2025 年 74 巻 1 号 p. 37-44
大動脈弁狭窄症(aortic valve stenosis; AS)は高齢者の主要な弁疾患であり,診断には経胸壁心臓超音波検査などの画像診断が用いられる。日常診療では聴診による診断が最初に行われるが,聴診は聴覚に依存し,また定量化が難しいため心音解析に関する研究が進行中である。本調査は心音図検査装置(AMI-SSS01)を使用し,ASの重症度を判断することが可能か装置使用感を含めて評価した。21名のAS群と15名の健常人群を対象に検査を行った。経胸壁心臓超音波検査にて判断したASの重症度とAMI-SSS01で取得した心音図の最大振幅に相関関係を認め(相関係数0.762),健常人・軽度AS群と中等度・高度AS間群との最大振幅に有意差を認めた(p < 0.01)。AMI-SSS01を用いた中等度以上のAS検出精度は感度1.00,特異度0.83であった。また,AMI-SSS01使用者6名に対する装置使用感のアンケート調査では,デバイスの使いやすさ,操作方法の理解のしやすさ,デバイスの持ち運びやすさについては5点評価でそれぞれ平均4.0点以上あり,操作方法は簡便であり,理解しやすく,さらにポータビリティに優れていることが示唆された。今後は他の心疾患や症例数を増やした検討が必要であるが,本調査で AMI-SSS01を使用してASの重症度を簡便に判定できる可能性が示唆された。
Aortic valve stenosis (AS) is a major valve disease in elderly; it is diagnosed using imaging techniques, such as transthoracic echocardiography. Although auscultation is the first diagnostic step in routine practice, it is auditory-dependent and difficult to quantify. Thus, research on cardiac sound analysis is in progress. This study was conducted to evaluate the possibility of determining AS severity using a phonocardiographic device (AMI-SSS01), including the experience of using the device. Twenty-one patients with AS and fifteen healthy participants were tested. There was a correlation between AS severity determined by transthoracic echocardiography and the maximum amplitude of the phonocardiogram obtained by AMI-SSS01 (r = 0.762). Maximum amplitudes were significantly different between the healthy participants and patients with mild AS group and moderate and severe AS group (p < 0.01). The sensitivity and specificity of AMI-SSS01 in detecting moderate or severe AS were 1.00 and 0.83, respectively. Furthermore, six users of the AMI-SSS01 were surveyed about the device’s usability, and it received average scores above 4 out of 5 for ease of use, clarity of operation, and portability. These findings suggest that the device is easy to use, straightforward to operate, and highly portable. Although further studies including other cardiac diseases and a larger number of cases are needed, this study suggests that AMI-SSS01 may be used to determine AS severity in a simple manner.
大動脈弁狭窄症(aortic valve stenosis; AS)は先進国において高齢者が患う弁疾患の中で多い疾患の一つであり,心不全の原因となる1)。ASは診察時の聴診などで疑われ,経胸壁心臓超音波検査が第一選択として施行され,経食道心臓超音波検査,造影CT検査,心臓カテーテル検査などで診断される2),3)。聴診は特に循環器診療の医療現場で当たり前のように用いられているが,聴覚に依存するため定量化できないという問題がある。この問題を解決するために心音解析に関する研究が世界中で行われている4)~8)。専門医の聴診による心疾患検出精度は,ASの場合,感度が0.6–0.8,特異度が0.9以上であると言われている9)。聴診に代わる心音図解析診断の臨床応用が望まれるが,心音解析関連の既報では専門医の聴診精度には達していないと言われており,臨床応用には至っていない10)。また,AS診断のための経胸壁心臓超音波検査,造影CT検査,心臓カテーテル検査などは検査者の習熟に時間を要すること,検査可能数にも限りがあることなど問題を抱えている11)。患者にとっても検査に時間がかかることや費用の面,侵襲性などがあることから,他に簡便に診断できるツールが望まれる中で,心音図検査装置(AMI-SSS01)を使用してのAS重症度解析についての報告はされていない。本研究ではAMI-SSS01を使用して,AS重症度の判断を行うことができるか装置使用感を含めて調査した。
2023年7月~2024年2月の間に,当院循環器内科受診時に経胸壁心臓超音波検査が施行されASが疑われた患者,またはASにて経過観察中の患者で同意が得られたAS群21名,当院職員で同意が得られた健常人群15名を対象とした。AS以外の中等度以上の弁膜症や,左室流出路狭窄などの心筋疾患,先天性心疾患を有する者,経胸壁心臓超音波検査においての描出不良例は除外した。なお,当研究は国保水俣市立総合医療センター倫理委員会(承認番号:令和5年1号)の承認を得た上で行った。
2. 使用機器心音図検査装置はAMI社製のAMI-SSS01を使用した。装置本体サイズは約90 mm(縦)×約60 mm(横)×約40 mm(高さ),重量が約290 g(Figure 1)。超音波診断装置はPhilips社製のEPIQ,探触子はセクタ型プローブX5-1(周波数1~5 MHz),およびGEヘルスケア社製のVivid E95,探触子はセクタ型プローブM5Sc(周波数1.4~4.6 MHz)を使用した。
Explanation of control display panel.
