医学検査
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技術論文
質量分析器における血液培養からの直接同定法に関する基礎的検討
山田 直輝原 祐樹川島 誠浅井 幸江井藤 聡美深見 晴江伊藤 守
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2018 年 67 巻 3 号 p. 307-313

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Abstract

通常血液培養から細菌を同定する場合,最低3日必要であるが,質量分析器を用いれば最低2日で菌名の同定が可能になった。また,MALDIセプシタイパー血液培養抽出キット(ブルカー・ダルトニクス)(以下,セプシタイパー法)が開発され,血液培養検体から直接質量分析測定を行えるようになり,当日に菌名同定が可能になった。しかしセプシタイパー法を用いて測定を行った場合,1検体当たりのコストが高い。そこで,より安く測定できる方法(以下,直接法)を考案し,検討を行った。当院で血液培養陽性となった検体から無作為に抽出した100件を対象として検討を行った結果,全体の同定率は,直接法では菌種レベルまで可能であったのが67%(67/100)セプシタイパー法では66%(66/100)であった。グラム陽性球菌における直接法の同定率は,菌種レベルまで可能であったのが40%(17/42),セプシタイパー法では45%(19/42)であった。グラム陰性桿菌では直接法は92%(48/52),セプシタイパー法では87%(45/52)であった。作業時間もほぼ変わらないだけでなく,特殊な試薬を用いず,セプシタイパー法と同等の結果を得られることから有用な方法であると考えられた。しかし,グラム陽性球菌の同定成績が低く,改善の余地があると考えられたため,今後改良法についても検討を進めていきたい。

I  背景

血液培養検査は,敗血症が疑われる患者の診断と治療に大きく影響する重要な検査である。また,敗血症の起炎菌を迅速同定することは,患者の適切な治療に貢献するとされる1),2)。飛行時間型マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI TOF-MS)は,臨床微生物分野に導入された新しい同定法である。MALDI TOF-MSの特徴は,菌名同定の迅速性にある。従来の生化学的性状を基にした同定法は,菌名同定に約1日を要していたが,MALDI TOF-MSでは分離したコロニーがあれば,10分程度で菌名同定が可能である。また,各社から発売されている抽出キットを用いることで,血液培養陽性のボトル内容液を直接使用して菌名同定を行うことも可能である。当院では,MALDI Biotyper(ブルカー・ダルトニクス)による同定検査を実施しており,血液培養が陽性となった培養液から菌を同定する場合,MALDIセプシタイパー血液培養抽出キット(ブルカー・ダルトニクス)を用いている。しかし,1検体当たりの試薬コストが高く,全ての血液培養陽性検体に用いることはコストの増加につながる3)。そこでコストが安く,特殊な試薬を用いない方法を考案し,抽出キットを用いた方法と比較検討した。

II  対象

本研究は名古屋第二赤十字病院の倫理委員会の承認を得て行った。2016年11月~12月の間に当院で血液培養陽性となった検体から無作為に抽出した100件を対象とした。血液培養はBACT/ARERT 3D(シスメックスビオメリュー)を使用し,血液培養ボトル(シスメックスビオメリュー)はFA Plus培養ボトル,FN Plus培養ボトル,小児ではPF Plus培養ボトルを使用した。陽性となった血液培養は全例グラム染色を実施し,複数の菌が確認された場合は対象から除外した。また,培養で複数菌種が発育してきた場合も除外対象とした。

III  方法

1. 血液培養ボトルからの直接抽出法(直接法)

直接法の手順についてTable 1に示した。陽性ボトルの内容液をVacutainer SST採血管(日本ベクトンディッキンソン)に8.5 mL採取し,3,500 rpmで5分間遠心する。上清を除去し,生理食塩水4 mLを加えた後,1,000 rpmで5分間遠心し,上清をマイクロチューブへ1.5 mL分注する。マイクロチューブを5,000 rpmで1分間遠心し,上清を除去する。滅菌水を1.5 mL加え,5,000 rpmで1分間遠心する。遠心後,上清を除去し,沈査を得る。この沈査を爪楊枝でターゲットプレートに塗布した後,ギ酸(和光純薬工業株式会社)を1 μL添加し,HCCA portioned(ブルカー・ダルトニクス)を1 μL滴下し,乾燥させたものを被検材料とした。

