2022 年 71 巻 1 号 p. 25-31
病院診療において,有症状者COVID-19疑い患者の診断検査と無症状病原体保有者のスクリーニング検査は区別して考えなくてはならない。今回我々は有症状でCOVID-19疑い患者の診断検査と無症状病原体保有者のスクリーニング検査を実施した2群について,抗原定量検査の有効性と問題点について検討した。対象は2020年11月から2021年5月の期間で,RT-PCR検査とSARS-CoV-2抗原定量検査を同日提出された有症状COVID-19疑い患者群277検体,無症状者スクリーニング検査群1,781検体の合計2,058検体について後ろ向き解析を行った。その結果,有症状COVID-19疑い患者群では抗原定量値 ≥ 0.36 pg/mLを陽性とした場合は感度95.9%,特異度80.4%,無症状者スクリーニング検査群では抗原定量値 ≥ 0.83 pg/mLを陽性とした場合は感度100%,特異度99.5%であった。今回の解析で,抗原定量検査は無症状者のスクリーニング検査としては非常に高い有効性が認められたが,一方で同検査を有症状患者の診断目的で用いる場合は,感度・特異度が若干低下するため,その特性をしっかりと理解し,臨床症状,画像診断,PCR検査や抗体検査を組み合わせた総合的な判断が必要である。
In hospital practice, the use of the antigen quantitative test for the diagnosis of symptomatic patients suspected of having COVID-19 and screening for asymptomatic pathogen carriers must be considered separately. We examined the effectiveness of and the problems encountered with the use of the antigen quantitative test in two groups: symptomatic patients suspected of having COVID-19 and asymptomatic pathogen carriers. There were 277 symptomatic patients suspected of having COVID-19 and 1,781 asymptomatic patients who underwent both the RT-PCR test and SARS-CoV-2 antigen quantitative test on the same day from November 2020 to May 2021. A retrospective analysis was performed on a total of 2,058 samples. In the symptomatic patients suspected of having COVID-19, when the antigen level obtained was ≥ 0.36 pg/mL indicating positivity for SARS-CoV-2, the antigen quantitative test used for diagnosis showed a sensitivity of 95.9% and a specificity of 80.4%. In the asymptomatic patients, when the antigen level obtained was ≥ 0.83 pg/mL, the antigen quantitative test used for screening showed a sensitivity of 100% and a specificity of 99.5%. In this analysis, the antigen quantitative test was found to be extremely effective for screening for asymptomatic individuals. On the other hand, when the test is used for the purpose of diagnosing symptomatic patients, its sensitivity and specificity are slightly reduced. Therefore, it is necessary to fully understand its characteristics and make a comprehensive judgment based on a combination of clinical symptoms, diagnostic imaging, PCR tests, and antibody tests.