医学検査
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技術論文
ライサスS4システムを使用したStaphylococcus属に対する薬剤感受性試験の検討
石田 奈美, 中村 竜也, 西田 全子, 小林 沙織, 楠木 まり, 大沼 健一郎, 中町 祐司, 三枝 淳
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2019 年 68 巻 4 号 p. 677-682

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Abstract

感染症の治療において,適切かつ迅速な抗菌薬投与が患者の予後の改善さらには薬剤耐性菌の発生抑制に重要である。今回我々は,感染症患者から高頻度に分離される菌の一つであるStaphylococcus属菌を用いて,全自動迅速同定・感受性測定装置ライサスS4およびライサスプレートRSMP3(ともに日水製薬)の有用性を評価した。対象は当院で血液培養から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌18株,メチシリン感性黄色ブドウ球菌21株,メチシリン耐性表皮ブドウ球菌18株の計57株とした。ドライプレートパネル(栄研化学)を対照法とした最小発育阻止濃度一致性の評価では,1管差一致率86.0%~100%,カテゴリー一致率 91.2%~100%と良好であった。また,15分ごとに最小発育阻止濃度値をモニタリングすることにより,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌ではoxacillinが平均7.2時間,Cefoxitinが平均6.9時間,メチシリン耐性表皮ブドウ球菌ではoxacillinで平均9.6時間で耐性の確認が可能であった。また,Clindamycin誘導耐性の検出精度も良好であった。以上より,ライサスS4を用いた薬剤感受性試験は日常検査に導入可能で,メチシリン耐性菌の迅速報告による適切な抗菌薬の選択をはじめとする感染症診療に有用であることが示唆された。

Translated Abstract

The rapid detection of antimicrobial drug-resistant strains, especially methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), is important for the effective treatment and control of infectious diseases. In this study, we evaluated the applicability of the automatic analyzer RAISUS S4 system. The susceptibilities of 57 strains, including 18 MRSA strains, 21 MSSA strains, and 18 MR coagulase-negative staphylococcal strains, to antibiotics were measured using the RAISUS S4 system with the RAISUS plate RSMP, and the results were compared with those obtained using the DP panel as the reference method. The rates of agreement within ±1 dilution ranged from 86.0% to 100%, and those of category agreement ranged from 91.2% to 100%. In addition, we detected methicillin-resistant strains only 6.5 hours after the start of culture. In conclusion, the RAISUS S4 system was found to be useful for reducing the turnaround time for reporting methicillin-resistant strains and for choosing the appropriate drugs for the treatment of infectious diseases caused by staphylococcal strains.

I  はじめに

近年,質量分析器が微生物検査においても使用され菌種同定の迅速化が可能となった。しかし,薬剤感受性試験の結果報告までには,依然16~24時間を要している。抗菌薬適正使用において薬剤感受性試験の結果は必要不可欠であり,迅速化が求められている。Staphylococcus属の中でもStaphylococcus aureus(S.aureus)はカテーテル関連血流感染症をはじめ,感染症患者から高頻度に分離される菌の一つであり,メチシリン耐性の有無は抗MRSA薬投与の必要性や院内感染対策を考慮する上で重要である1)。

ライサスシリーズ(日水製薬)は全自動迅速同定感受性測定をコンセプトとする微生物検査装置である。2001年にライサス,2010年にマイナーモデルチェンジ機であるライサスエニー,2016年に本検討に使用したフルモデルチェンジ機であるライサスS4が販売された。今回我々が検討した全自動迅速同定・感受性測定装置RAISUSライサスS4(日水製薬,以下ライサスS4)は,専用の感受性測定プレートの各ウェルに,各種濃度の薬剤に加え,菌の発育に伴い発色する酸化還元指示薬が固相されており,15分毎にウェル内の培養液の吸光度を測定することで菌の発育状態を経時的に自動判定し,薬剤感受性試験結果の報告を迅速に行うことができる。さらにプレートへの分注,培養および結果判定をすべて全自動で実施でき,省力化も期待できる。

