2022 年 71 巻 3 号 p. 523-527
今回われわれは抗SARS-CoV-2抗体試薬について検討を行い,既往感染者の把握が可能か考察した。対象試薬は,Elecsys Anti-SARS-CoV-2 RUO(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社,以下C),ARCHITECT SARS-CoV-2 IgG(アボットジャパン合同会社,以下A-G),ARCHITECT SARS-CoV-2 IgM(アボットジャパン合同会社,以下A-M)を用いた。対象は,2020年2月から10月までに提出されたSARS-CoV-2 PCR検査陽性患者16症例とPCR陰性患者9症例の保存検体を用いた。PCRと3試薬において,PCR陽性となった16例では,Cで13例(感度81.3%),A-GとA-Mで14例(感度87.5%)の陽性を確認した。一方,PCR陰性であった9例では,3試薬ともすべて陰性となった(特異度100%)。C/A-Gはヌクレオカプシド蛋白に対する抗体でIgG,A-Mはスパイク蛋白に対する抗体でIgMを検出する。限られた症例数ではあるが,今回の結果からは,これらの対象とする蛋白やIgG/IgMの違いに有意な差は認められず,いずれもPCR陽性検体でも陽性とならない症例が確認された。C/A-Gについては比較的長期にわたり検出されるため,既往感染の判断補助に使用できる可能性が示唆された。A-Mは,ワクチンの影響に対する検討が必要である。