ASの重症度評価は経胸壁心臓超音波検査で得られたデータより,2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン2)を判断基準として判定し,AS群を軽度AS群,中等度AS群,高度AS群に分類した。
AMI-SSS01の検査設定は紙送り速度を50 mm/秒,心電ノイズ除去フィルタ設定on,心音解析結果出力感度設定を0.0 dBとした。測定体位は仰臥位にて行い,測定部位は第2肋間胸骨右縁(right sternal border; 2RSB),第2肋間胸骨左縁(left sternal border; 2LSB),第4肋間胸骨左縁(4LSB)とした。I音からII音の間にあるM2_1(中高音;遮断周波数160 Hz,感度差 −24 dB)とH_1(高音;遮断周波数315 Hz,感度差0 dB)の最大振幅を報告書の枡目上で計測した(Figure 2)。また,検査を行うにあたりAMI-SSS01の使用感を検査者6名へアンケート調査を実施した。調査項目は1.デバイスの使いやすさについて,2.デバイスの持ち運びやすさについて,3.操作方法の理解しやすさについて,4.デバイスの機能や性能に関する満足度について,5.デバイスの保守やメンテナンスにかかる手間についてとし,それぞれ項目は,非常に悪い,悪い,普通,良い,非常に良い,の5段階で使用感評価を行った。
The largest amplitude of M2_1 or H_1 was measured.
In this case, the maximum amplitude is 23.
統計解析ソフトはEazyR12)を使用した。AMI-SSS01の最大振幅について,健常人群・軽度AS群・中等度AS群・高度AS群の4群間比較にはKruskal-Wallis検定およびSteel-Dwass法,健常人・軽度AS群と中等度・高度AS群間の2群間比較にはMann-WhitneyのU検定を使用した。最大振幅とAS重症度の間に相関関係があるかの検討にはSpearmanの順位相関係数を使用した。健常人・軽度AS患者群を陰性,中等度・高度AS患者群を陽性とし,AMI-SSS01の最大振幅からROC解析を用いて,カットオフ値および感度,特異度を算出した。アンケート調査は,非常に悪い:1点,悪い:2点,普通:3点,良い:4点,非常に良い:5点とスコア化し調査項目ごとに平均値 ± SDで算出した。統計学的有意水準は0.05未満とした。
今回検討を行った36名の背景と経胸壁心臓超音波検査による計測値をTable 1に示す。AS群の内訳は男性10名,女性11名,平均年齢82.2 ± 6.6歳。経胸壁心臓超音波検査で診断された結果として,軽度AS群が3名,中等度AS群が11名,高度AS群が7名であった。軽度AS群,中等度AS群,高度AS群でそれぞれ左室拡張末期径は44.6 ± 4.6 mm,48.5 ± 6.5 mm,46.2 ± 4.2 mm,左室収縮末期径は27.1 ± 1.4 mm,31.7 ± 7.9 mm,30.0 ± 4.9 mm,左室駆出率は63.6 ± 4.1%,61.9 ± 9.2%,65.0 ± 11.9%,大動脈弁口面積係数は0.72 ± 0.10 cm2/m2,0.63 ± 0.14 cm2/m2,0.48 ± 0.07 cm2/m2であった。健常人群の内訳は男性9名,女性6名,平均年齢36.2 ± 7.9歳であった。
Overall | Normal Group | AS Group | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
Total | Mild | Moderate | Severe | |||
Gender (M/F) | 19/17 | 9/6 | 10/11 | 1/2 | 7/4 | 2/5 |
Age (yr) | 63.0 ± 24.1 | 36.2 ± 7.9 | 82.2 ± 6.6 | 81.0 ± 10.0 | 82.0 ± 4.7 | 83.0 ± 8.6 |
LVDd (mm) | 47.4 ± 5.1 | 47.6 ± 4.3 | 47.2 ± 5.6 | 44.6 ± 4.6 | 48.5 ± 6.5 | 46.2 ± 4.2 |
LVDs (mm) | 30.4 ± 5.2 | 30.4 ± 2.9 | 30.5 ± 6.4 | 27.1 ± 1.4 | 31.7 ± 7.9 | 30.0 ± 4.9 |
LVEF (%) | 64.3 ± 7.7 | 65.9 ± 3.7 | 63.1 ± 9.4 | 63.6 ± 4.1 | 61.9 ± 9.2 | 65.0 ± 11.9 |