これまでにライサスS4を使用してStaphylococcus属についての感受性試験結果の精度,特にメチシリン耐性検出の迅速化について示した報告はない。

今回我々は,当院で血液培養より分離されたStaphylococcus属を対象とし,ライサスS4による薬剤感受性試験の精度について検討を行ったので報告する。

II  方法

1. 使用菌株

当院にて血液培養から検出されたStaphylococcus属57株を用いた。内訳として,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus; MRSA)18株,メチシリン感性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus; MSSA)21株,メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis; MRSE)18株を用いた。測定菌株は,スキムミルクで−30℃に保存した菌株を,使用時にトリプチケースソイ5%ヒツジ血液寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)にて35℃,18時間培養した株を用いた。同定には,Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization-Time of Flight Mass Spectrometry(MALDI-TOF MS)およびMALDI Biotyper Compass version 4.1.70(ブルカージャパン株式会社)を使用した。

2. ライサスS4による最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration; MIC)測定

培養した菌株をライサス専用濁度計ミニフォト2000(日水製薬)にて透過度83 ± 1%(McFarland # 0.5に相当)の濁度に調整し菌液とした。その菌液とライサスプレートRSMP3(日水製薬),ミュラーヒントンブイヨン(日水製薬),滅菌チップをライサスS4にセットし測定を開始し,35℃で培養した。測定薬剤はGentamicin(GM),Arbekacin(ABK),Erythromycin(EM),Clarithromycin(CAM),Clindamycin(CLDM),Levofloxacin(LVFX),Minocycline(MINO),Linezolid(LZD),Vancomycin(VCM),Teicoplanin(TEIC),Trimethoprim-sulfamethoxazole(ST),Daptomycin(DAP),Cefoxitin(CFX),oxacillin(MPIPC)の14薬剤とし,VCMおよびMPIPCは24時間,その他の薬剤は18時間培養した。ライサスソフトウェアは,Ver-002-001を使用した。

3. 微量液体希釈法によるMIC測定

対照法として,ドライプレート‘栄研’DP0N(栄研化学,以下DP0N),ドライプレート‘栄研’DP0P(栄研化学,以下DP0P)を使用した。培養した菌株を滅菌生理食塩水にてMcFarland # 0.5の濁度の菌液に調製した。調製した菌液50 μLをミューラーヒントンブイヨン栄研(栄研化学)に加え,均等に浮遊させて接種用菌液とした。接種用菌液をドライプレートの各ウェルに100 μLずつ接種し,35℃で培養した。CLSI M100-S25に準拠しMIC値を測定した2)。VCMおよびMPIPCのMIC値は24時間後に,その他の薬剤は18時間後に目視により決定した。目視によるMIC値判定の際,肉眼的に混濁または直径1 mm以上の沈殿が認められた場合,沈殿物の直径が1 mm未満であっても沈殿塊が2個以上認められた場合を発育陽性とした。測定薬剤は,ライサスS4に用いたものと同様のものを使用した。DP0NでGM,EM,CAM,LVFX,MINO,CFX,MPIPCを,DP0PでABK,CLDM,LZD,VCM,TEIC,ST,DAPを測定した。

4. MIC一致率とカテゴリー一致率の評価

DP0N,DP0Pを対照法としてライサスS4とのMIC一致率(±1管差)およびCLSIの判定基準がないABK以外の11薬剤についてカテゴリー一致率を求めた。カテゴリー一致率は,各抗菌薬に対する感性(S),中等度耐性(I),耐性(R)と判定された株数を比較し,カテゴリーが一致した場合をcategory agreement(CA),カテゴリーが一致しなかった場合,対照法が耐性でライサスS4法が感性をvery major error(VME),対照法が感性でライサスS4法が耐性をmajor error(ME),一方が中間,他法が感性または耐性をminor error(Me)の3つに分類し,CA,VME,ME,Meのそれぞれの割合を求めた。

5. メチシリン耐性の判定までに要する培養時間の検討

MPIPCおよびCFXのMIC値の変化を調査し,MRSAおよびMRSEと判定されるまでに要する培養時間を解析した。

6. CLDM誘導耐性検出精度の評価

CLDM誘導耐性の検出精度評価のため,EM耐性かつCLDM感性あるいは中間を示す株30株を抽出した。対象株について,プレートの「CLDM/EM」ウェル(CLDM: 0.5 μg/mL, EM: 4 μg/mL)に発育がみられれば「CLDM誘導耐性陽性」と判定した。比較対照には,従来法としてマイクロスキャンWalkaway 96plus(ベックマンコールター社,以下WA)を使用した。培養した菌株を滅菌生理食塩水にてMcFarland # 0.5の濁度の菌液に調製した。調製した菌液100 μLをInoculum Water with PLURONIC®(ベックマンコールター社)に加え,均等に浮遊させて接種用菌液とした。接種用菌液をマイクロスキャンPos MIC Panel 3.3Jパネル(ベックマンコールター社)にリノックイノキュレーターを用いて接種し,35℃で,18時間培養した。

