医学検査
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技術論文
血清亜鉛検査における院内導入の効果
兼松 健也小堀 祐太朗上野 剛中村 文子佐藤 尚武
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2021 年 70 巻 4 号 p. 718-723

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抄録

亜鉛欠乏症は,味覚異常や免疫低下,諸疾患の悪化など多彩な病態を引き起こすが,適切な亜鉛補給によりこれらは改善する。そのため,血清亜鉛を正しく,迅速に測定し血清亜鉛値を管理することは重要である。当センターでは2019年7月より血清亜鉛を院内で測定し,結果を即時報告している。そこで,血清亜鉛検査を外部委託検査から院内検査に移行し,もたらされる効果を検証した。2019年1月から2020年2月の間に当センターにて血清亜鉛の測定が実施された4,722件を対象とした。院内検査に移行した日を境にして,院内導入前後の状況を比較した。院内導入によって,検査患者数は入院・外来とも増加した。入院患者群では血清亜鉛値や酢酸亜鉛水和物製剤ノベルジン錠(以下,ノベルジン)の処方量に院内導入前後の差は認められなかった。これに対し,外来患者群では血清亜鉛値が低値となり,ノベルジン処方量も有意に低下した。このことは,院内導入によって外来当日に血清亜鉛値を知ることができ,ノベルジン処方量を調整することが可能になった影響と考えられた。以上から,血清亜鉛測定の院内導入は,医師の診療を助け,患者の負担軽減に貢献することが示唆された。

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© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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