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は典型的な症状を伴わず,無症状病原体保有者(以下,無症状者)が多く存在することが報告されている1)~3)。COVID-19疑い患者および症状がない入院患者に対しても,SARS-CoV-2検査を適切に実施することは,早期の診断・治療のみならず,医療施設の安全性を確保し,感染拡大を防止する上で重要となる。そのため病院診療では,COVID-19疑い患者の診断検査と,COVID-19の疑いはないが感染防止対策上検査が必要とされる無症状者スクリーニング検査は区別して考えなければならない。
今回我々は,有症状COVID-19疑い患者の診断検査と,無症状者スクリーニング検査を実施した2群で,RT-PCR検査とSARS-CoV-2抗原定量検査を同日提出された結果について後ろ向き解析を行い,COVID-19診断検査及びスクリーニング検査としての抗原定量検査の有効性と問題点について検討したので報告する。
当院において,有症状COVID-19疑い患者の検査はRT-PCR検査(院内)とSARS-CoV-2抗原定量検査,無症状者スクリーニング検査はRT-PCR検査(外部委託)とSARS-CoV-2抗原定量検査が実施されている。2020年11月から2021年5月の期間で,有症状COVID-19疑い群として提出された277検体と,無症状者スクリーニング検査として提出された1,781検体の合計2,058検体について比較検討を行った。RT-PCR検査,SARS-CoV-2抗原定量検査の検査材料はすべて鼻咽頭ぬぐい液であった。有症状COVID-19疑い患者群は発熱外来患者とCOVID-19の入院患者(陰性確認含む)を対象とし,無症状スクリーニング検査群は入院前患者と手術前患者を対象とした。抗体価測定は,感染の既往を確認する目的でRT-PCR検査と抗原定量検査が乖離した検体に関して実施した。有症状COVID-19疑い患者群ではRT-PCR検査陰性で抗原定量値 ≥ 100~< 500 pg/mLであった4検体と,無症状者スクリーニング検査群ではRT-PCR検査陽性で抗原定量値 < 1 pg/mLであった1検体の合計5検体を対象に行った。
2. 方法 1) SARS-CoV-2抗原定量検査(1)測定機器はルミパルスG600 II/ルミパルスG1200(富士レビオ),使用試薬は検体処理液セットSARS-CoV-2&Flu(富士レビオ),ルミパルスSARS-CoV-2Ag免疫反応カートリッジ(富士レビオ)を用い,添付文書に従って操作した。
(2)判定基準は,陰性 < 1 pg/mL,判定保留 1~10 pg/mL,陽性 > 10 pg/mLとした。
2) RT-PCR検査 ①核酸抽出全自動核酸抽出装置MagNA Pure 24 System(Roche)を用いた場合,試薬はMagNA Pure 24 Total Isolation Kit(Roche)を使用した。用手法は,核酸抽出用試薬High Pure Viral NucleAcid Kit(Roche)を使用した。検体抽出操作時のコントロールはLightMix Modular EAV RNA Extract. Control(Roche)を使用し,RT-PCR検査でのインターナルコントロール 目的としてSARS-CoV-2と同時に測定を行った。それぞれ核酸抽出は添付文書に沿って行った。
②RT-PCR(院内)使用機器はCobas z480(Roche),増幅試薬はLightCycler® Multiplex RNA Virus Master(Roche)とLightCycler® Modular EAV RNA Extract Control(Roche),プライマーはLightCycler® Modular SARS and Wuhan CoV E-gene(Roche)を用いた。増幅試薬とプライマーはメーカーの添付文書に従い調整を行った(Figure 1)。
Cobas z480(Roche)を用いて測定した時のPCRプログラムを示した。
外部委託検査はリアルタイムRT-PCRシステム(Takara型式:7500 Real Time PCR System,製造:Applied Biosystems),試薬はTakara SARS-CoV-2ダイレクトPCR検出キット(タカラバイオ(株))を用い,添付文書に沿って測定を行っていた。
④抗体価測定測定機器はcobas6000(cobas e600)(Roche),試薬はElecsys Anti-SARS-CoV-2 N RUO(Roche)を用いて測定を行った。