III  結果

1. ライサスS4によるMIC測定精度の評価

Staphylococcus属57株について,対照法とのMIC一致率,カテゴリー一致率を算出した。その結果,MICの±1管差一致率は86.0~100.0%であった。特に,抗MRSA薬のVCM,DAPは100%,LZDは96.5%,TEICは98.2%と高値であった。一方,ABKは86.0%と他の薬剤に比較して低値傾向であった。カテゴリー一致率は,いずれの薬剤でもVMEは0%であった。薬剤別では,CLDMで91.2%,GMで93.0%,LVFXで98.2%,その他は100%と良好であった。抗MRSA薬であるVCM,DAP,LZD,TEICは一致率100%であった(Table 1)。

Table 1  Comparison of RAISUS S4 and DP panel MICs
Antimicrobial Dilution difference (NO. of isolates) Agreement (%) very major error major error minor error
−2 −1 0 1 2 MIC Category No. % No. % No. %
±1
Gentamicin 0 3 53 0 1 98.2 93.0 0 0 1 1.8 3 5.3
Arbekacin 8 24 25 0 0 86.0 n.d.* n.d.* n.d.* n.d.* n.d.* n.d.* n.d.*
Erythromycin 0 0 57 0 0 100.0 100.0 0 0 0 0 0 0
Clarithromycin 0 0 57 0 0 100.0 100.0 0 0 0 0 0 0
Clindamycin 4 28 24 0 1 91.2 91.2 0 0 0 0 5 8.8
Levofloxacin 1 3 52 1 0 98.2 98.2 0 0 0 0 1 1.8
Minocycline 0 1 55 0 1 98.2 100.0 0 0 0 0 0 0
Linezolid 2 41 14 0 0 96.5 100.0 0 0 0 0 0 0
Vancomycin 0 3 42 12 0 100.0 100.0 0 0 0 0 0 0
Teicoplanin 1 9 43 4 0 98.2 100.0 0 0 0 0 0 0
Trimethoprim-sulfamethoxazole 0 4 52 1 0 100.0 100.0 0 0 0 0 0 0
Daptomycin 0 3 37 17 0 100.0 100.0 0 0 0 0 0 0

* not determined

2. メチシリン耐性検出時間の検討

メチシリン耐性の検出までに要した培養時間の平均値,最小値,最大値および陽性株の累積率を時間経過とともに示した(Figure 1)。MRSAと判定される時間は,MPIPCでは6.8時間から8.8時間(平均7.2時間),CFXでは6.5時間から8.5時間(平均6.9時間)であった。MRSEと判定される時間は,MPIPCで8.5時間から14.8時間(平均9.6時間)であった。

Figure 1 Cumulative detection number of methicillin resistant strains (a) Staphylococcus aureus and (b) Staphylococcus epidermidis

Horizontal axis shows culture time (hr).

Vertical axis shows number of strains detected methicillin resistance at the indicated time.

3. CLDM誘導耐性検出精度の評価

EM耐性かつCLDM感性あるいは中間を示す30株を対象として,従来法であるWA法と比較した結果をTable 2に示す。一致率は100%と良好であった。

Table 2  Comparison of RAISUS S4 to MicroScan inducible clindamycin resistance
RAISUS S4 (CLDM/EM well)
positive negative
MicroScan Pos MIC 3.3J
(I-CLDM well)
positive 24 0
negative 0 6

