を認めなかった。本試薬は,1.1 A.I.以上を陽性と判定するため,判定には影響がないと考えられた。

今回検討した干渉物質はいずれもA.I.に影響を与えた。今回の検討では干渉物質については,国外で発売されている試薬の添付文書での記載では影響がないとされている濃度以下でも影響を受けやすい結果となり再度検討が必要と考えたが,検討に使用するプール血清の用意が十分できなかった。RFは血清中に含まれる抗EBV抗体,もしくは標識抗体に結合したことによる交差反応が考えられた。Bil-F,Bil-C,溶血ヘモグロビンでの値の変化については,本検討で使用したプール血清中に存在していた物質が,これらの干渉物質の影響を増強させ,抗体試薬の親和性を変化させた可能性が否定できなかった。非特異反応や交差反応が疑われた場合には,他法の測定結果と比較を行うほか,反応性リンパ球の出現や肝酵素の上昇がないか,また臨床症状と相違がないかを注意深く確認する必要があると考えられた。

EIA法との一致率は概ね良好であった。判定不一致例について,IgGではBioPlexで陰性,エンザイグノストで陽性となった7例については,エンザイグノスト以外にBML社のVCA-IgG(FIA法)とデンカ生研のVCA-IgG(EIA法)でも測定したが,陽性と判定された。BioPlexの測定結果をみると,3番以外はわずかに反応している。BioPlexは特異性を重視してカットオフ値を高めに設定しているために偽陰性になった可能性が考えられた。A.I.はBioPlex独自の単位であるため,従来の単位との相関を算出し,カットオフ値が適切かを見直すことも必要と考えられる。IgMでは11例がBioPlexで陽性,エンザイグノストで陰性となった。田島ら10)は「エンザイグノストで測定したIgMはVCA-IgM抗体よりEA-IgM抗体に対して高い相関がある」と報告している。BML社のVCA-IgM(FIA法)では2例が陽性,デンカ生研のVCA-IgM(EIA法)では3例が陽性,2例が判定保留となっており,VCA-IgMを検出できていないためにエンザイグノストで陰性となった可能性が考えられた。また,国外で販売されているIgM試薬の添付文書には「免疫グロブリンは2,500 mg/dLまで影響を認めない」との記載がある。1,3番の検体はIgGが2,500 mg/dL以上であり,また,11番の症例はRFが異常高値を示していた。RFは基礎的検討でも影響を与えることが示されており,血清中に含まれる抗EBV抗体,もしくは標識抗体に結合したことによる交差反応が考えられた。その他の免疫グロブリンの影響については,本試薬に用いられている磁性ビーズへの非特異的な吸着により偽陽性になった可能性が考えられた。これらの影響については今後の検討課題である。

伝染性単核症の症例では,早期の段階でVCA-IgMの上昇が著しく,反応性リンパ球の出現と併せて診断に有用であると考えられた。小児伝染性単核症の診断基準には,血清学的所見として急性期~早期回復期にEA-IgGが一過性に陽性化することが,1つの指標として盛り込まれている4)。しかし,今回提示した2例を含め,全10例を測定したが,5例で発熱や肝脾腫を認める急性期においてEA-IgGの上昇を認めない場合もあった(data not shown)ため,急性期の診断にはVCA-IgMが最も有用であると考えられた。症例2では,症状が軽快し退院した後の外来採血でも反応性リンパ球を認め,VCA-IgMは低下していなかった。伝染性単核症の多くの症例では2週間程度で症状が軽快するのに対し,VCA-IgMは陰性化するのに1~2ヵ月程度を要するとされている4)。そのため,必ずしも症状とウイルスの活性状態が相関しないと考えられる。本症例のように症状のみで退院が決まる場合もあるが,一部の症例では肝障害の再燃や易疲労性が持続することがあり4),症状の軽快後も抗体価の再上昇がないか,一定の期間をおいて測定することは重要と考える。

HPS合併の重症例では,VCA-IgMは初感染時から陽性を維持し,特に再燃した際の再上昇が顕著であった。一方,EA-IgGは初感染時から陽性化することはなかった。VCA-IgMとEA-IgGは初感染時の急性期や再活性時に陽性化するとされている2),9)。しかし,今回の検討に使用した伝染性単核症例においても両者の結果が乖離した症例があったのと同様,EBV-AHSにおいてもEA-IgGがウイルス活性化と相関しない可能性が示唆された。これについては,今後症例数を増やして検討していく必要がある。血球貪食が進行している場合,末梢血液中の白血球数は減少していることがほとんどであり,反応性リンパ球の出現を認めることは多くないと考えられる。血球貪食症候群は,骨髄穿刺を行い骨髄像にて血球貪食像を確認することが診断基準に定められているが5)~7),骨髄穿刺は侵襲性の高い検査であり,頻回に行うことは患者への負担が大きい。また,伊藤3)は「検体中のEBウイルスDNA量をリアルタイムPCR法で測定することが診断に有用である」としているが,リアルタイムPCR法は測定結果を得るまでに時間を要する,測定できる施設に限りがある,などの理由から継続的なモニタリングは容易ではない。EBV-AHSの場合,ウイルス抗体価の上昇が持続する場合や再上昇する場合に血球貪食症候群の合併を疑うことができれば,測定意義は高いと考えられる。BioPlexの場合,陽性・陰性の判定だけでなく,独自の抗体価指標であるA.I.も表示される。今回の症例の場合,再燃時・軽快時ともにVCA-IgMの判定が陽性であることに変わりはなかったが,A.I.には変動を認めた。EBVの再活性化やEBV関連腫瘍への進展の際には,VCA-IgMの抗体価が再上昇する9)。基礎的検討ではカットオフ値付近の低値領域において再現性のCV%が大きいことや干渉物質による影響を受けやすいなどの課題を認めたため,その解釈に注意を要する場合もあるが,VCA-IgMの明らかなA.I.の上昇は,EBV-AHSへの進展,および再燃を疑うきっかけになる可能性が示唆された。

結語

BioPlex2200を用いた抗EBV抗体測定は,一部注意すべき点はあるが,より少量の検体量で複数の抗体価を迅速に報告することができるため,EBV関連疾患の診断に有用であると考えられた。

 

本論文の要旨は第65回日本医学検査学会学術集会(神戸市)にて発表した。

謝辞

本研究は,バイオ・ラッド社との受託研究契約に基づき実施した。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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