3. 統計解析ROC曲線解析にはEZR(R version 4.0.3)を使用した。EZRはRおよびRコマンダーの機能を拡張した統計ソフトウエアであり,自治医科大学附属埼玉医療センターのホームページで無償配布されている4)。
有症状COVID-19疑いとして検査を実施した277検体の結果をTable 1に示す。
抗原定量値 | PCR Ct値(E-gene) | ||||
---|---|---|---|---|---|
陰性 | ≥ 30 | < 30~≥ 20 | < 20 | ||
陽性 | ≥ 5,000 | 1 | 12 | 23 | |
≥ 4,000~< 5,000 | 3 | ||||
≥ 3,000~< 4,000 | 1 | ||||
≥ 2,000~< 3,000 | 4 | ||||
≥ 1,000~< 2,000 | 2 | ||||
≥ 500~< 1,000 | 1 | 4 | 1 | ||
≥ 100~< 500 | 4 | 4 | 3 | 1 | |
≥ 10~< 100 | 5 | 5 | 5 | 2 | |
保留 | ≥ 1~< 10 | 23 | 13 | 3 | |
陰性 | < 1 pg/mL | 148 | 9 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針5)に明記されているように,リアルタイムPCR検査は既知濃度の陽性対象を複数使用し信頼性が確保されているため,今回の検討においてもRT-PCR検査のE-gene検出を標準法として用いた。RT-PCR検査を標準法とし抗原定量値 ≥ 1 pg/mLを陽性とした場合,SARS-CoV-2抗原定量検査は感度90.7%(88/97検体),特異度82.2%(148/180検体),全体一致率85.2%(236/277検体)となった。RT-PCR検査(E-gene)陽性で抗原定量検査陰性の9検体(偽陰性)についての詳細はTable 2に示す。9検体すべてCt値が30以上であり,いずれの検体もCOVID-19が発症してから10日以上経過している症例であった。RT-PCR検査のCt値が30以下で陽性となった検体のRT-PCR検査と抗原定量検査結果に不一致はなかった。
No | RT-PCR (Ct値) |
抗原定量結果 (pg/mL) |
発症してからの日数 | |
---|---|---|---|---|
E-gene | 判定 | 定量値 | ||
1 | 30.20 | ― | 0.49 | 13日 |
2 | 31.65 | ― | 0.46 | 16日 |
3 | 31.72 | ― | 0.01 | 16日 |
4 | 32.02 | ― | 0.11 | 19日 |
5 | 32.68 | ― | 0.00 | 15日 |
6 | 34.90 | ― | 0.36 | 13日 |
7 | 34.91 | ― | 0.59 | 18日 |
8 | 34.94 | ― | 0.45 | 17日 |
9 | 37.41 | ― | 0.16 | 12日 |
RT-PCR検査陰性で,抗原定量検査陽性または判定保留となった検体は32検体となった。内訳は抗原定量値 ≥ 1~ < 10 pg/mLの判定保留が23検体,≥ 10~< 100 pg/mLが5検体,≥ 100~< 500 pg/mLが4検体である。≥ 100~< 500 pg/mLの4検体は抗原定量値が高値である為,2日連続でRT-PCR検査で再検査を実施したがすべて陰性となった。また,感染後期も考慮して抗N抗体検査を実施したがすべて陰性であった。
2. 無症状者スクリーニング群における結果無症状者スクリーニング群として検査を実施した1,781検体についての結果をTable 3に示す。有症状COVID-19疑い患者群と同様に,RT-PCR検査を標準法とし,抗原定量値 ≥ 1 pg/mLを陽性とした場合,SARS-CoV-2抗原定量検査は感度80%(4/5検体),特異度99.8%(1,773/1,776検体),全体一致率95.0%(1,777/1,781検体)となった。RT-PCR検査と抗原定量検査結果が乖離した検体は4検体であり,内訳をTable 4に示す。RT-PCR検査陰性で抗原定量検査判定保留3検体については,抗原定量値はいずれも10 pg/mL以下と低値であり,COVID-19を疑う症状や背景がないことから非感染者と判断された。一方,RT-PCR検査陽性で抗原定量検査陰性(偽陰性)の1検体については,3日後にRT-PCR検査(Roche)の再検査で陰性化が認められた。追加で抗体検査を実施したところ抗N抗体陽性(2.460 U/mL)であり,感染後期であったと推定された。
抗原定量値 | PCR結果 | ||
---|---|---|---|
