ヒトT細胞性白血病ウイルスI型およびII型感染におけるスクリーニング検査は,HTLV-I抗体とHTLV-II抗体を同時に検出できる試薬が現在広く用いられている。今回,我々は,化学発光法を原理とするHTLV-I/II抗体試薬3試薬(エクルーシス試薬Anti-HTLV I/II,HTLV・アボット,ルミパルスHTLV-I/II)の比較検討を行った。感度比較では,HTLV-IでルミパルスHTLV-I/IIが他より2倍感度が高く,HTLV-IIでは,ルミパルスHTLV-I/IIとHTLV・アボットが同等で,エクルーシス試薬Anti-HTLV I/IIより2倍感度が高い結果であった。当院測定試薬であったセロディアHTLV-Iを含む各試薬間相関の判定一致率は,94.8~100%と良好であった。セロディアHTLV-Iの測定値と各試薬測定値を比較したところ,HTLV・アボットとの相関性が最も良好な結果であった。各試薬間における乖離検体はcut off値付近であり,要因としては各試薬組成の違いや原理の違いによる反応性の違いが考えられた。各試薬陽性検体における確認試薬イノリアHTLVの各種特異抗原との反応性では,エクルーシス試薬Anti-HTLV I/IIとの一致率が最も良好であった。化学発光法を原理とするHTLV-I/II抗体試薬3試薬の比較検討の結果,スクリーニング試薬としてはいずれも感度・特異性良好で使用可能であるが,使用に当たってはcut off値付近の陽性例に注意し,測定値の特徴を理解した上で使用する必要がある。
Currently, reagents that can simultaneously detect HTLV-I and HTLV-II antibodies are widely used in screening tests for infection with human T-cell leukemia virus types I and II. In the present study, we compared HTLV-I/II antibody reagents based on chemiluminescence (Elecsys Reagent Anti-HTLV I/II, HTLV-Abbott and Lumipulse HTLV I/II). In the sensitivity comparison, in HTLV-I, Lumipulse HTLV-I/II was twice as sensitive as the others. In HTLV-II, Lumipulse HTLV-I/II was equivalent to HTLV/Abbott, and was twice as sensitive as Elecsys HTLV-I/II. The agreement rate for the correlation between each reagent, including SERODIA HTLV-I, the reagent used at our hospital, was 94.8% to 100%. Comparing the measured values of SERODIA HTLV-I and each reagent, the correlation was best in HTLV-Abbott. The measured value of the discrepancy in the sample that occurred between each reagent was near the cut off value, and the cause was thought to be a difference in reagent reactivity due to differences in each reagent composition and principle. Regarding the reactivity in each reagents positive specimen to various specific antigens of the confirmation reagent INNOLIA HTLV, the concordance rate was best with the Elecsys HTLV-I/II. Therefore, the present comparative study of the three HTLV-I/II antibody reagents based on the chemiluminescence method, all of them can be used as screening reagents with good sensitivity and specificity, but it is necessary to pay attention to positive cases near the cut off value and understand the characteristics of the measured values before using them.