Table 1  直接法 処理方法
1. 分離剤入り採血管へ陽性ボトルの内容液を8.5 mL分注
2. 3,500 rpm,5分間遠心し上清を除去
3. 採血管に4 mL生理食塩水を加え,ボルテックスミキサーで10秒間撹拌
4. 1,000 rpm,5分間遠心
5. 上清を滅菌スポイトでエッペンドルフチューブへ1.5 mL分注しする。
6. 5,000 rpm,1分間遠心
7. 上清を捨て,滅菌水を1.5 mL加え,ボルテックスミキサーで10秒間攪拌
8. 5,000 rpm,1分間遠心
9. 上清を捨て,爪楊枝を用いて沈査を攪拌
10. 爪楊枝の先端についた菌液をターゲットプレートに塗布
11. 乾燥後,ギ酸を1 μL添加
12. 乾燥後,マトリクッス試薬を1 μL添加
13. 乾燥後,質量分析装置にて測定

2. MALDIセプシタイパー血液培養抽出キット処理法(セプシタイパー法)

MALDIセプシタイパー血液培養抽出キットの処理方法についてTable 2に示した。陽性ボトルの内容液をマイクロチューブへ1 mL採取し,Lysis Buffer(LB)を200 μL加え10秒間ボルテックスで撹拌する。13,000 rpmで1分間遠心後,上清を除去する。Washing Buffer(WB)を1 mL加え,ピペッティング又はボルテックスにより撹拌する。13,000 rpmで1分間遠心後,上清を除去する。この時点で沈渣が赤い場合は再度WBを加え,遠心する。超純水を300 μL加えて撹拌する。純エタノール(和光純薬工業株式会社)を900 μL加えて撹拌する。13,000 rpm,2分間遠心し,上清を捨てる。沈渣と等量のギ酸を加え,撹拌する。ギ酸と同量のアセトニトリル(和光純薬工業株式会社)を加え,撹拌する。13,000 rpm,2分間遠心し,上清をターゲットプレートに塗布後,HCCA portioned(ブルカー・ダルトニクス)を1 μL滴下し,乾燥させたものを被検材料とした。

Table 2  セプシタイパー法 処理方法
1. エッペンドルフチューブへ陽性ボトルの内容液を1 mL分注
2. Lysis Bufferを200 μL加え,ボルテックスミキサーで10秒間攪拌
3. 13,000 rpmで1分間遠心後,上清を除去
4. Washing Bufferを1 mL加えて,ピペッティングまたはボルテックスミキサーにより攪拌
5. 13,000 rpmで1分間遠心後,上清を除去する。この時点でペレットが赤色の場合は手順4を繰り返す
6. 超純水を300 μL加えてよく攪拌
7. 純エタノールを900 μL加えてよく攪拌
8. 13,000 rpm,2分間遠心し,上清を捨てる
9. 沈渣と等量のギ酸を加え,よく攪拌
10. ギ酸と同量のアセトニトリルを加え,よく攪拌
11. 13,000 rpm,2分間遠心し,上清をターゲットプレートに塗布
12. 乾燥後,マトリクッス試薬を1 μL添加
13. 乾燥後,質量分析装置にて測定

3. 被検材料の同定方法および解析について

被検材料の同定には,MALDI Biotyperを使用した。また,同定結果については,同定スコア2.0以上は菌種レベルまで,同定スコア1.7~2.0未満では属レベルまで結果を採用した。スコア1.7未満の場合は未検出とした。結果から直接法とセプシタイパー法の同定率の比較を同定スコアを基準に菌種レベルと属レベルに分けて行った。また,直接法とコロニーからの同定結果(コロニー法)との結果の一致率,平均スコアの比較を行った。なお検出菌の基準はコロニー法による同定結果を用いた。一致率とはコロニー法と結果を比較し直接法の結果の正確性を確認するためのものである。なお,本検討は名古屋第二赤十字病院治験管理委員会の承認を得て実施した。