陰性 | 陽性 | ||
陽性 | ≥ 5,000 | 1 | |
≥ 4,000~< 5,000 | |||
≥ 3,000~< 4,000 | |||
≥ 2,000~< 3,000 | |||
≥ 1,000~< 2,000 | 1 | ||
≥ 500~< 1,000 | |||
≥ 100~< 500 | 1 | ||
≥ 10~< 100 | 1 | ||
保留 | ≥ 1~< 10 | 3 | |
陰性 | < 1 pg/mL | 1,773 | 1 |
No | RT-PCR(Takara) | 抗原定量値(pg/mL) | 抗原定量結果 | 抗体検査 | 最終判断 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 陰性 | 3.45 | 判定保留 | ― | 非感染 |
2 | 陰性 | 4.13 | 判定保留 | ― | 非感染 |
3 | 陰性 | 5.47 | 判定保留 | ― | 非感染 |
4 | 陽性 | 0.83 | 陰性 | 陽性 | 既往 |
COVID-19診断において抗原定量検査の有効性を分析するため,統計解析ソフトRを用いて解析を行った。その結果をFigure 2に示す。
有症状COVID-19疑い患者群として抗原定量検査が実施された277検体のROC曲線に基づき算出されたカットオフ値は0.36となった。閾値を0.36と設定した場合,感度95.9%,特異度80.4%。ROC曲線下面積は,0.941(95%信頼区間0.911–0.972)。
無症状者スクリーニング検査群として抗原定量検査が実施された1,781検体のROC曲線に基づき算出されたカットオフ値は0.83となった。閾値を0.83と設定した場合,感度100%,特異度99.5%。曲線下面積0.999(95%信頼区間0.997–1)。
有症状COVID-19疑い患者群として抗原定量検査を実施した277検体では,ROC曲線に基づき算出されたカットオフ値:0.36を閾値に設定した場合は感度95.9%,特異度80.4%となり,ROC曲線下面積は,0.941(95%信頼区間0.911–0.972)であった。
無症状者スクリーニング群として抗原定量検査を実施した1,781検体では,ROC曲線に基づき算出されたカットオフ値:0.83を閾値に設定した場合は感度100%,特異度99.5%となり,ROC曲線下面積0.999(95%信頼区間0.997–1)であった。
有症状COVID-19疑い患者群および無症状者スクリーニング群の検査目的を正しく理解し,適切なSARS-CoV-2検査が実施されることは非常に重要である。有症状COVID-19疑い患者は早期の診断・治療を目的とし,無症状者は感染拡大を防止する目的で検査が実施される。よってCOVID-19疑い患者の検査は高感度で高精度な検査が求められ,無症状者ではスクリーニング検査としての重要性が求められる。University of Colorado BoulderとHarvard T. H. Chan School of Public Healthなどの研究グループは,集団スクリーニング検査を反復して行い,その効果をシミュレーションした。その結果,スクリーニング検査に求められる要件と,疑い症状の診断に求められる検査の要件は異なることが実証された。症状がない患者のスクリーニング検査には,高頻度に検査を繰り返す必要があり,低コストで迅速な検査法が求められる。集団スクリーニング検査の効果は,主として検査の頻度とスピードに依存し,検査精度と検出限界の貢献はわずかであることが示唆されている6)現在,無症状者におけるSARS-CoV-2の検査は,PCR検査と抗原定量検査が適応となっている5)。しかしPCR検査は感度と特異度が高い反面,多くは煩雑で時間を要し,試薬単価が高価であるため,スクリーニング検査に求められる要件には適していない。一方,全自動化学発光酵素免疫測定システムである抗原定量検査は,検査手技も簡便で非常に短時間(約30分)で測定が可能であり,スクリーニング検査として有効性が高いと考えられる。
