2025 年 74 巻 4 号 p. 701-709
可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)は,非Hodgkinリンパ腫やATLで著明な高値を示し,それらの疾患の優れた指標として測定される。sIL-2Rの日常測定法には,化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法),酵素免疫測定法(ELISA法)と,ラテックス免疫比濁法(LTIA法)があるが,LTIA法はCLEIA法,ELISA法に比べて非特異反応が多いとされる。今回,積水メディカル株式会社より非特異反応を抑制した改良試薬「(Nタイプ)ナノピアIL-2R」(LTIA法)が発売されたことに伴い,本試薬の基礎的性能および改良効果を評価した。対象試薬は改良前の従来試薬とCLEIA法を原理とした測定試薬である。改良試薬の基礎的性能は良好であり,CLEIA法との相関が従来試薬に比べて向上した。乖離検体の免疫グロブリン吸収試験により,主にIgGに起因する非特異反応に対して,改良効果を認めた。本検証より,改良試薬は日常使用には十分な性能を有しており,また,従来試薬と比較して,非特異反応に対する抑制効果を示した。
Soluble interleukin-2 receptor (sIL-2R) is significantly elevated in patients with non-Hodgkin lymphoma and adult T-cell leukemia/lymphoma (ATL), making it an outstanding serum biomarker of these diseases. While chemiluminescent enzyme immunoassay (CLEIA), enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA), and latex turbidimetric immunoassay (LTIA) are routine assays for sIL-2R, non-specific reactions are reportedly more common in LTIA than in CLEIA and ELISA. In the present study, we evaluated (N-type) Nanopia IL-2R—a recently-marketed improved LTIA reagent developed by SEKISUI MEDICAL CO., LTD. to inhibit non-specific reactions—in order to determine its basic performance and its inhibitory effect on non-specific reactions. For the control reagents, we used the conventional LTIA reagent and a CLEIA reagent. The results showed that the improved LTIA reagent had satisfactory basic performance, and that the correlation between serum sIL-2R values determined by CLEIA and those determined by LTIA was higher for the improved LTIA reagent than for the conventional LTIA reagent. In the immunoglobulin absorption test using samples from discrepant cases, the improved LTIA reagent demonstrated a suppressive effect on non-specific reactions mainly caused by IgG. The results of the present study demonstrated that the improved reagent performs sufficiently when used in routine LTIA of serum sIL-2R values. The results also suggest that compared to the conventional LTIA reagent, the improved LTIA reagent strongly inhibits non-specific reactions with immunoglobulin—particularly IgG—in serum samples.
IL-2は15.5~16 kDaのサイトカインであり,IL-2受容体(IL-2R)に結合することでリンパ球の増殖・分化に関わる作用を発揮する1),2)。IL-2Rはα鎖(CD25),β鎖(CD122),およびγ鎖(CD132)の3つのサブユニットからなる複合体で,主にヘルパーT細胞(CD4+T細胞)やキラーT細胞(CD8+T細胞)などのリンパ球に多く発現している3)~5)。α鎖分子は休止期のリンパ球には認められないが,リンパ球が活性化すると同時に細胞膜上に発現する。その後,MMP-9などのプロテアーゼによってα鎖分子が細胞表面から切断され,可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)として末梢血中に遊離する6),7)。そのため,sIL-2Rは非ホジキンリンパ腫や成人T細胞白血病などの悪性リンパ腫で著明に高値になることが知られており,悪性リンパ腫の診断補助や治療効果の判定,再発の早期診断における指標として用いられている8)~10)。
sIL-2Rの測定方法には,現在,ラテックス免疫比濁法(LTIA法)と化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法),酵素免疫測定法(ELISA法)がある。LTIA法は簡便な測定方法で,自動分析装置での測定が可能であるが,免疫グロブリンやHAMAなどの非特異反応による測定値の乖離を示す場合がある11),12)。一方,ELISA法やCLEIA法は測定過程の洗浄機構により夾雑物を排除することが可能であり,非特異反応を抑制できる。しかし,ELISA法はマイクロプレート固相法によるためバッチ処理となり測定に数時間を要し,CLEIA法は専用の測定機器が必要である。このことから,検査を外部委託する施設も多く,検査結果の報告までに時間を要する。
