医学検査
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技術論文
VITROS XT7600による3日間の停電を想定した過酷環境下におけるウェット試薬とドライ試薬の安定性評価
菊地 良介松山 浩之度會 理佳横山 覚鈴木 敦夫安藤 善孝松下 正
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2021 年 70 巻 1 号 p. 86-92

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抄録

VITROS XT7600(XT7600)は無給水で分析が可能な自動分析装置であり,ビトロスマイクロスライド(ドライ)試薬に加え,汎用液状(ウェット)試薬をオープンチャンネルに搭載する運用での測定も可能である。本研究では,事業継続計画に基づく3日間の停電を想定し,試薬保管温度によるウェット試薬とドライ試薬の安定性への影響を検証した。測定機器はXT7600と対照機器としてLABOSPECT008(LST008)を使用した。試薬保管は,対照条件を各試薬の添付文書に応じた保管温度(冷蔵あるいは凍結)とし,検討条件を保冷ボックス,室温,37℃の3パターンで3日間保管した。ウェット試薬はLST008専用試薬を使用し,ウェット試薬をLST008あるいはXT7600のオープンチャンネルに搭載し測定を行った。ドライ試薬はXT7600専用試薬を使用した。測定試料は10例の患者残血清を用い,試薬保管温度による臨床化学検査10項目の測定値への影響を評価した。その結果,ウェット試薬とドライ試薬ともに,保冷ボックスによる試薬保管で検討10項目すべての測定値に影響を認めなかった。以上より,停電下では保冷ボックスによる試薬保管が有用であることが示唆され,ウェット試薬とドライ試薬によるハイブリット運用が可能なXT7600は被災後の検査体制再構築の一翼を担える分析装置になりえる可能性があると考えられた。

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© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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