4. 試薬コストの比較

1件当たりのコストを算出し,直接法とセプシタイパー法のコストを比較した。

5. 検体処理時間の比較

Table 12に示す手順をそれぞれ5回行い,平均検体処理時間を比較した。

IV  結果

1. 直接法とセプシタイパー法の同定率の比較

血液培養陽性検体100検体に対し,直接法とセプシタイパー法による同定を行い,同定スコア1.7以上が得られた割合(同定率)を比較した。結果をTable 3に示した。100件中42件がグラム陽性球菌,6件がグラム陽性桿菌,52件がグラム陰性桿菌であった。全体の同定率は,直接法では菌種レベルまで同定可能であったのが67%(67/100)属レベルまで同定可能であったのが14%(14/100),セプシタイパー法では菌種レベルまで同定可能であったのが66%(66/100),属レベルまで同定可能であったのが16%(16/100)であった。次にグラム染色形態ごとの同定率の結果を以下に詳述する。グラム陽性球菌における直接法の同定率は,菌種レベルまで同定可能であったのが40%(17/42),属レベルまで同定可能であったのが24%(10/42)であった。セプシタイパー法では菌種レベルまで同定可能であったのが45%(19/42),属レベルまで同定可能であったのが24%(10/42)であった。グラム陽性桿菌における直接法の同定率は,菌種レベルまで同定可能であったのが33%(2/6),属レベルまで同定可能であったのが33%(2/6)であった。セプシタイパー法では菌種レベルまで同定可能であったのが33%(2/6)であった。グラム陰性桿菌における直接法の同定率は,菌種レベルまで同定可能であったのが92%(48/52),属レベルまで同定可能であったのが4%(2/52)であった。セプシタイパー法では菌種レベルまで同定可能であったのが87%(45/52),属レベルまで同定可能であったのが12%(6/52)であった。

Table 3  直接法とセプシタイパー法の同定率の比較
直接法 セプシタイパー法
グラム陽性球菌 n 同定率(%)
スコア2.0以上
同定率(%)
スコア1.7~2.0
同定率(%)
スコア2.0以上
同定率(%)
スコア1.7~2.0
Enterococcus faecalis 9 67 0 78 11
Enterococcus faecium 1 100 0 100 0
Staphylococcus aureus 9 44 11 89 11
Staphylococcus caprae 3 0 67 0 33
Staphylococcus epidermidis 10 0 40 10 60
Streptococcus dysgalactiae 1 0 0 0 0
Streptococcus pneumoniae 7 71 29 29 14
Streptococcus pyogenes 2 50 50 0 0
42 40 24 45 24
グラム陽性桿菌 n 同定率(%)
スコア2.0以上
同定率(%)
スコア1.7~2.0
同定率(%)
スコア2.0以上
同定率(%)
スコア1.7~2.0
Propionibacterium acnes 1 0 0 0 0
Bacillus cereus 5 40 40 40 0
6 33 33 33 0
グラム陰性桿菌 n 同定率(%)
スコア2.0以上
同定率(%)
スコア1.7~2.0
同定率(%)
スコア2.0以上
同定率(%)
スコア1.7~2.0
Citrobacter koseri 1 100 0 100 0
Enterobacter aerogenes 1 100 0 0 100
Escherichia coli 32 97 0 84 13
Klebsiella oxytoca 1 100 0 100 0
Klebsiella pneumoniae 13 77 15 92 8
Pseudomonas aeruginosa 2 100 0 100 0
Serratia marcescens 2 100 0 100 0
52 92 4 87 12
全体 100 67 14 66 16

