医学検査
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資料
救急外来における心電図画像リアルタイム送信がもたらす効果
岩井 由香利, 北川 文彦, 有嶋 拓郎, 河邊 拓, 尾崎 行男, 伊藤 弘康, 垣田 彩子
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2025 年 74 巻 3 号 p. 553-560

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Abstract

救急外来(emergency room; ER)における業務効率化は,患者利益だけでなく医師や看護師の業務負担軽減に繋がる。当院ERの心電図検査は,検査依頼入力から電子カルテによる画像参照までの手順が煩雑であるのに加え,リアルタイム画像送信に対応していなかった。今回,ERにおいてWireless Fidelity(以下,Wi-Fi)を用い,安全かつリアルタイムな画像送信の運用を構築したのでその効果を報告する。現状分析では①検査依頼入力から画像送信まで作業工程が7つあり煩雑である。②患者識別番号(以下,ID)入力間違いによるインシデント発生の可能性や,心電図画像確認作業に時間を要することが課題であった。Wi-Fi運用により①技師による心電図のシステム送信,患者属性の確認,および心電図オーダーへの紐づけ作業が不要となり,作業工程を4つに削減した。②バーコードリーダーによるID読み取りで,患者情報の誤入力防止を可能とした。③リアルタイム画像送信により,迅速な診療に対応が可能となった。④画像送信作業に要する処理時間削減効果は最大70%以上であった。Wi-Fiを用いた運用は,患者情報の誤入力防止や心電図画像のリアルタイム送信を可能とし,ERにおける業務効率向上だけでなく,安全かつ迅速な診療の提供に寄与した。また,記録後の心電図処理や送信作業などに要す時間が大幅に削減され業務負担軽減に繋がった。

Translated Abstract

Improving work efficiency in the emergency room (ER) not only benefits patients, but also reduces the work burden on doctors and nurses. Electrocardiogram testing procedures in ERs are complicated and cannot support real-time image transmission. This time, we have constructed a system for safe and real-time image transmission using Wi-Fi in the ER, and will report on its effectiveness. According to the current analysis, (1) there are seven work processes from inputting the inspection request to image transmission, which is complicated. (2) ID entries may be made incorrectly or records may be recorded without ID entry, leading to incidents. Additionally, it has become clear that it takes time to confirm the recorded electrocardiograms. By using Wi-Fi, (1) seven work processes were reduced to four. (2) By using a barcode reader, patient attributes are acquired, which prevents misidentification of patients. Additionally, if attributes were not obtained, it would be possible to detect omissions in inspection request input, which helped prevent accounting omissions. (3) Since images can be transmitted in real time, it is now possible to provide prompt medical treatment. (4) The processing time required for image transmission work was reduced by up to 70%. Operation using Wi-Fi not only improved operational efficiency in the ER, but also enabled safe and speedy medical treatment by reliably acquiring patient information and transmitting electrocardiogram images in real time. Additionally, the time required for post-recording electrocardiogram processing and transmission work has been significantly reduced, leading to improved work efficiency.

I  はじめに

救急外来(emergency room; ER)では患者の初期トリアージにおいて12誘導心電図検査(以下,心電図検査)が有用である。胸部症状を有する患者,特にST上昇型心筋梗塞では,発症後早期の再灌流療法が予後を改善する確立した治療法であり,速やかな心電図検査の実施と判断が求められる1)。また,不整脈診療においても心電図検査のエビデンスレベルは高い2)。ERでは,しばしば専門医による心電図判読が必要になることもあるため,循環器内科医師へ心電図判読を依頼する際は,電子カルテへリアルタイムに心電図画像が送信され,参照できる仕組みが有用である。藤田医科大学岡崎医療センターでは,2020年4月の開院時より,日本光電社製PrimeVita plus®(以下,生理検査システム)を使用し,生理検査情報の一元管理を行っている。しかし,各診療科で行う心電図データの管理には多くの労力を要する。特に,当院ERにおける心電図検査の実施は,検査依頼入力から電子カルテ上での画像参照までの工程が煩雑で,リアルタイムな画像送信に対応できていないという問題点が存在した。さらには,検査依頼入力漏れが発生することもあり,その際は事後入力で対応するため医事課担当者の負担も発生している。今回我々は,ERにおいて,Wireless Fidelity(以下,Wi-Fi)を用いた安全かつリアルタイムな画像送信の仕組みを導入し,検査依頼入力から電子カルテによる結果参照までの運用構築により作業効率の改善効果を評価したので,その有用性を報告する。

