医学検査
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原著
Bm型およびABm型におけるABO遺伝子解析の意義
前島 理恵子藤原 孝記大曽根 和子難波 宏美永友 ひとみ成田 圭吾田代 晴子白藤 尚毅
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2021 年 70 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

ABO血液型には多くの亜型が存在し,血清学的性状によって分類されている。ABO遺伝子解析において,多くの亜型ではエキソン6と7に変異を認めるが,日本人に多いBm型はエキソン6と7に変異を認めないため,従来の遺伝子解析ではB/Oと判定される。近年,Bm型にはイントロン1内のエンハンサー領域を含む5.8 kb,3.0 kbの欠失や転写因子結合モチーフの変異があることが解明され,この変異によりB抗原の発現量が減少することが報告されている。当院にて血清学的性状により,Bm型およびABm型と判定された17症例について,PCR-SSP法によりエンハンサー領域を含む欠失を認めるBm遺伝子の検出について検討した。血清学的検査ではすべての症例で吸着解離試験にてB抗原が証明され,PCR-rSSO法による遺伝子タイピングでは,16例がB/OもしくはA/Bと判定され,1例がA/Oと判定された。Bm遺伝子を検出するPCR-SSP法では,16例に5.8 kbの欠失が認められ,1例は,3.0 kb,5.8 kbどちらの欠失も認められなかった。Bm遺伝子が検出されなかった症例は,遺伝子タイピングでA/Oと判定されており,血液型キメラが疑われた。血清学的検査によりBm型またはABm型と判定された場合,ABO遺伝子解析にてBm型に特有な欠失を調べることは,血液型を決定する上で有用であった。また,血清学的検査と遺伝子解析に相違が認められた場合,フローサイトメトリーによる赤血球の抗原量解析の必要性が示唆された。

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© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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