今回,LTIA法の試薬において,免疫グロブリンに起因する非特異反応の抑制能を向上する改良を施した試薬が積水メディカル株式会社から発売されたことから,本試薬の基礎的性能およびその改良効果を評価した。
対象検体は,東京医科歯科大学病院検査部へsIL-2Rの検査依頼があった検体のうち,臨床検査を終了した残余検体を用いた。なお,本研究は東京医科歯科大学医学倫理審査委員会の承認(M2020-199番)を得て行った。
2. 測定機器・試薬 1) ナノピア IL-2R(以下,従来試薬)(積水メディカル株式会社)測定原理:LTIA法
測定機器:自動分析装置LABOSPECT008α(日立ハイテク株式会社)
2) (Nタイプ)ナノピア IL-2R(以下,改良試薬)(積水メディカル株式会社)測定原理:LTIA法
測定機器:自動分析装置LABOSPECT008α(日立ハイテク株式会社)
3) ルミパルスプレスト IL-2R(以下,ルミパルス試薬)(富士レビオ株式会社)測定原理:CLEIA法
測定機器:ルミパルスL2400(富士レビオ株式会社)
2濃度の精度管理用試料(積水メディカル株式会社)と患者プール血清を用いて20回連続測定し,Mean,SD,CVを算出した。
2. 室内再現精度2濃度の精度管理用試料(積水メディカル株式会社)を用いた。試薬搭載時のみキャリブレーションを行い,その後1日2回15日間測定し,Mean,SD,CVを算出した。
3. 直線性高濃度試料(積水メディカル株式会社)を生理食塩液で10段階希釈後,各試料を3回測定し,分散分析法で評価した。
4. 検出限界および定量限界ブランク上限(limit of blank; LoB)は生理食塩液を1日12回5日間,検出限界(limit of detection; LoD)は8濃度の試料をそれぞれ1日2回5日間測定した。得られた測定値を,ノンパラメトリック法で評価した。定量限界(limit of quantitation; LoQ)は,9濃度の試料を1日2回5日間測定し,バリデーション算出用プログラムを使用しCV 10%の点から算出した。
5. 共存物質の影響患者プール血清と干渉チェック・Aプラス,干渉チェック・RFプラス(シスメックス株式会社)を用いて溶血ヘモグロビン,遊離型ビリルビン,抱合型ビリルビン,乳び,リウマトイド因子の影響について検討を行った。
6. プロゾーン100,000 U/mL程度の高濃度試料(積水メディカル株式会社)を生理食塩液で10段階希釈し,各試料を2回測定した。
7. 従来試薬,ルミパルス試薬(CLEIA法)との相関性患者残余検体1,822例を従来試薬・改良試薬で測定し,いずれの測定値も10,000 U/mL以下であった検体を対象に,従来試薬およびルミパルス試薬との相関性を標準主軸回帰法で評価し,相関係数(r)と回帰式を算出した。
8. 乖離検体の解析ルミパルス試薬(CLEIA法)との相関性で測定した検体を,高濃度域群(ルミパルス試薬での測定値が588 U/mL以上)と低濃度域群(ルミパルス試薬での測定値が588 U/mL未満)に分けた。高濃度域群では,ルミパルス試薬の測定値に対して,従来試薬・改良試薬の測定値が50%以上の差を認めた検体を乖離ありと判定した。低濃度域群では,ルミパルス試薬の測定値に対して,従来試薬・改良試薬の測定値が300 U/mL以上の差を認めた検体を乖離ありと判定した。
ルミパルス試薬との相関性試験で乖離を認めた検体(以下,乖離検体)に対して,以下の追加検討を行った。なお,乖離検体の解析に関しては積水メディカル株式会社つくば研究所にて実施した。
1) ELISA法を用いた測定従来試薬・改良試薬に使用している2種類の抗ヒトIL-2Rモノクローナル抗体を用いたELISA法(積水メディカル株式会社,社内検討用)で,乖離検体のsIL-2R濃度を測定した。ELISA法と従来試薬,ELISA法と改良試薬の相関性を標準主軸法で評価し,相関係数(r)と回帰式を算出した。
2) 免疫グロブリン吸着担体(Protein A, Protein G, Protein L)を用いた免疫グロブリン吸収試験Protein GはIgGに対して特異的に強い結合特性を示すのに対し,Protein Aは,IgGのほか,IgAやIgMなどの他の免疫グロブリンとも結合することが知られている13)。また,Protein Lは,κ軽鎖を含むあらゆる免疫グロブリン(IgG,IgA,IgMなど)に結合することが報告されている13)。
免疫グロブリン吸着担体の結合特性をもとに,免疫グロブリンのクラスと非特異反応との関係を評価した。乖離検体と免疫グロブリン吸着担体(アガロース固定化Protein A,Protein G,Protein L)をそれぞれ反応させたのちに遠心し,免疫グロブリンを除去した試料を得た。これを従来試薬,改良試薬を用いてsIL-2R濃度を測定した。免疫グロブリン除去前の試料に対して,除去後のsIL-2R濃度が15%以上低下した検体を免疫グロブリンによる非特異反応の影響ありと判定し,Protein Gで測定値が低下した検体数と,Protein Gでは低下せずProtein A,Protein Lのいずれかまたは両方で低下した検体数を確認した。
併行精度(同時再現性)は,低濃度でCV 2.5%,高濃度でCV 0.8%,患者プール血清でCV 0.9%であった(Table 1)。
| Control 1 | Control 2 | Pooled serum | |
|---|---|---|---|
| Mean (U/mL) | 495.4 | 1,966.3 | 867.3 |
| SD (U/mL) | 12.4 | 15.8 | 7.6 |
| CV (%) | 2.5 | 0.8 | 0.9 |
室内再現精度は,低濃度でCV 3.2%,高濃度でCV 1.2%であった(Table 2)。また,添付文書記載の正確性の性能(測定期待値の85~115%)を基準とすると,本検討の結果は許容範囲内であった(Figure 1)。
| Control 1 | Control 2 | |
|---|---|---|
| Mean (U/mL) | 498.8 | 1,934.0 |
| SD (U/mL) | 16.0 | 22.4 |
| CV (%) | 3.2 | 1.2 |

