医学検査
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研究
当院における栄養サポートチーム(NST)介入患者の栄養状態の検討
佐藤 雅子木下 博美大谷 真弓田中 沙知久保 嘉志田地 功忠小林 清子海老原 康博
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2021 年 70 巻 4 号 p. 824-830

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Abstract

当センターのNSTは,医師,看護師,薬剤師,リハビリテーションスタッフや臨床検査技師などで構成され,定期的なNST介入と適切な栄養療法により,患者の栄養状態改善をサポートすることを目的としている。NST介入は慢性期の患者が対象であったが,急性期の患者についても介入が行われてきている。今回,2016年1月から6月に2回以上のNST介入を施行し,死亡退院した患者を除いた80名(男48名,女32名)の急性期患者を対象とした。NST介入により血液検査値(血清アルブミン,総リンパ球数,総コレステロール,C-reactive protein),controlling nutritional status(CONUT)スコア,SGA(主観的包括的評価)が有意に改善した(p < 0.01)。また,NST介入終了時の多面的な栄養評価であるCONUTスコアに関連する因子として,重回帰分析にてNST介入前のアルブミン値(p < 0.01)と年齢(p < 0.01)が挙げられた。次に,NST介入期間に関連する因子として,重回帰分析にて栄養関連パラメーターは残らず,手術の有無(p < 0.01)と感染の有無(p = 0.014)が残った。今回の検討から,NST介入前後で栄養指標の有意な改善が見られるが,高齢者とNST介入前アルブミン低値例では注意が必要と考えられ,NST介入期間に関しては,感染症合併症例や手術症例では延長すると考えられた。

Translated Abstract

The Nutrition Support Team (NST) in our hospital consists of doctors, nurses, pharmacologists, registered dietitians, rehabilitation staff, and clinical laboratory technologists. Our mission is to improve patients’ nutritional status. To achieve our mission, we evaluate the patients’ nutritional status using the periodical round and administer a proper nutritional therapy. Although NST intervention has been performed in patients in the chronic phase, it has also been applied to patients in the acute phase. Eighty patients (48 males, 32 females; median age, 71 years) who received NST intervention at least twice between January and June 2016 were candidates for this retrospective analysis. We excluded patients who had died during their admission. After NST intervention, the levels of serum albumin, total cholesterol, and C-reactive protein, total lymphocyte counts, the scores of controlling nutritional status (CONUT), and the results of subjective global assessment were significantly improved (p < 0.01). Multiple correlation analysis showed that low levels of serum albumin before NST intervention (p < 0.01) and in elderly patients (p < 0.01) led to high CONUT scores after NST intervention and a maintained malnutrition status. Moreover, multiple correlation analysis also showed that a long NST intervention was related to the experience of operation (p < 0.01) or infection (p = 0.014) before the end of the NST intervention. These results indicated that the low levels of albumin before NST intervention and in elderly patients may prevent the recovery from malnutrition, and the experience of operation or infection might prolong the duration of NST intervention.

I  緒言

高度急性期病院では質の高い安全な医療を提供するため,各医療従事者が高い専門性を発揮しながら,業務を分担し,互いに連携するチームとなって適切な医療を提供している。当センターは癌,心臓病に対応する高度専門特殊医療や脳卒中を含む救命救急医療に特化した施設であり,その中で,栄養サポートチーム(Nutrition Support Team; NST)は,定期的に患者に対して栄養状態の評価・判定を行い,適正な栄養補給を実施し,さらに経緯を確認しながら栄養の改善をサポートすることを目的に組織されている。そのスタッフは,栄養サポートを実施する医師,看護師,管理栄養士,薬剤師,リハビリテーションスタッフや臨床検査技師からなっている。医師や看護師は日々の患者の状態の変化を,管理栄養士は食事の摂取状態を,薬剤師は患者への投薬状況や薬物相互作用などを,リハビリテーションスタッフは患者の筋力の変化などを,臨床検査技師は現在の患者の持つ検査値の意味や加えるべき検査など,それぞれが専門性を背景にして議論を行って患者の状態改善に努めている。一般的に,NSTは慢性期に入り症状が安定した患者に対して実施されることが多かったが,最近の報告では急性期患者に対してもNSTが介入し適切な栄養サポートを提案することで,患者の栄養状態の改善を図れることから急性期患者に対してのNSTの有用性が報告されている1)~4)。また,最近周術期の栄養管理を行うことで,患者状態の改善傾向が見られたことから,NSTの有用性が報告されている5),6)。今回,我々は,入院患者に対するNST介入前後の栄養状態の評価やNST介入期間に与える因子について検討した。