II  方法

当院ERでは2023年3月28日にWi-Fiを用いた運用を開始した。Wi-Fiを用いた運用による作業効率の改善効果は2023年4月1日から2024年3月31日までに,当院ERにおいて心電図を記録した6,462例について評価した。この対象例において,Wi-Fi運用を導入し実際に自動送信できた例およびWi-Fi運用となっても手作業で処理をした例と,Wi-Fi運用を導入せず6,462件の全例を手作業で処理したと仮定した場合の推計値を比較した。

1. 現運用における問題点の洗い出し

ERでの心電図検査手順と,記録後の心電図画像を臨床検査技師が電子カルテへ送信する各工程における問題点の洗い出しを行った。

2. Wi-Fiを介した生理検査システムとの接続

心電計(日本光電工業株式会社製,ECG-2450)にワイヤレスブリッジ(サイレックス・テクノロジー株式会社製,Wireless Bridge BR-300AN)を接続し,Wi-Fi環境下において生理検査システムと接続できるように設定した。また,当院の情報システム部にて発行した証明書をワイヤレスブリッジにインストールしセキュリティーを確保した。Wi-Fi環境下では,心電計への患者識別番号(以下,ID)入力により,患者属性の取得が可能となり,また,心電図記録完了時に画像送信が可能となる(Figure 1)。

Figure 1  Connection with physiological testing system via wireless bridge

By inputting the ID into the electrocardiograph, it is possible to obtain patient attributes, and it is also possible to send images when electrocardiogram recording is complete.

3. Wi-Fiを用いた運用効果の評価

2023年4月1日から2024年3月31日までに,当院ERにおいて心電図を記録した6,462例において,Wi-Fiを用いたリアルタイム心電図画像送信の運用開始前・後における作業工程,および実際にWi-Fi運用を導入した場合とWi-Fi運用を導入せず全例を手作業で処理したと仮定した場合の手作業による心電図画像処理数と処理時間を比較した。手作業による心電図画像処理時間は10件の心電図画像処理をそれぞれ2名の臨床検査技師が行い,処理に要した平均2分/件を用いた。また,Wi-Fi運用導入後のダブルチェックに要した時間も同様に評価し,その平均30秒(0.5分)/件を用いた(Table 1)。なお,心電図画像の送信処理時間は以下の通り推算した。Wi-Fi運用導入以前は心電図記録全てが手作業であるため,1ヶ月に要する処理時間は【依頼総件数(手作業件数)× 処理時間(2分/件)÷ 60分】とした。Wi-Fi運用導入後は自動送信の場合と手作業が混在するため,1ヶ月に要する処理時間は【{自動送信件数 × 処理時間(0.5分/件)+手作業件数 × 処理時間(2分/件)} ÷ 60分】とした。

Table 1 Time required for two clinical laboratory technicians to process electrocardiogram images and their average time

Processing time before introducing Wi-Fi operation Processing time after introducing Wi-Fi operation
Time required to
process 10 cases
Processing time
converted per case
Time required to
process 10 cases
Processing time
converted per case
Clinical laboratory technician ① 17 min 30 sec 1 min 45 sec 4 min 15 sec 25.5 sec
Clinical laboratory technician ② 22 min 30 sec 2 min 15 sec 4 min 40 sec 28.0 sec
Average processing time for 2
clinical laboratory technicians
Approximately 2 minutes/case Approximately 30 seconds (0.5 minutes)/case

III  結果

1. 現状分析

1) ERにおける心電図検査の運用手順と問題点

ERにおける心電図検査は煩雑な運用手順であるため,心電図検査を実施する医師や看護師だけでなく,心電図画像を処理する臨床検査技師に負担がかかっている。さらに,検査依頼入力漏れ発生時は事後処理を行う医事課担当者にも負担がかかっている。心電図検査実施手順と問題点は以下の通りである。

①医師が「心電図検査(診療科施行)」の検査依頼入力をする。生理検査システム上の検査ステータスは「未受付」である。検査予約票は印刷されない設定である。(また,この「心電図検査(診療科施行)」は病棟で心電図検査を実施する際にも使用する検査項目である。)一方,問題点としては,検査依頼が未入力の状態で検査を実施していることがあり,生理検査室では入力漏れ検査の原本を確認しER医師へ事後入力を実施するよう依頼するため対応が煩雑である。

