2018 年 67 巻 5 号 p. 755-759
我が国で市販されているBordet-Gengou血液寒天培地(ボルデジャング培地),ボルデテラCFDN寒天培地(CFDN寒天培地),およびチャコール寒天培地の3種類の百日咳菌(Bordetella pertussis; B. pertussis)分離用培地について,発育支持能および夾雑菌抑制能を比較検討した。発育支持能試験にはB. pertussisの臨床分離株を用い,夾雑菌抑制能試験には分離頻度の高い細菌のATCC株または臨床分離株を用いた。両試験はMiles & Misra法に準拠し行った。発育支持能試験では,CFDN寒天培地は10−5希釈まで,ボルデジャング培地およびチャコール寒天培地は10−6希釈まで発育支持を認めた。また10−5希釈での発育コロニー数の平均値は,ボルデジャング培地,CFDN寒天培地およびチャコール寒天培地で,36.5,20.4,および40.5 CFUであった。夾雑菌抑制能試験では,ボルデジャング培地には全ての夾雑菌が発育し,チャコール寒天培地は全ての夾雑菌を抑制した。CFDN寒天培地はMoraxella catarrhalisを抑制できず,巨大コロニーが形成されてB. pertussis分離の妨げになる可能性があった。以上の結果から,チャコール寒天培地は発育支持能および夾雑菌抑制能に優れ,検討した3種類の培地の中でB. pertussis分離に最も適した培地と考えられた。