II  対象と方法

本研究は埼玉医科大学国際医療センターIRBの承認を得ている(16-076)。

1. 対象

2016年1月から6月に当センターに入院した患者のうち,NSTの介入が行われた145名中,介入前後の値を比較するため2回以上の回診が実施された患者102名のうち,死亡退院した22名を除外した80例を対象とした。

2. 方法

1) NST介入

当院のNST介入は,3段階で施行されており,入院時に1次評価として看護師によるmalnutrition universal screening tool(MUST)7)を用いた栄養スクリーニングが行われ,この評価をもとに2次評価としてNSTメンバーである管理栄養士の主観的包括的評価(subjective global assessment; SGA)8)が行われ,NSTメンバーによる患者の栄養状態を含めた臨床状態,臨床検査結果や治療法などを総合的に協議してNST介入計画を作成し,NST介入を医師に提案して許可が出ると最終的にNST介入が決定する。管理栄養士による2次評価は入院中週に1回程度で実施される。当初はNST介入が必要ないとされた症例でも,患者の栄養状態の悪化と評価されれば,NST介入となる症例もある。一旦NST介入が決定すると,医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,リハビリテーションスタッフや臨床検査技師が概ね2週間に1回(状態によっては1–3週間に1回)患者を回診しながら,患者の臨床状態や検査結果を基に,栄養状態の評価・判定を行い,NST内での検討内容を主治医や担当看護師などにフィードバックしている。NST介入時と同様にNSTメンバーによる患者の臨床状態を主観的および客観的データを用いて総合的に評価してNST介入終了を判断し,患者本人,主治医や担当看護師に報告している。

2) 検討項目

NST介入を行った対象の80名の患者各々の診療録,回診記録から年齢,性別,疾患,血清アルブミン(ALB),総リンパ球数(TLC),総コレステロール(T-cho),CRP値,controlling nutritional status(CONUT)スコア9),SGA,感染症有無,手術の有無などを後方視的に解析した。感染症の重症度に関しては,quick Sequential Organ Failure Assessment(qSOFA)スコアを用いた。qSOFAは感染症重症度を評価する指標になるとされており,スコアが2点以上を重症とした10),11)。また,手術の侵襲度に関しては,内視鏡や小切開手術までを低侵襲とし,開腹術などは高侵襲と定義した。介入前とはNSTの初回介入(回診)時であり,介入後とは介入(回診)終了日とした。尚,初回NST介入当日に測定した検査値をNST介入前検査値とし,介入終了日に測定した検査値をNST介入後検査値とした。患者の病態を考慮するが,CRPを感染症のバイオマーカーとした。

3) 統計学的解析

統計学的処理は,統計ソフトEZRを用い,カテゴリー変数の比較にはFisherの正確検定を用い,NST介入前後での検査値の比較にはWilcoxon signed-rank検定を,相関係数の解析にはSpearmanの順位相関係数を用いて単変量解析を行った。NST介入後の栄養評価としてのNST介入後CONUTスコアやNST介入期間をNST介入前の栄養評価項目やそれぞれに関連すると考えられる項目を説明変数として,重回帰分析を施行し関連する因子を検討した。この際,正規性の検定にはShapiro-Wilk検定を用いて,非正規性であるものは対数変換して重回帰分析を施行した。統計学的には,p < 0.05を有意であると判定した。

III  結果

1. 対象者の背景(Table 1

対象となった患者は,NSTが介入した患者80名であり,男性48名,女性32名であった。年齢の中央値は71歳(21–90歳)であった。患者の疾患内訳は,心臓脳血管疾患が44名と最も多く,全体の55.0%を占めていた。入院期間内に感染症罹患例は60例あり,多くはNST介入前に発症しており,重症度は高くない症例が多かった。手術症例は51例含まれており,半数以上はNST介入前に施行されており,侵襲度が高い手術症例が多かった。また,対象症例の入院期間は中央値50日(14–766日),NST介入期間は中央値22日(5–90日)であった。