②医師もしくは看護師が心電計に手入力で患者ID・氏名・性別・年齢を入力し心電図検査を実施する。記録者は印刷した心電図記録原本にサインをする。心電計への患者情報の入力は手入力のため入力間違いが起こり,重大インシデントに繋がる可能性がある。

③生理検査室所属の臨床検査技師がERへ出向(始業時・終業前の1日2回)し,心電図原本を回収するが,心電図の回収は1日に2回のため,電子カルテで参照できるまでに時間がかかる。

④臨床検査技師がER設置の心電計より有線にて心電図画像を生理検査システムへ送信する。

⑤生理検査室において臨床検査技師が回収した心電図原本の「患者ID・氏名・記録者サイン・検査依頼入力」の確認をする。その際に,検査依頼入力がない場合や,患者ID・氏名などの記載に不備がある場合,心電図記録者のサイン漏れなどの不備があった場合は心電図原本をERへ返却し不備を補完する。その作業により,ERで心電図検査を実施してから電子カルテで画像を参照できるまでにタイムラグが生じ,特に夜間および休日は多くの時間を費やす。そのため,専門外来への再受診時にERで記録した心電図画像が閲覧できないことに対する問い合わせが毎月4~5件発生している。また,検査依頼の未入力については,後日会計が発生することから,患者への説明を行う医事課の負担も大きい。

⑥心電図記録に不備がなければ,生理検査システムで検査依頼入力と心電図画像を手作業にて紐づけを行う。検査ステータスは「終了」となり電子カルテで参照可能となる。

⑦生理検査システムにおいて,ダブルチェック(画像データおよび患者ID・氏名・記録日時などの確認)を行う。

上記の様に7つの作業工程で実施しているが,⑤において不備があった場合は,ERへ心電図原本を返却し,修正・検査依頼入力を指示した後,再度回収し,改めて⑤から処理を行っている。また,手作業工程④~⑦に要する時間は1件当たり平均2分を要する。さらに,画像データがなんらかの原因で保存できていない場合は,心電図原本をスキャナーで取り込み,画像を検査依頼入力に紐づける作業を行うため,工程はさらに煩雑となり,追加の時間を要する。

2) 生理検査室における心電図検査の運用手順

生理検査室で心電図検査を実施する場合は,依頼医師は「心電図検査」という名称の検査項目を使用し検査依頼入力をする。患者の検査進捗状況の把握と患者間違いを防ぐため,以下の手順にて心電図検査を実施している。

①医師が「心電図検査」の検査依頼入力を行い,検査予約票が印刷される。この段階では,生理検査システム上の検査ステータスは「未受付」である。

②患者が生理検査室に来室し受付をする。検査ステータスは「受付済み」となる。

③検査のため患者を呼び出しする際には,生理検査システムにて当該患者の検査ステータスを「準備中」にする。患者を各検査室に案内後,心電計付属のバーコードリーダーを使用して患者IDを読み込む。検査ステータスは「検査中」となる。この時,生理検査システム上で検査ステータスが「準備中」となっているもののみ患者情報が取得できる仕組みを設けている。これは,検査対象ではない患者を誤って検査室に案内し患者IDのバーコード読み取りを行っても,患者属性が心電計に取り込めないため,患者間違い防止対策の1つとなる。

④心電図記録後,心電計の「検査確定」ボタンを押すと,心電図画像が生理検査システム経由で電子カルテへ送信され検査ステータスが「終了」となり電子カルテで画像参照可能となる。生理検査室ではペーパーレス運用のため心電図記録の印刷はしない。なお,医事システムへの会計情報も検査ステータスが「終了」となったタイミングで自動送信される。

⑤心電計で「完了」ボタンを押し検査を終了する。心電計に表示された患者情報は消去される。

2. Wi-Fiを介した生理検査システムとの接続

運用開始までに,テスト環境下にて本番系ワイヤレスブリッジを接続した心電計を準備し,Wi-Fi環境下にて各工程の確認を行い問題点とその改善を行った。

1) Wi-Fi運用による問題点

検査項目「心電図検査(診療科施行)」は,検査依頼入力をしても検査予約票を印刷しない設定であり「問題点1:患者情報を取得するためのバーコードがない」ということ,またERには生理検査システムのクライアント端末を設置していないため「問題点2:患者情報を心電計に取り込むことが可能な検査ステータス『準備中』にステータスを変更できない」ということが課題であった。