ヒトT細胞性白血病ウイルスI型およびII型(human T-cell leukemia virus type I and type II)は成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia; ATL),HTLV-I関連脊髄症(HTLV-I associated myelopathy; HAM)およびHTLV-Iぶどう膜炎(HTLV-I uveitis; HU)などの疾患を引き起こすウイルスである。わが国においては約100万人程度のHTLV-I感染者が存在し,年間4,000人が新規感染していることが判明している1)。地域性では西日本に多いが,人口流動とともに大都市圏にもキャリアの拡散がみられている。2010年11月には母子感染防止対策として妊婦健診にHTLV-I抗体検査が追加され2),母子感染による感染の低減を目指してきた。妊婦健診を含むHTLV-I抗体スクリーニング検査にはHTLV-I抗体とHTLV-II抗体を同時に検出できる試薬が現在広く用いられ,HTLV-I感染の診断指針3)においてもスクリーニング試薬原理として化学発光酵素免疫測定(chemiluminescent enzyme immunoassay; CLEIA)法に加えて化学発光免疫測定(chemiluminescent immunoassay; CLIA)法および電気化学発光免疫測定(electro chemiluminescence immunoassay: ECLIA)法とイムノクロマト法(immunochromatography)が追加されている。今回我々は,化学発光法を原理とするHTLV-I/II抗体試薬の比較検討を行ったので報告する。
対象は,当院検査部に2009年1月~2019年12月にHTLV-I抗体測定依頼のあった検体の中から血清検体50検体(ゼラチン凝集反応:PA法陰性22検体・陽性28検体),髄液検体8検体(PA法陰性1検体・陽性7検体)を用いた。検体は−45℃で保管し,凍結融解は3回以内であり,溶解後にすべての測定を同日に実施した。髄液検体についてはHAMの診断4)に必要であり,各試薬添付文書には測定対象として記載されていないが,当院では従来から測定を実施してきているため測定対象検体として用いた。
2. 測定方法(試薬と機器)検討試薬/機器(メーカー)/原理は,①エクルーシス試薬Anti-HTLV I/II/cobas e602(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社,以下cobas)/ECLIA,②HTLV・アボット/Architect i1000(アボット合同会社,以下archi)/CLIA,③ルミパルスHTLV-I/II/LUMIPULSE G1200(富士レビオ株式会社,以下lumi)/CLEIAの3試薬を使用した。対照試薬として,測定当時当院測定試薬であったPA法を原理とするセロディア・HTLV-I(富士レビオ株式会社,以下PA)を用いた。
確認試薬として,ウェスタンブロット法(western blot; WB)を原理とするプロブロットHTLV-I(富士レビオ株式会社,以下WB)とラインブロット法(line blot immunoassay; LIA)を原理とするイノリアHTLV(富士レビオ株式会社,以下LIA)を使用した。各試薬の組成についてTable 1に示す。すべての試薬は各添付文書に従い測定を実施した。
検討試薬①cobas | 検討試薬②archi | 検討試薬③lumi | 対照試薬PA | |
---|---|---|---|---|
試薬名 | エクルーシス試薬 Anti-HTLV I/II |
HTLV アボット |
ルミパルス HTLV-I/II |
セロディア HTLV-I (富士レビオ 株式会社) |
機器名 | cobas e602 (ロシュ・ダイアグ ノスティックス株式会社) |
Architect i1000 (アボットジャパン合同会社) |
LUMIPULSE G1200 (富士レビオ株式会社) |
なし |
原理 | ECLIA | CLIA | CLEIA | PA |
試薬組成 ①固相抗原 |
遺伝子組換えHTLV抗原 gp21・p24 |
HTLV-I/II合成ペプチドgp46 HTLV-IIリコンビナント抗原gp21 |
HTLV-Iリコンビナント抗原(gp21) HTLV-I/II合成ペプチド(gp46) HTLV-I/II合成ペプチド(p19) |
不活化処理HTLV-I抗原 |
試薬組成 ②標識抗原 |
標識遺伝子組換えHTLV抗原gp21・p24 | HTLV-I/II合成ペプチドgp46 HTLV-Iリコンビナント抗原gp21 |
HTLV-Iリコンビナント抗原(gp21) HTLV-I合成ペプチド(gp46) HTLV-II合成ペプチド(gp46) HTLV-I合成ペプチド(p19) HTLV-II合成ペプチド(p19) |
なし |
単位 | C.O.I. | S/CO | C.O.I. | 倍 |
Cut off値 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 16 |
確認試薬①WB | 確認試薬②LIA | ||
---|---|---|---|