Table 1  The characteristics of patients
Patients, n 80
Male/Female, n 48/32
Median age, years (range) 71 (21–90)
Disease
cardiovascular disease, n 44
cancer, n 15
trauma, n 10
gastrointestinal disease, n 5
other, n 6
Infection mild severe
before NST 32 15
during NST 9 2
after NST 2 0
Operation invasion low high
before NST 7 27
during NST 6 10
after NST 1 0
The duration of admission, days (range) 50 (14–766)
The duration of NST intervention, days (range) 22 (5–90)
The duration from admission to beginning of NST intervention, days (range) 17 (3–113)

2. 各種パラメーターのNST介入前後の比較(Table 2
Table 2  The comparison of values of nutritional parameters before and after NST intervention
Before NST After NST p value
ALB (g/dL; range) 2.3 (1.2–3.9) 2.6 (1.4–4.6) < 0.01
T-cho (mg/dL; range) 133.5 (72–294) 151 (77–236) < 0.01
TLC (/μL; range) 985 (266–2,537) 1,297 (329–3,917) < 0.01
CRP (mg/dL; range) 4.86 (0.09–26.81) 1.61 (0.05–16.54) < 0.01
CONUT score (range) 9 (2–12) 7 (1–11) < 0.01

Abbreviations: ALB, albumin; T-cho, total cholesterol; TLC, total lymphocyte count; CRP, C-reactive protein; CONUT, controlling nutritional status.

今回検討したNST介入を受けた80名を対象に,栄養のパラメーターとして各種血液検査値(ALB, T-cho, TLC, CRP),CONUTスコアをNST介入前とNST介入終了後で比較すると,各種血液検査値(ALB, T-cho, TLC, CRP)やCONUTスコアにおいてNST介入前後で有意な改善(p < 0.01)が認められた(Table 2)。SGAにおいては,2例がNST介入前に比べて増悪したが,それ以外の症例では改善または現状維持ができており,NST介入前後で有意差を認めた(Table 3; p < 0.01)。

Table 3  The relationship of SGA between before and after NST
After NST
well mild moderate severe
Before NST well 0 0 0 0
mild 13 24 1 0
moderate 4 28 4 1
severe 1 1 3 0

SGA, Subjective Global Assessment.

3. NST介入終了時の栄養状態の指標であるCONUT スコアと関連する因子の検討

NST介入後に各検査値や身体的評価であるSGAの改善が認められた。CONUTスコアは蛋白代謝を指標としたALB,脂質代謝を指標としたT-cho,免疫能を指標としたTLCを多面的に評価しているため,NST介入終了時の栄養指標をしてNST介入後のCONUTスコアと関連する因子を検討した。最初にNST介入前の各種血液検査値(ALB, T-cho, TLC, CRP),SGAカテゴリー(4段階のうち重症と中等症を重症とし,軽症と正常を軽症とする2つのカテゴリー),罹患疾患(がんとそれ以外の2群で検討),感染症や手術の有無などとNST介入後のCONUTスコアとの相関関係を単変量解析で検討すると,NST介入後のCONUTスコアは年齢,NST介入前のALBとT-cho,罹患疾患と有意な相関が認められた。有意な相関が認められた年齢,NST介入前のALBとT-cho,罹患疾患に加えて,介入後のCONUTスコアとの相関においてp < 0.2であったNST介入前のCRPと,性別を加えた6つの因子を説明変数として,NST介入後のCONUTスコアに対して重回帰分析すると,R2 = 0.401でNST介入前のALB(p < 0.01)と年齢(p < 0.01)が有意な関連因子として残った(Table 4)。

Table 4  Multiple linear regression analysis of factors related to CONUT score after NST intervention
Independent variables partial regression coefficient t value p value Vif
age 0.537 2.650 < 0.01 1.213
sex 0.075 0.719 0.474 1.047
pre NST albumin −1.243 −4.658 < 0.01 1.609
pre NST T-cho −0.014 −0.071 0.944 1.420
pre NST CRP 0.077 1.689 0.095 1.155
disease −0.003 −0.030 0.976 1.138

R2 = 0.401, p < 0.001

Abbreviations: Vif, variance inflation factor; T-cho: total cholesterol; CRP, C-reactive protein; CONUT, controlling nutritional status.

