医学検査
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技術論文
災害時の運用を想定したVITROS XT7600によるDダイマー測定の検討
鈴木 敦夫菊地 良介亀山 なつみ山本 ゆか子安藤 善孝松下 正
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2020 年 69 巻 2 号 p. 193-197

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抄録

本邦における自然災害のうち,特に震災の被災地では静脈血栓塞栓症の発症率が増加することが報告されている。災害拠点病院である当院においては,集中する患者に対し高いスループットをもった静脈血栓塞栓症スクリーニングが必要となる。今回我々は,無給水で使用可能な生化学免疫測定装置VITROS XT7600(オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス株式会社)を用いて,災害時を想定したDダイマー測定の妥当性を検証したので報告する。Dダイマー測定試薬にはナノピアDダイマー(積水メディカル株式会社)を使用し,対照機器・試薬にはそれぞれCS-5100およびリアスオートDダイマー・ネオ(ともにシスメックス株式会社)を使用した。これらを用いて併行精度,相関性および検体処理能力を検証した。併行精度は,変動係数が低濃度域で5.0%,高濃度域で1.6%であった。相関性は回帰式がy = 0.7188x + 0.8013,相関係数rは0.9253であった。検体処理能力としては,50検体の測定に約1時間15分を要した。併行精度および相関性試験の結果から,ナノピアDダイマーの性能は十分に発揮できていると考えられた。スループットについては,災害時・緊急時においてはPOCTや超音波検査を上回る処理能力を発揮できることが示唆され,VITROS XT7600によるDダイマー測定は災害時非常に有用であると考えられた。

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© 2020 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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