試薬名 | プロブロットHTLV-I(富士レビオ株式会社) | イノリアHTLV(富士レビオ株式会社) | |
原理 | WB | LIA | |
試薬組成 | 不活化処理HTLV-I抗原 | スクリーニング | 鑑別 |
gag p19(HTLV-I/II) | gag p19(HTLV-I) | ||
gag p24(HTLV-I/II) | env gp46(HTLV-I) | ||
env gp46(HTLV-I/II) | env gp46(HTLV-II) | ||
env gp21(HTLV-I/II) |
試薬添付文書より
検討試薬3試薬における感度比較をAnti-HTLV I/II Mixed Titer Performance Panel(BBI社)を用い,HTLV-I陽性1試料およびHTLV-II陽性3試料について,陰性血清を用いた希釈を行い比較した。
2) 検討試薬とPAの相関性検討試薬3試薬とPAとの判定一致率,陰性一致率,陽性一致率を比較した。また,測定値の分布についてSpearmanの順位相関係数を求めた。
3) 検討試薬3試薬間の相関性検討試薬間における判定一致率,陰性一致率,陽性一致率,および測定値についても比較した。
4) 乖離検体の解析2)および3)における乖離例3例についてWBおよびLIAで確認検査を実施した。
5) LIAにおける特異抗原との反応性各測定試薬の陽性例におけるLIAのHTLVの主要タンパクに由来する抗原に対する陽性率を算出し,その特異性を比較した。
HTLV-Iではlumiが他より2倍感度が良く,HTLV-IIでは,lumiとarchiが同等でcobasより2倍感度が高い結果であった(Table 2)。
Dilution ratio | cobas | archi | lumi |
---|---|---|---|
×200 | 6.07 | 7.21 | 11.1 |
×400 | 2.99 | 3.64 | 5.9 |
×800 | 1.52 | 1.94 | 3 |
×1,600 | 0.793 | 0.92 | 1.5 |
×3,200 | 0.432 | 0.54 | 0.7 |
Dilution ratio | cobas | archi | lumi |
---|---|---|---|
×50 | 3.75 | 5.13 | 4.7 |
×100 | 1.9 | 1.91 | 2.4 |
×200 | 0.988 | 1.26 | 1.3 |
×400 | 0.526 | 0.81 | 0.6 |
Dilution ratio | cobas | archi | lumi |
---|---|---|---|
×100 | 1.4 | 2.42 | 3.1 |
×200 | 0.756 | 1.26 | 1.7 |
×400 | 0.419 | 0.72 | 0.9 |
×800 | nt | 0.39 | 0.5 |
Dilution ratio | cobas | archi | lumi |
---|---|---|---|
×100 | nt | 23.49 | 24.4 |
×200 | nt | 13.58 | 13.0 |
×400 | nt | 7.28 | 7.0 |
×800 | 2.57 | 3.73 | 3.4 |
×1,600 | 1.35 | 2.04 | 1.9 |
×3,200 | 0.706 | 0.9 | 0.96 |
This is the result obtained by diluting the panel (Anti-HTLV I/II Mixed Titer Performance Panel (BBI)) serum with negative serum. gray: positive, nt: not tested.
各検討試薬とPAとの判定一致率は,それぞれcobasとは96.6%,archiとは98.3%,lumiとは96.6%であった。陽性一致率は94.2~97.1%,陰性一致率は95.7~100%であった(Table 3)。
PA | ||||
---|---|---|---|---|
positive | negative | total | ||
cobas | positive | 33 | 0 | 33 |
negative | 2 | 23 | 25 | |
total | 35 | 23 | 58 |
PA | ||||
---|---|---|---|---|
positive | negative | total | ||
archi | positive | 34 | 0 | 34 |
negative | 1 | 23 | 24 | |
total | 35 | 23 | 58 |
PA | ||||
---|---|---|---|---|
positive | negative | total | ||
lumi | positive | 34 | 1 | 35 |
negative | 1 | 22 | 23 | |
total | 35 | 23 | 58 |
PA法との 判定一致率 |
PA法との 陽性一致率 |
PA法との 陰性一致率 |
|
---|---|---|---|
cobas | 96.6% | 94.2% | 100% |
