医学検査
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技術論文
Paige Prostate®(前立腺病理診断支援artificial intelligence; AI)を用いた前立腺生検内潜在癌の検出―本邦初の試用経験による診断精度の評価―
松井 成明松野 麻由佳尾髙 佑樹﨑山 知美梶原 博中村 直哉入江 理恵長村 義之
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2025 年 74 巻 2 号 p. 331-339

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抄録

アメリカ食品医薬局(FDA)は前立腺生検に含まれる潜在癌を画像上で特定するartificial intelligence(AI)のPaige Prostate®(Paige.US)を承認した。われわれは本システムの試用機会を得たのでその検出精度を評価した。対象は患者10例,108生検を用いPaige Prostateの解析結果とヒトによるHE染色診断の結果を1)生検数(本数)からみた診断率,2)癌領域の検出数,3)Gleason patternからみたPaige Prostateとヒトの一致率,4)Paige Prostateの解析再現性を評価した。Paige Prostateの診断率は感度100%,特異度82.3%。癌領域の見落としはなかった。また,ヒトが検出し得なかった2つの癌領域を指摘する一方で良性腺管や正常間質を過剰(75領域)に検出していた。Gleason patternからみたPaige Prostateとヒトとの一致率は,一致が64.7%(44/68領域:Pattern 3,4),不一致が35.3%(24/68領域:Pattern 4糸球体様構造,Pattern 5印環様細胞亜型)であり,稀な組織亜型を誤認識する傾向がみられた。Paige Prostateは癌領域の見落としがないシステムであるが,非癌領域と稀な組織亜型に対する更なる深層学習がより診断精度の高い病理診断AIに繋がるものと考える。

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