AVAI (cm2/m2) | 1.00 ± 0.53 | 1.58 ± 0.24 | 0.59 ± 0.14 | 0.72 ± 0.10 | 0.63 ± 0.14 | 0.48 ± 0.07 |
n = 36
Data are presented as mean ± SD.
LVDd; left ventricular diastolic diameter, LVDs; left ventricular systolic diameter, LVEF; left ventricular ejection fraction, AVAI; aortic valve area index.
AS群21例にAMI-SSS01を用い測定部位と最大振幅を確認した(Table 2)。AMI-SSS01の最大振幅を得られたのは2RSBで5例,2LSBで4例,4LSBは最も多く16例で認めた。また,最大振幅が得られたのはM2_1(中高音)で1例であり,全例ともH_1(高音)で認めた。得られた最大振幅は最小で4,最大で33であった。
AS Group No. | AMI-SSS01 | Transthoracic echocardiogram | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2RSB | 2LSB | 4LSB | maximum amplitude |
SVI (mL/m2) |
Vmax (m/sec) | AS severity | ||||
M2_1 | H_1 | M2_1 | H_1 | M2_1 | H_1 | |||||
1 | 2 | 4 | 1 | 3 | 2 | 4 | 4 | 39.6 | 2.8 | mild |
2 | 2 | 4 | 2 | 4 | 2 | 5 | 5 | 37.8 | 2.6 | mild |
3 | 4 | 9 | 2 | 5 | 2 | 5 | 9 | 51.6 | 2.7 | mild |
4 | 5 | 9 | 2 | 5 | 5 | 11 | 11 | 51.0 | 3.4 | moderate |
5 | 2 | 4 | 3 | 6 | 4 | 9 | 9 | 64.2 | 3.9 | moderate |
6 | 2 | 4 | 3 | 3 | 3 | 7 | 7 | 42.3 | 3.7 | moderate |
7 | 5 | 7 | 13 | 21 | 6 | 12 | 21 | 53.8 | 3.6 | moderate |
8 | 1 | 4 | 6 | 14 | 2 | 6 | 14 | 42.9 | 3.0 | moderate |
9 | 2 | 5 | 2 | 6 | 4 | 9 | 9 | 56.1 | 3.3 | moderate |
10 | 3 | 5 | 2 | 6 | 9 | 9 | 9 | 46.9 | 3.5 | moderate |
11 | 4 | 8 | 6 | 14 | 9 | 23 | 23 | 59.3 | 2.7 | moderate |
12 | 3 | 4 | 3 | 5 | 4 | 9 | 9 | 52.3 | 3.5 | moderate |
13 | 1 | 4 | 9 | 10 | 6 | 9 | 10 | 68.4 | 3.5 | moderate |
14 | 5 | 13 | 2 | 6 | 4 | 9 | 13 | 36.3 | 3.2 | moderate |
15 | 4 | 6 | 3 | 7 | 4 | 11 | 11 | 42.3 | 4.3 | severe |
16 | 6 | 6 | 3 | 6 | 8 | 23 | 23 | 57.9 | 4.9 | severe |
17 | 3 | 5 | 2 | 4 | 2 | 6 | 6 | 45.7 | 3.9 | severe |
18 | 2 | 6 | 2 | 6 | 2 | 6 | 6 | 41.8 | 3.5 | severe |
19 | 1 | 4 | 2 | 5 | 2 | 6 | 6 | 33.0 | 3.3 | severe |
20 | 5 | 11 | 5 | 10 | 4 | 11 | 11 | 46.3 | 5.0 | severe |
21 | 3 | 8 | 3 | 8 | 14 | 33 | 33 | 64.0 | 4.2 | severe |
SVI; stroke volume index, Vmax; trans aortic valve flow peak velocity.