4. NST介入期間と関連する因子の検討

今回検討した症例では入院からNST介入開始までに中央値で17日(3–113日)と入院からNST介入開始までに幅がある。この中には入院当初はNST介入基準を満たさなかったが,その後の経過で栄養状態の悪化を来した症例があるため,栄養状態に問題を抱えた期間に焦点を当てた検討を考え,NST介入期間とNST介入前の検査結果など今回検討したパラメーターそれぞれとの関連を単変量解析すると,NST介入期間と今回検討したパラメーターである年齢,NST介入前の各種血液検査値(ALB, T-cho, TLC, CRP)には有意な相関を認めなかった。しかし,今回検討したパラメーターの中で感染の有無と手術の有無がNST介入期間と有意な相関を示した(感染:p = 0.02,手術:p < 0.01)。このため,この2つに加えて,NST介入期間との相関においてp < 0.2であった年齢,NST介入前のALB(p = 0.19)とTLC(p = 0.13),SGAカテゴリー(4段階のうち重症と中等症を重症とし,軽症と正常を軽症とする2つのカテゴリー:p = 0.15)に性別を加えた7つの因子を説明変数としてNST介入期間に対する重回帰分析すると,R2 = 0.170で感染症の有無(p = 0.014)と手術の有無(p < 0.01)が有意な関連因子として残った(Table 5)。

Table 5  Multiple linear regression analysis of factors related to the duration of NST intervention
Independent variables partial regression coefficient t value p value Vif
age −0.008 −0.310 0.757 1.123
sex 0.048 0.340 0.734 1.060
infection 0.394 2.499 0.015 1.074
operation 0.394 2.734 < 0.01 1.065
pre NST albumin 0.411 1.362 0.177 1.152
pre NST total lymphocyte count −0.221 −1.918 0.059 1.073
pre NST SGA −0.255 −1.828 0.072 1.079

R2 = 0.169, p = 0.004

Abbreviations: Vif, variance inflation factor; SGA, Subjective Global Assessment.

IV  考察

NST介入による栄養状態の評価は,患者にとっても有益であることが示されている12)。これまでの報告は慢性期の患者に対するNST活動の報告が多かった2),3),13)が,我々はがん患者の中には入院前から低栄養状態にある患者も存在することを見いだし14),適切な栄養サポートを提案することで,急性期でもNST介入により患者の栄養状態の改善を図れることを報告した4)。また,「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」15)や「日本版敗血症診療ガイドライン」16)でも早期栄養療法の必要性が示されている。

臨床検査技師が栄養支援を目的とするNSTに参加する意義については,検査の専門家の立場から検査結果を解釈する際に,報告した結果が現在の患者の状態と照らし合わせて妥当であるか否かという観点から各々の検査結果をチェックすることを担っている。例えば,血清アルブミン値は採血体位により変動し,立位に比べて臥位では0.3~0.4 g/dL減少するため,採血体位はいつも一定の体位で採血しているのかの確認が必要であり,重症肝疾患,肝硬変,ネフローゼ症候群や炎症疾患がある場合には血清アルブミン値は減少する。総コレステロール値はイミダゾール系抗真菌薬,ステロイド,経口避妊薬,降圧薬(サイアザイド系利尿薬,β遮断薬)で高値を来し,スタチン系,フィブラート系等脂質異常症治療薬で低値になる。CRPはシクロスポリン等により低値になる。または,採血の手技,病棟からの検体提出までの保存状態,検査室での測定系の問題,偽反応などをふまえた上で,患者の栄養状態を吟味し,必要に応じて検査の追加や再検などを提案されている。