archi | 98.3% | 97.1% | 100% |
lumi | 96.6% | 97.1% | 95.7% |
PAと各検討試薬との測定値の比較では(Figure 1),それぞれの相関係数(Spearman)はPA vs cobasでr = 0.835,PA vs archiでr = 0.895,PA vs lumiでr = 0.860であり良好な相関性であった。グラフをみると,cobasとの比較ではPA 6,400倍以上で測定値の低下傾向がみられ,今回の陽性患者群でPA最高値であった51,200倍では49 C.O.I.まで低下した。lumiとの比較でPA 128倍以上では50 C.O.I.以上となった。archiとの比較ではPAとの相関性が最もよくPA値の上昇に伴いarchiの値も上昇する傾向にあった。
a) PA vs cobas, b) PA vs lumi, c) PA va aroh
化学発光法を原理とする検討試薬間における判定一致率は,cobas vs lumi 96.6%,cobas vs archi 100%,lumi vs archi 94.8%であった(Table 4)。また,検討試薬間の測定値を比較したところ(Figure 2),a)lumi vs cobasとb)lumi vs archiにおいては陽性検体中30例でlumiの値は50 C.O.I.以上であった(今回の検討では50 C.O.I.以上の検体については,添付文書に希釈指示がないため希釈測定は実施していない)。c)archi vs cobasでは測定値の比較が可能であったため解析したところ,相関係数(Spearman)r = 0.847,回帰式(Passing-Bablock)y = 0.472x + 0.049であった。
cobas | ||||
---|---|---|---|---|
positive | negative | total | ||
lumi | positive | 33 | 2 | 35 |
negative | 0 | 23 | 23 | |
total | 33 | 35 | 58 |
cobas | ||||
---|---|---|---|---|
positive | negative | total | ||
archi | positive | 34 | 0 | 34 |
negative | 0 | 24 | 24 | |
total | 34 | 24 | 58 |
lumi | ||||
---|---|---|---|---|
positive | negative | total | ||
archi | positive | 33 | 1 | 34 |
negative | 2 | 22 | 24 | |
total | 35 | 23 | 58 |
判定 一致率 | 陰性 一致率 | 陽性 一致率 | |
---|---|---|---|
cobas vs lumi | 96.6% | 92.0% | 94.2% |
cobas vs archi | 100% | 100% | 100% |
lumi vs archi | 94.8% | 91.7% | 94.2% |
a) lumi vs cobas, b) lumi vs cobas, c) archi vs cobas
Table 3およびTable 4で乖離した3例についてFigure 3に示す。乖離検体No. 1はlumiのみ陽性(+1.0 C.O.I.)でPA・WB・LIAは陰性であった。No. 2はlumi陽性(+1.5 C.O.I.),PA陽性(64倍),WB・LIAは陰性であった。No. 3はarchi陽性(2.47 S/CO),PA陽性(128倍),WB・LIAは陰性であったが,LIAについてgp21に±未満ではあるがラインが観察された。
各検討試薬で陽性であった検体におけるLIAの陽性率は91.4~97.0%でありcobasが最も高かった。LIAの判定で重要なenv gp21の陽性率は94.3~100%であった(Table 5)。
測定方法 | n | LIA(%) | gag p19 I/II(%) | gag p24 I/II(%) | env gp46 I/II(%) | env gp21 I/II(%) | gag p19-I(%) | env gp46-I(%) | env gp46-II(%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
PA | 35 | 91.4 | 91.4 | 82.9 | 88.6 | 97.1 | 82.9 | 85.7 | 8.6 |
cobas | 33 | 97.0 | 97.0 | 87.9 | 93.9 | 100.0 | 87.9 | 90.9 | 9.1 |
lumi | 35 | 91.4 | 91.4 | 82.9 | 88.6 | 94.3 | 82.9 | 85.7 | 8.6 |
archi | 34 | 94.1 | 94.1 | 85.3 | 91.2 | 100.0 | 85.3 | 88.2 | 8.8 |