2) システム化へ向けた運用改善

「問題点1」に対しては,ER診療担当の看護師と話し合いを行う中で,患者がER受診受付時に発行する「受付票」を使用できることがわかった。「受付票」にはID情報をもつバーコードが印字されており,それを代用することで対応可能であった。「問題点2」に対しては,同一検査項目名称での検査ステータスの振り分けは困難であることから,電子カルテ側へ新たに検査項目「ER施行心電図検査」を設定し対応した。この「ER施行心電図検査」は医師が検査依頼入力をした時点で生理検査システム上の検査ステータスが「受付」となる設定とし,ER設置の心電計では検査ステータスが「受付」になっているオーダーのみ患者情報が取得できる設定とした。このようにER専用の検査項目を設定することにより問題点は改善され,病棟で実施する心電図検査の依頼入力である「心電図検査(診療科施行)」とも判別が可能となった。また,新設した検査項目のため,医事課担当者の協力の下に医事システムとの連携確認も同時に行った。

3. Wi-Fiを用いた運用効果の評価

患者情報の取得やリアルタイム画像送信ができるWi-Fi運用の仕組みを構築したことにより以下のような効果を得ることができた。

1) 運用手順の簡略化

従来は7つの作業工程があった煩雑な心電図検査手順を,Wi-Fi運用の導入により4つの作業工程に簡略化した。

①医師が「ER施行心電図検査」を依頼入力する。

②医師や看護師がバーコードリーダーを使用して心電計に患者情報を取得後,心電図検査を実施し,画像を生理検査システムに自動送信する。記録者は印刷した心電図記録原本にサインをする。

③生理検査室所属の臨床検査技師がERへ出向し,心電図原本を回収する。

④生理検査システムを用いて,回収した心電図記録原本の患者ID・氏名・記録者サインのダブルチェックを行う。

医師や看護師がバーコードリーダーを使用して心電計に患者情報を取得する運用の効果は大きく,入力間違いの回避はもちろん,IDなどの属性を手入力で行っていた時は約30秒要していた入力作業時間が,バーコードリーダーによる患者情報取得では約2秒で完了する。煩雑な入力作業が無くなったことに対しては,ERの医師および看護師から高い評価を受けている。

2) 手作業による心電図画像処理数の改善効果と手作業となった理由

2023年4月1日から2024年3月31日までに,ERで心電図検査を実施した症例において,自動送信件数と手作業による処理件数の割合をFigure 2に示す。評価期間中の手作業による処理件数は,総依頼件数6,462件の内514件(9.8%)であった。手作業の割合が1番高かった月は2023年7月で依頼件数547件に対して57件(10.4%)であった。手作業の割合が1番少なかったのは2023年11月で依頼総件数552件に対し,30件(5.4%)まで減少した。自動送信が出来ていない理由について2024年3月実施の手作業で処理を行った37件を用いて原因調査を行った(Figure 3)。37件中13件(35%)は検査依頼入力のない状態で心電図検査を実施していた。また心電図検査実施後に検査依頼入力をした件数は7件(19%)であった。また,その他理由が17件(46%)であった。この「その他」17件の内訳はバーコードリーダーを使用せずに患者IDを手入力したため正しく患者情報を取得できなかったのが10件(59%),1つの依頼入力に対して2回記録したのが5件(29%),その他理由が2件(12%)であった。また,手作業による処理割合はおよそ3ヶ月周期の変動であり,この周期はER医師のローテーションと一致していた。

Figure 2  Ratio of number of automatic transmissions and number of manual transmissions of ER electrocardiogram tests
Figure 3  Analysis of the cause of manual work

3) 手作業による心電図画像処理時間の改善効果

2023年4月1日から2024年3月31日までに,ERで心電図検査を実施した症例において,処理時間の改善効果を評価した(Figure 4)。2023年4月は従来であれば心電図画像の処理を行うのに14.6時間/月であったものが,Wi-Fi運用の導入により処理時間は4.7時間/月と激減した。処理時間の削減率は67.6%であった。処理時間の削減率が最大であった月は2023年11月と2024年2月で,ともに70.9%であった。一方,処理時間の削減率が最小であったのは7月と10月でともに67.2%であった。Wi-Fi運用の導入により年間を通して心電図画像の処理作業時間は平均5.6時間/月であり,従来の処理時間(平均18時間/月)に対し平均68.9%の削減率であった。

Figure 4  Comparison of processing time and manual work ratio before and after starting Wi-Fi operation