今回の検討ではNST介入終了時の各種血液検査値(ALB, T-cho, TLC, CRP),CONUTスコアやSGAは介入前と比較して有意に改善していることが確認された。NST非介入群での栄養評価検討項目の改善程度との比較はできていないため,栄養評価の改善がすべてNST介入による効果であると結論づけることはできない。NST介入前のALB,T-cho,TLCなどを説明変数として重回帰分析によりNST介入後のCONUT値との関連を検討すると,NST介入前のALB(p < 0.01)と年齢(p < 0.01)がNST介入後のCONUT値の関連因子として抽出された。このことから,高齢者やNST介入時にアルブミン低値である症例ではNST介入後でも栄養状態が改善しにくいことが示された。藤本らの報告3)では,予後不良群ではNST介入前のアルブミンが低値であり,NST介入によっても血管外プールの減少により,アルブミンが上昇しづらいと指摘されている。また,加齢によりアルブミン合成障害を来し,代謝回転の低下からさらにアルブミンが低下するため,退院までアルブミンが上昇しない傾向があることから,早期の栄養管理の必要性が報告されている17)。今回の結果もこの機序が働いているのではないかと考えられた。

当初,NST介入前後で患者状態の改善が見られたことから,NST介入が入院期間に及ぼす影響を検討したが,入院からNST介入開始までに中央値で17日であるが,3–113日と症例により幅があり,この期間にはNSTの関与がないことから,栄養状態に問題を抱えた期間に焦点を当てたNST介入期間と関連する因子を検討することとした。その結果,NST介入前の各種検査結果はNST介入期間と関連する因子に残らず,感染症の有無(p = 0.02)と手術の有無(p < 0.01)が因子として残ったことから,手術症例や感染症合併症例においてNST介入期間が延長することが示された。手術後の侵襲期には蛋白異化が蛋白合成を上回り,窒素バランスが負に傾くため,蛋白異化を抑制して,蛋白合成を促進するための時間や手術による一過性の炎症反応による時間などが加わることで,NST介入期間が長くなることが予想された。また,感染症合併症例では,感染症による侵襲によって身体への著明に負担が増大し,負荷改善までの期間が加味されると考えられている18)ため,NST介入期間が長くなると考えられた。今回の検討では,NST介入前各種血液検査値(ALB, T-cho, TLC, CRP)を用いてNST介入期間を予測することは難しいと考えられた。最近,NST介入後の栄養評価悪化症例や死亡症例を予後不良群として解析すると,NST介入時のALBやT-choは予後因子とならなかったとの報告19)もある。

今回の検討には,いくつかの制限がある。現在,当センターでは外部測定のため実用的でないと判断し,導入されていないが,患者状態が悪いと考えられる入院早期の栄養評価にrapid turnover protein(RTP)を用いた短期的な栄養評価の有用性が報告されている20)。今回の検討に半減期の短いバイオマーカーを取り入れることで,栄養評価を今以上に鋭敏に捕らえることが可能になり,栄養管理の方法も変わっていくかもしれない。次に,今回の検討では対象症例数が80例と少ないことやretrospectiveな解析であることが挙げられる。また,上述したように今回の検討ではNST非介入群との比較は行っていないため,NST非介入群と比較してのNST介入効果が評価できていない。今後,大規模な無作為臨床試験により,NST介入効果の検証が必要であると考えるが,これまで質の高い大規模無作為早期NST介入臨床試験は行われていないとの指摘21)もあり,この点を踏まえた臨床試験の実施が望まれる。

最近,NST加算が算定されるようになり,今後NST介入患者が増加すると考えられる。NSTに関わる臨床検査技師は検査の専門家として報告した結果が現在の患者の状態と照らし合わせて妥当であるか否かという観点から各々の検査結果をチェックして,正確な検査結果の解釈に努めなくてはならない。今後もNST活動を通じて,臨床検査技師としての知見を示すことで,より一層機能的なNSTにつながると考える。

V  結語

NST介入後に栄養状態の改善は認められたが,高齢者とNST介入前アルブミン低値例では注意が必要と考えられ,NST介入期間に関しては,感染症合併症例や手術症例では延長すると考えられた。

本論文の要旨は第34回日本静脈経管栄養学会(2017年2月,岡山)において報告した。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

謝辞

統計解析にご助言を頂きました埼玉医大情報技術支援センター椎橋実智男教授に深謝致します。

文献
 
© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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