スクリーニング検査を実施するにあたり,ウイルスの排泄量とその期間を考慮することも非常に重要なことである。COVID-19は一般的に潜伏期間約5日とされており,感染性のあるウイルスは発症の1~3日前から排出され,その後は約7~10日間排出され続ける7),8)。一部の患者ではウイルスを排泄するにもかかわらず無症候性のままであり,無症状者と有症状者の間にウイルス量に有意差が無く,無症状者はSARS-CoV-2感染拡大の大きな要因となっている9)~11)。また,PCR検査によるウイルス検出では,SARS-CoV-2に感染すると当分の間ウイルス濃度が現行の検出法の検出限界閾値以下の潜伏期間が続き,やがてウイルスが体内で指数関数的に極めて短期間(1日以内)で増殖する12)。PCR検査で発症前の感染を検出するウィンドウは短く,それに対して感染後のPCR検出可能なウィンドウは長いとされている12)。今回の検討で有症状COVID-19疑い患者群は,RT-PCR検査を標準法とし抗原定量値 ≥ 1 pg/mLを陽性とした場合,抗原定量結果は偽陰性9検体,偽陽性32検体であった。偽陰性9検体はすべてRT-PCR検査でCt値30サイクル数以上のため,抗原定量検査で検出可能なウイルス量が検出限界閾値以下であったと推測される。これはAokiら13)が報告している高ウイルス量ではRNA量と抗原量は一致するとの報告と同様の結果である。また,発症日から10日以上経過しておりウイルスにほぼ感染力がない状態と考える。SARS-CoV-2感染者においてRT-PCR結果と抗原定量結果が乖離する要因は,排出されるウイルス量であると考える。今回の9検体はすべて感染後期による乖離である。また,ウイルス量が少ない感染初期にも乖離が起こることが予想される。しかし,感染初期はウイルスが体内で極めて短期間(1日以内)で増殖するため,感染極早期を捉えることは確定的な問題でPCR検査でも抗原定量検査でもほぼ同等と考えられる。今回の検討でも,感染初期での乖離例はみられない。このように感染初期で今後ウイルス量が短時間で増加するものに関しては,繰返し検査を実施する必要性があり,短時間で簡便に実施可能な抗原定量検査の有効性は高いと考えられる。しかし,有症状者COVID-19疑い患者に関しては感染後期の状態も考えられるため,抗原定量検査が陰性でもPCR検査での確認や抗体検査での確認が必要と考える。
有症状COVID-19疑い患者群では偽陽性は32件で認められた。抗原抗体反応を利用した抗原定量検査において,偽陽性の出現は避けて通れない課題である。今回の検討データでは抗原定量値が ≥ 1~< 500 pg/mL範囲で偽陽性が生じていた。有症状者のCOVID-19疑いの診断目的で使用する場合は,今回の検討でROC曲線に基づき算出されたたカットオフ値を用いて,抗原定量値 ≥ 0.36~< 500 pg/mLの場合には,必ずPCR検査で再検査すべきと考えられた。無症状者スクリーニング群では,RT-PCR検査を標準法とし抗原定量値 ≥ 1 pg/mLを陽性とした場合,抗原定量結果は感度80%,特異度99.8%となった。ROC曲線解析より算出されたカットオフ値0.83 pg/mLを閾値とした場合は,感度100%,特異度99.5%となり,RT-PCR検査とほぼ同等の結果を得た。今回,偽陰性(抗原定量値が0.83 pg/mL)は1件のみで,無症状かつ再検査のPCR検査も陰性で抗N抗体陽性であることから,既感染と判定された。感染防止対策的に隔離の判定基準で使用する場合は,検出できなくても問題ない症例と考える。この結果をもとに,我々は有症状COVID-19疑い群と無症状者スクリーニング検査群での,抗原定量検査利用に関する新しい基準を提案する。有症状COVID-19疑い群に関しては,① < 0.36 pg/mLの結果は陰性として確定する,② ≥ 0.36 pg/mLから < 500 pg/mLまでの結果は判定保留としてPCR検査で再検査する,③ ≥ 500 pg/mLの結果はPCR検査なしで確定例とする。しかし,抗原定量検査陰性でもCOVID-19を疑う症状や画像所見がある場合は,ウイルス量が少ない時期を考慮し,PCR検査や抗体検査を追加し確認する。無症状者スクリーニング群に関しては,添付文書に記載されたカットオフ値(またはROC曲線解析より算出されたカットオフ値)< 1(0.83)pg/mLは陰性とし,抗原定量値 ≥ 1(0.83)pg/mLから< 500/mLの結果となった場合は,PCR検査と必要に応じて抗体検査を追加し確認する。
今回の解析で,抗原定量検査は無症状者のスクリーニング検査において非常に高い有効性が認められた。一方で有症状患者の診断目的で用いる場合は,感度・特異度が若干低下するため,その特性をしっかりと理解し,臨床症状,画像診断,PCR検査や抗体検査を組み合わせた総合的な判断が必要であると考えられる。
今回我々は,2つのグループ群においてPCR検査と抗原定量検査の後ろ向き研究を実施した。抗原定量検査は隔離を目的とした無症状者スクリーニング検査として,非常に有効性の高い検査方法であることが実証された。また有症状者におけるCOVID-19の診断的利用法では,PCR検査や抗体検査と組み合わせることにより診断精度が向上することを確認した。PCR検査と抗原定量検査の長所と短所を鑑み,それぞれ目的に応じた検査法を選択し,組み合わせることが臨床の求める検査精度に合致するものと考える。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。