ASの重症度とAMI-SSS01における最大振幅に関連があるか検討した。AMI-SSS01の最大振幅とAS重症度の相関係数は0.762(p < 0.01)であり有意な相関を認めた(Figure 3)。
AMI-SSS01の最大振幅を健常人群,軽度AS群,中等度AS群,高度AS群の4群間で比較した(Figure 4)。健常人群で中央値4(interquartile; IQR: 2.5–4),軽度AS群で中央値5(IQR: 4.5–7),中等度AS群で中央値10(IQR: 9–13.5),高度AS群で中央値11(IQR: 6–17)であり,健常人群の最大振幅と中等度AS群の最大振幅,健常人群の最大振幅と高度AS群の最大振幅間には有意な差を認めた(p < 0.01)。一方,健常人群と軽度AS群,軽度AS群と中等度AS群,軽度AS群と高度AS群,中等度AS群と高度AS群間での最大振幅には有意な差は認めなかった(p = 0.32, p = 0.14, p = 0.30, p = 0.98)。
健常人・軽度AS群18例と中等度・高度AS群18例における最大振幅AMI-SSS01の最大振幅を比較した(Figure 5)。健常人・軽度AS群の最大振幅は中央値4(IQR: 3–4.8),中等度・高度AS群の最大振幅は中央値10.5(IQR: 9–13.8)であり,有意な差が認められた(p < 0.01)。
AMI-SSS01を用いた際の中等度AS以上を診断するためのカットオフ値を確認した。ROC曲線から得られた中等度AS以上を示唆するカットオフ値は6であった。カットオフ値での感度は1.00(95%信頼区間0.74–1.00),特異度は0.83(95%信頼区間0.59–0.96)であった(Figure 6)。
Normal and mild AS are Negative. Moderate AS and severe AS are Positive.
AMI-SSS01の使用感に関して使用者6名に対するアンケート調査結果をFigure 7に示す。評価項目の内,1.デバイスの使いやすさについて,2.デバイスの持ち運びやすさについて,3.操作方法の理解しやすさについてはそれぞれ4.2 ± 0.4点,4.0 ± 0.9点,4.0 ± 0.6点であり平均が4.0点以上であった。4.デバイスの機能や性能に関する満足度について,5.デバイスの保守やメンテナンスにかかる手間については3.2 ± 0.6点,3.8 ± 1.0点であった。
n = 6
Survey on user experience of AMI-SSS01. (Five-point rating)
5 points are “5; Excellent, 4; Good, 3; Fair, 2; Poor, 1; Very Poor”.
Q1 Ease of use of the device.
Q2 Ease of carrying the device.
Q3 Ease of understanding the operating instructions.
Q4 Satisfaction with the functionality and performance of the device.
Q5 Effort required for maintenance and upkeep of the device.