次に菌種ごとの同定率を示す。検討数の多い菌種をみると,菌種レベルまで同定可能であったのが直接法ではグラム陽性球菌のうちE. faecalis 67%(6/9),S. aureus 44%(4/9),S. epidermidis 0%(0/10),S. pneumoniae 71%(5/7),グラム陽性桿菌ではB. cereus 40%(2/5),グラム陰性桿菌ではE. coli 97%(31/32),K. pneumoniae 77%(10/13)であった。セプシタイパー法ではグラム陽性球菌のうちE. faecalis 78%(7/9),S. aureus 89%(8/9),S. epidermidis 10%(1/10),S. pneumoniae 29%(2/7),グラム陽性桿菌ではB. cereus 40%(2/5),グラム陰性桿菌ではE. coli 84%(27/32),K. pneumoniae 92%(12/13)であった。

2. 直接法による同定結果とコロニーを用いた同定結果の一致率

菌種レベルまで同定可能であった67件に対しコロニーを用いた同定結果との一致率を確認したところすべての結果で一致し,一致率は100%であった。

3. 平均スコアの比較

直接法とセプシタイパー法の両方法で同定スコアが1.7以上であった69件に対し平均スコアを比較した。残りの31件は一方の方法で同定が可能だった又は両方法で同定できなかったため除外した。結果をTable 4に示した。全体の平均スコアは,直接法では2.149,セプシタイパー法では2.140であった。次にグラム染色形態ごとに詳述する。グラム陽性球菌における平均スコアは,直接法では2.079,セプシタイパー法では2.054であった。グラム陽性桿菌では,直接法は2.167,セプシタイパー法では2.196であった。グラム陰性桿菌では,直接法では2.200セプシタイパー法では2.171であった。次に菌種ごとの平均スコアを示す。検討数の多い菌種をみると,直接法ではグラム陽性球菌のうちE. faecalis 2.302,S. aureus 2.050,グラム陰性桿菌ではE. coli 2.254,K. pneumoniae 2.068であった。セプシタイパー法ではグラム陽性球菌のうちE. faecalis 2.130,S. aureus 2.279,グラム陰性桿菌ではE. coli 2.189,K. pneumoniae 2.133であった。両者の間に有意な差はなかった。

Table 4  直接法とセプシタイパー法の平均スコアの比較
グラム陽性球菌 n 直接法 セプシタイパー法
Enterococcus faecalis 5 2.302 2.13
Enterococcus faecium 1 2.055 2.206
Staphylococcus aureus 5 2.05 2.279
Staphylococcus caprae 1 1.709 1.858
Staphylococcus epidermidis 2 1.870 1.814
Streptococcus pneumoniae 3 1.986 1.832
17 2.079 2.054
グラム陽性桿菌 n 直接法 セプシタイパー法
Bacillus cereus 2 2.167 2.196
2 2.167 2.196
グラム陰性桿菌 n 直接法 セプシタイパー法
Citrobacter koseri 1 2.218 2.223
Enterobacter aerogenes 1 2.039 1.740
Escherichia coli 31 2.254 2.189
Klebsiella oxytoca 1 2.249 2.213
Klebsiella pneumoniae 12 2.068 2.133
Pseudomonas aeruginosa 2 2.213 2.235
Serratia marcescens 2 2.213 2.227
50 2.200 2.171
全体 69 2.149 2.14

4. 試薬コストの比較

結果をTable 5に示した。直接法でかかるコストは1検体あたり約100円であったことから,従来法の約800円に比べて約700円のコスト削減が可能であった。

Table 5  直接法とセプシタイパー法のコスト比較(1件あたり)
直接法 セプシタイパー法
物品 値段(円) 物品 値段(円)
バキュテイナ採血管
(日本ベクトン・ディッキンソン)
87 MALDIセプシタイパー血液培養抽出キット 800
1.5 mLチューブ 8.3
生理食塩水(大塚製薬) 4.5
滅菌水 0
99.8 800

5. 検体処理時間の比較

結果をTable 6に示した。直接法の平均検体処理時間は,約24分であった。一方,セプシタイパー法の平均検体処理時間は約22分であった。平均検体処理時間はセプシタイパー法が直接法と比較し約2分短かった。

Table 6  検体処理時間の比較
直接法 セプシタイパー法
1回目 25分11秒 23分23秒
2回目 25分56秒 23分29秒
3回目 25分10秒 23分35秒
4回目 23分46秒 22分01秒
5回目 23分14秒 21分06秒
平均 24分40秒 22分41秒