化学発光法(ECLIA, CLIA, CLEIA)を原理とするHTLV-I/II抗体試薬3試薬の比較検討を行った。パネル血清を用いた感度比較ではHTLV-I抗体陽性パネルでlumiが2倍,HTLV-II抗体陽性パネルでarchiとlumiが同等でcobasより2倍感度が高く,検討3試薬ともに十分な感度であった。感度については,園山らの報告5)ではECLIAがCLEIAに比して4~16倍感度が高いが,この報告におけるCLEIA試薬はルミパルスHTLV-Iのみの検出試薬であり,ルミパルスHTLV-I/II試薬へ改良されたことで今回の我々の検討ではlumiの感度が高かったと推察される。同様に植栁らの報告6)によるとlumiと同試薬メーカーのルミパルスプレストHTLVI/IIがarchiに比してHTLV-Iで最大4倍,HTLV-IIで最大2倍感度が高いとされており,同一試薬メーカーの試薬であっても,測定機器および試薬の違いによっても感度の傾向には違いが認められた。今回の我々の結果からもいずれの試薬も感度は良好であるが,測定機器および試薬の変更時には注意が必要である。
相関においては,先行するPAと検討試薬との判定一致率は96.6~98.3%と良好であった。PAと各検討試薬の測定値の相関をみると,cobasとの比較では判定における陰性化はなかったが,PA 6,400倍以上でPA値が高くなるほどcobas値の低下傾向がみられた。lumiやarchiでは認められなかったことからcobasのプロゾーン現象の可能性が示唆された。cobasのプロゾーンについては,園山ら7)が高値検体を希釈した際に原倍での低下がみられたと報告している。陰性化していないために定性試薬として判定への影響はないと考えられるが注意が必要である。lumiの測定値はPA 128倍以上では50 C.O.I.以上となるため,値の変動を評価できなかった。archiとの比較ではPAとの相関性が最もよく,PA値の上昇に伴いarchiの値も上昇する傾向にあり,PA同様に抗体価の変動を評価可能であった。HTLV抗体価は定性判定においては問題がないものの,その変動については井上ら8)が無症候性HTLV-Iキャリア患者においてプロウイルス量とPAの関連性においてプロウイルス量が高いとPAの抗体価も高くなることを報告している。PAと同様に抗体価の変動を確認できる方が臨床上は有用であると考えられた。
検討を行った3試薬間の相関性は良好であり,判定一致率については園山らの報告5)とほぼ同等であった。3試薬間で判定が乖離した3検体における陽性はすべてcut off値付近の陽性であり,陽性となった検査試薬における偽陽性または弱陽性である。乖離検体No. 1は血清HTLV-I陽性でHAM疑い患者の髄液検体であり,WBおよびLIAが陰性ではあるがlumi陽性でarchiでも0.8 S/COとcut off値付近であることから,この2試薬に反応する偽陽性または低値陽性検体である可能性が示唆された。乖離検体No. 2はWBおよびLIAが陰性であることからそれぞれの試薬における陽性は偽陽性の可能性が示唆された。No. 2のWBについては写真からもバックグラウンドが薄青くなっており,ブロッキング剤などに対する非特異反応が起こっている可能性が示唆される。No. 3はLIAで陰性ではあるがgp21に ±より弱いバンドが認められた。いずれの試薬にもgp21が用いられているが,Table 5でもgp21に対する陽性率には差があり,その反応性の違いからarchiとPAで陽性,lumiで0.8 C.O.I.とcut off値付近の陰性になった可能性が考えられた。cobasの反応性はTable 2における感度差が影響していることが考えられた。いずれにしても乖離検体3例については,偽陽性であるか弱陽性であるかはプロウイルスDNAによって証明されるが,プロウイルスDNA検査は実施されていなかったためその解明には至らなかった。乖離検体は,化学発光法3試薬における試薬組成の違いや原理の違いによってcut off値付近で陽陰性の判定が乖離したと考えられた。
検討を行った3試薬とLIAの各特異バンドの陽性率の比較ではcobasでLIAとの一致率が高かった。いずれの測定法もLIAの判定に用いられるenv gp21との反応性は良好で,HTLV抗体測定において良好な反応性であることが示唆された。
HTLVの感染経路は母子感染が注目されてきたが,水平感染による都市部への感染拡大の問題に伴う,性感染が問題となっている1)。そのため,HTLV感染の有無を把握するためのスクリーニング検査の重要性は増している。今回の比較検討において,化学発光法を原理とする3試薬はHTLV-I抗体およびHTLV-II抗体について良好な反応性であり,PAとの判定一致率,化学発光法間の判定一致率,および確認検査であるLIAとの一致率も良好であった。試薬間における乖離検体の陽性はいずれもcut off値付近であり,その要因としては各試薬組成の違いや原理の違いによる反応性の違いが考えられた。スクリーニング試薬としてはいずれも使用可能であるが,cut off値付近の陽性例に注意し,測定値の特徴を理解した上で使用する必要がある。
本研究は愛媛大学臨床研究審査委員会によって承認を受けている(愛媛大学臨床研究審査委員会承認番号2202004号)。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。