ASを疑う上で聴診は有用であるとされているが,聴診は聴覚に依存しており定量化できず,客観的データとして残せない問題点があるため,聴診に代わる心音解析関連の研究が進められている。そのような中,今回われわれは,AMI-SSS01の検査から得られた心音図の最大振幅とAS重症度の関連性,同時に装置使用感を調査した。
心音図検査の最大振幅を得られた部位については,今回の研究では2RSB,2LSB,4LSBの中で4LSBに最大振幅を持つ症例が多かった。ASにおける聴診部位と心雑音最強点における報告では,2RSBが最強点として多いという報告がある一方で,心尖部が最強点であったという報告もあり一定の結果が得られていないが,心雑音最強点は前胸部に広く存在するとされている13)~15)。今回の研究では測定をすべて仰臥位で行ったため,心音の最大振幅を得られた部位について,体位による影響は少なく安定的なデータを得られたのではないかと考えられる。
本検討においてAS重症度と最大振幅に相関関係を認め,健常人・軽度AS群と中等度・高度AS間群との最大振幅に有意差を認めた。これにより,AMI-SSS01は心音図の最大振幅を計測することで半定量的なAS重症度評価が可能であることが示唆された。一方,心音解析に関する既報において専門医の聴診精度には達していないという報告もあり,それらの点から心音解析は臨床応用に至っていない。Stangerら9)は,専門医による聴診のAS検出精度を感度0.6–0.8,特異度0.9以上と報告しているが,今回AMI-SSS01を用いたmoderate以上のAS検出精度は感度1.00,特異度0.83,であり感度・特異度ともに同等であった。これらのことより,AS診断においてAMI-SSS01の最大振幅計測は聴診に代わる手段として有用性が示された。
高度AS群で最大振幅がカットオフ値と同じ値であり,偽陰性とまではならなかったが,振幅が他の症例と比較して低値であった症例を3例(AS Group No. 17, 18, 19)認めた。経胸壁心臓超音波検査の所見は,いずれも大動脈弁通過血流速波形の最大血流速が4 m/秒を超えておらず,大動脈弁弁口面積係数から高度ASと判断した症例であった。特に1例(AS Group No. 19)は左室容量が小さく,1回拍出量係数が33 mL/m2であり,低流量低圧較差ASの判断基準3)である1回拍出量係数が35 mL/m2以下であった。AS症例に関して,AMI-SSS01での最大振幅計測は有用であると考えられるが,AS Group No. 19のような奇異性低流量低圧較差ASや,ASが進行して左室収縮機能障害をきたした場合に起こりうる古典的低流量低圧較差ASは,1回拍出量が低下して収縮期雑音が小さくなることがあり注意が必要である。そのため,症状や身体所見などから重症例として疑わしい場合は,経胸壁心臓超音波検査などの精査を行うべきであると考えられる2),13)。
AMI-SSS01は装置が小さく,場所を選ばずに検査可能な利点があることよりAMI-SSS01は遠隔地医療に対して有用であると考えられている16)。AMI-SSS01の使用感に関して,デバイスの使いやすさについては使用者6名全員が“良い”以上の回答で,また操作方法の理解のしやすさ,デバイスの持ち運びやすさについては平均4.0であり,操作方法は簡便かつ理解しやすく,さらにポータビリティに優れていることが示唆された。これらのことを踏まえ,将来的な可能性としてAMI-SSS01による弁膜症スクリーニングを遠隔地で行った上で,ASを疑われた患者に対して来院を勧めることができるのではないかと考える。また,聴診では聴覚に依存することや客観的データとして残せないことがあるが,AMI-SSS01では検査者の技術面によるバイアスがかかりにくく,客観的データとして残すことができるという利点があると考えられる。
当調査の研究限界の1点目として,今回は単施設研究であり十分な症例数が得られなかったことがあげられる。2点目として,今回の調査はAS症例に絞っているため,他の心疾患と複合した場合に,今回算出したカットオフ値が適用可能か検証の必要性がある。さらに症例数を増やし,僧帽弁逆流症や心室中隔欠損症など,その他の収縮期雑音との鑑別のために,単に振幅のみではなく波形の形状や,最大振幅の取得部位も併せて検討することが今後の課題であると考える。
本調査により,AMI-SSS01を使用してASの重症度を簡便に判定できる可能性が示唆された。今後,さらに症例数や検討項目を増やした研究を継続する必要がある。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。