V  考察

今回我々はセプシタイパー法の代わりとなるコストが安く,特殊な試薬を用いない方法として直接法を考案し,比較検討を行った。作業時間はほとんど変わらないだけでなく,特別な試薬を必要とせず,セプシタイパー法と同等の結果が得られることから有用な方法であると考えられた。

今回,我々が使用した直接法の原理は,細菌と血球成分の重さの違いを利用したものである。まず,Table 1の手順2の遠心で細菌と血球成分を沈渣へ集める。生理食塩水を加え撹拌後,手順4で細菌と血球成分を分けるために低遠心で上清側に細菌を集める。その際,赤血球は軽いため上清側に残る。上清を手順6の高速遠心によって沈渣に赤血球と細菌を集める。さらに,滅菌水を加えることで赤血球を溶血させて細菌より細かい破片にする。そして手順8の高速遠心をかけることで沈渣に細菌を,上清に赤血球を分離し,集めた細菌を直接分析する方法である。

直接法の同定率についての考察を詳述する。同定不能であった検体は100件中19件であった。MALDI TOF-MSは,夾雑物質の影響を受けやすく,夾雑物質が存在すると同定精度が下がるとされる4)。直接法は,血球成分などのタンパクを含む夾雑物質を完全に除去することは難しく,前処理後に残存している血球成分が同定結果に影響を及ぼしている可能性が考えられた。このことから,直接法においては血球成分などの夾雑物質を可能な限り除去することが同定精度向上のために肝要であり,前処理の作業工程において血球成分を取り込み過ぎないよう留意することが重要であると考えられた。また,同定不能であった19件中11件がStaphylococcus sp.であった。直接法では,細菌と血球成分の重さの差を利用し,遠心力で分離を行っている。Ferreiraら5)の検討で連鎖やクラスター形成の著しい細菌は,比重やサイズが大きくなるため低遠心法では細菌の回収が困難なことが判明している。今回の方法も低遠心法の原理を利用しているため,菌が集塊を形成するStaphylococcus sp.では菌の比重が変わり,初期の遠心作業によって沈査側に菌が移動することで上清から分離できる菌量が少なくなり同定が出来なかった可能性が考えられた。その他にChristnerら6)の報告によれば,血液培養ボトルから直接同定を行う場合,106 CFU/mL以上の菌量を必要とするとされている。培養液内の発育菌量が少なかったため同定できなかった可能性が考えられた。

直接法とセプシタイパー法と比較した結果,セプシタイパー法の検出率がやや高かった。グラム染色の形態ごとに比較すると,グラム陰性桿菌では良好な結果が得られているのに対して,グラム陽性球菌は,同定率が低いことがわかった。また,菌種別に同定率を比較するとStaphylococcus sp.で大きな差が見られた。前述の通り,クラスター形成による比重の変化により菌の回収が困難であった可能性と発育量が少なかった可能性が考えられた。

菌量の問題については,陽性となった血液培養ボトルをさらに数時間培養を延長し,菌量を増やした上で検査を行うことで同定精度向上が期待されるが,どの程度結果に対して影響を与えるかについて検討をする必要があると考えられた。また,培養時間を延長することで日常業務時間内に同定できないケースもあると考えられるため,培養時間を延長することなく,同定精度を向上させる方法についても今後検討する必要があると考えられた。

検体処理時間の比較についての考察を詳述する。直接法はセプシタイパー法と比較し工程数は変わらないが総遠心時間はセプシタイパー法に比べ2倍である。そのため検体処理時間には大きな差ができると考えていたが,結果は約2分の差であった。セプシタイパー法では加える試薬数が多く,加える量も様々である。そのため作業が煩雑になり時間がかかったため差が約2分まで縮まったと考えられた。

VI  結語

今回,我々が検討を行った直接法は,安価で特別な試薬を必要とせず,良好な成績を得ることができた。しかし,グラム陽性球菌の同定成績には,まだ改善の余地があると考えられたことから,グラム陽性球菌の同定成績を向上させるための改良法についても検討を進めていきたい。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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