IV  考察

ERにおいてWi-Fiを用いたリアルタイム心電図画像送信の仕組みにより煩雑であった運用手順を,7つの工程から,技師による心電図のシステム送信,技師による患者属性の確認,心電図のオーダー情報への紐づけの3つの作業を削減し,作業工程を4つにした。また,従来では毎月依頼全件(約500件)において画像送信処理を手作業で行っていたが,現在では手作業による画像送信処理件数は総依頼件数の約1割となった。心電図画像の送信および確認作業に要する時間は,従来であれば約18時間/月であった処理時間も約5.6時間/月へと大きく削減でき,Wi-Fiを用いた運用が業務効率化へと繋がったと考える。しかしながら,依然として総依頼件数の約1割において,手作業による処理が発生している。当院ERでは,担当医師が3ヶ月ごとのローテーションで多数入れ替わるため,運用の徹底が難しい。Figure 2で示した「手作業の割合」は3ヶ月ごとに大きく推移していることからも,医師のローテーションが大きく影響していることが推察される。更に多くのスタッフが入れ替わるような環境下であれば,この影響は大きくなると考える。今回のWi-Fi運用を導入する際は担当者の入れ替わりも考慮し,誰でもWi-Fiを用いた心電図検査運用が実施できるよう簡易操作マニュアルを作成した。また,その簡易マニュアルを用いて医師と看護師を対象に4回にわたり説明会を行った。説明会では必ず①心電図検査実施前に検査依頼入力をすること,②バーコードリーダーを使用すること,③手順を遵守することを強調した。しかしながら,今回導入した運用を十分理解しているスタッフが常駐している訳ではなく,手順を理解していないスタッフ,手順を遵守していないスタッフが存在する。特に,検査依頼入力漏れ以外の理由で手作業となってしまった原因の59%が「ID入力方法に問題あり」となっており,バーコードリーダーを使用することが徹底されていないと考えられる。すなわち,安全確実な検査を遂行するための手順が徹底されていないということである。平原ら3)によると,パンフレットを用いた運用方法の指導や,患者ID未登録心電図を検査室でチェックし当該病棟への指導を行っているが,一定数の患者ID不明検体が発生していると報告がある。今後なぜ手順が徹底されていないのか,根本原因の追究を進め改善する必要がある。我々は,心電図画像が自動送信できなかった理由を調査し,その理由と発生頻度についてER医師や看護師と情報を共有し,改めて手順遵守の重要性を我々臨床検査技師が伝えていくことが重要であると考える。また,3ヶ月周期でER医師のローテーションが行われるため周知は難しいが,ローテーションに合わせた勉強会の開催や注意喚起,さらには簡易マニュアルの見直しなども臨床検査技師が継続して取り組むべきであると考える。

今回の取り組みは,心電図画像のリアルタイム送信が可能になったことで,ERにおける心電図画像が電子カルテに反映され,専門外来への再受診時に急性期の心電図画像を比較することが可能となった。従来,ERにおける急性期の心電図画像が電子カルテに反映されるまでのタイムラグにより,診療科からの問い合わせが毎月4~5件発生し随時対応していた。そのため,問い合わせを行う医師の負担に加え,待ち時間増加に伴う患者負担や,問い合わせに対応する臨床検査技師の負担も発生していた。これらの問い合わせに関連した作業は,Wi-Fi運用導入後にほぼ解消できた。今回のWi-Fiを用いたリアルタイム画像送信の仕組みは,患者のための安全で正確な診療や検査の実施を可能にしただけでなく,ERの心電図検査にかかる種々の負担や再受診時の心電図閲覧に伴う負担の軽減にも効果が得られた。一方,今回の報告ではWi-Fi運用導入前・後での「事後検査依頼入力件数」の変化は評価できていない。検査依頼が未入力の時,生理検査システム上に「事後検査入力を担当医に依頼中」とコメント入力し,生理検査室での管理を行っているが,事後検査依頼入力が確認でき手作業による紐づけと結果送信処理が完了するとコメントは自動削除されるため,事後検査依頼入力件数を把握することができなかった。そのため,医事課担当者の負担軽減がどの程度あったかを評価することはできなかった。今回我々が行った評価は,Wi-Fiを用いたリアルタイム画像送信の有用性評価をERという限られた場所でのみ実施しており,今後各病棟における心電図検査も含めたトータルでの心電図画像管理の運用確立が必要であると考えている。

V  結語

Wi-Fiを用いた心電図画像のリアルタイム送信により,ERや生理検査室における業務負担軽減および効率化を図ることが可能であった。各業務工程の見直しを行うことで得られる効率化は,各職種の業務負担軽減に繋がる可能性が示唆された。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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