IV  考察

現在,本邦では自動薬剤感受性測定機器が普及しているが,装置によって測定原理や判定時間および搭載薬剤の種類は異なっており,装置の特性を理解して使用することが重要である。Staphylococcus属は臨床的に分離頻度の高い細菌の一つであり,特にMRSAなどのメチシリン耐性菌は院内感染対策や抗菌薬治療の観点からも早期の正確な検出が重要である。これまでStaphylococcus属に対するライサスシリーズの検討結果を,Kanemitsuら3)が2000年に報告しているが,新たに,全自動感受性測定装置としてライサスS4が上市された。そこで今回我々は,ライサスS4を用いたStaphylococcus属に対する薬剤感受性試験の測定精度について評価を行った。薬剤全体の ±1管差一致率は86.0%~100%,カテゴリー一致率は91.2%~100%と良好で,特に抗MRSA薬であるVCM,DAP,LZD,TEICでは ±1管差一致率96.5%~100%と良好であった。ABKについては他の薬剤に比べ一致率が低かったが,この原因については何らかの機器特性の可能性も考えられるが今回の検討では解明に至らなかった。さらに,VMEは0%であった。機器の検討において薬剤感受性試験の性能を評価する際には,カテゴリー一致率は90%以上,MEは3.0%,VMEは1.5%未満が望ましいとされている4)。したがってライサスS4は,臨床検査室にて使用するための十分な精度を有していると考えられた。

さらに我々は,ライサスS4の有用性についてメチシリン耐性の判定時間およびCLDM誘導耐性検出の精度についても解析を行った。MRSAの検出には,微量液体希釈法やディスク法による薬剤感受性試験に加え,mecA遺伝子や変異型ペニシリン結合タンパクであるPBP2'産生の有無の検出などが知られている。CLSIでは,MPIPCとCFXの両薬剤のうち両方またはどちらか一方が耐性のものをメチシリン耐性とすることが定義されており2),微量液体希釈法を用いたMPIPCとCFXの薬剤感受性試験が臨床検査室では汎用されている。Bauerら5)は,PCR法を利用したメチシリン耐性菌検出の早期報告により入院日数が6日以上短縮し,結果的に病院のコストも削減可能であることを報告している。しかし,分子生物学的な手法はどの施設でも実施できるわけではないので,感受性試験に基づいた方法で正確に実施できることが望ましい。今回の検討では,MRSA18株でMPIPCとCFX共にすべて耐性であったことに加え,同定菌名があればMPIPCで平均7.2時間,CFXで平均6.9時間と,薬剤感受性測定当日中に迅速に耐性との判定が可能であり,18~24時間の判定である現行法よりも1日早くMRSAとの報告が可能となると考えられた。同様に,MRSEにおいても平均9.6時間と,MRSAに比較するとやや時間を要するが報告の迅速化は可能であると考えられたが,MRSAよりも判定に時間を要した。Kanemitsuらの報告3)では,前モデルの機器での判定時間の解析がなされており,MRSAの判定6時間に比べMRCNSでは9時間と,本検討と一致し,S. aureusよりもS. epidermidisで判定時間が長いことが報告されている。増殖速度の差が原因と考えられるが詳細は不明である。また,ライサスS4では,耐性の判定についてはその都度の報告が可能であるが,感性の判定には18~24時間の培養が必要である。以上から,ライサスS4によるMPIPCとCFXの2薬剤のMICの経時的なモニタリングは,メチシリン耐性菌の早期検出に有用であることが示唆された。

また,CLDM誘導耐性検出の精度についての検討も行った。CLDMはMRSAによる軽症の皮膚軟部組織感染症などで特にペニシリンアレルギーの患者に対する治療の選択肢となることが知られているが,EM耐性でCLDM感性の場合には,CLDM誘導耐性の有無を確認する必要がある6),7)。CLDM誘導耐性検出方法としてはEMとCLDM薬剤含有ディスクを用いたD-testと微量液体希釈法による方法がCLSIから推奨されているが,D-testは結果判明までにさらに1日時間を要する。八鍬ら8)は我々が従来法として使用したWA法についてD-testとの比較を行っており,100%結果が一致したことを報告している。今回,CLDM誘導耐性検出用の「CLDM/EM」ウェルの精度は従来法と完全に一致しており,CLDM誘導耐性検出能は良好で,薬剤感受性測定と同時に結果が得られることから有用であると考えられた。

以上から,ライサスS4の有用性が示唆されたが,今回の我々の検討では,使用した菌株数が57株と少なく,標準菌株やDAP耐性株,あるいはStaphylococcus属の他菌種など,使用株数を増加させてさらなる検討を行う必要があると考えられる。

V  結語

ライサスS4によるStaphylococcus属の薬剤感受性試験は,測定精度も高いことに加え,メチシリン耐性菌を早期に報告可能であり,感染症診療のための検査として有用であることが示唆された。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

謝辞

本論文の作成にあたり,ご指導ご助言を頂きました神戸大学医学部附属病院感染症内科 大路剛先生に深謝致します。

文献
 
© 2019 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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