9,959.1 U/mL(p = 2.9 × 10−2)まで直線性を確認した(Figure 2)。

LoBは52.2 U/mL,LoDは84.0 U/mLであった。LoQは185.2 U/mLであった(Figure 3)。

溶血ヘモグロビン,遊離型ビリルビン,抱合型ビリルビン,乳び,リウマトイド因子は,それぞれ添加最高濃度まで測定値に影響を与えなかった(Figure 4)。

検討範囲内において,測定値が測定上限の10,000 U/mLを下回らないことを確認した(Figure 5)。

改良試薬と従来試薬の回帰式はy = 0.994x + 31.66,相関係数はr = 0.978であった(Figure 6)。標準主軸回帰式の傾きaおよび切片bについて,それぞれブートストラップ法により 95%信頼区間を求めたところ,傾きaは0.975~1.013,切片bは22.47~40.84であった。傾きa = 1は傾きの信頼区間内にあり,有意な比例系統誤差を認めなかった。また,切片b = 0は,切片の信頼区間外にあり,有意な一定系統誤差を認めた。

ルミパルス試薬と従来試薬の回帰式はy = 0.933x + 114.39,相関係数はr = 0.967であった(Figure 7a)。標準主軸回帰式の傾きaおよび切片bについて,それぞれブートストラップ法により95%信頼区間を求めたところ,傾きaは0.910~0.957,切片bは100.42~126.75であった。傾きa = 1は傾きの信頼区間外にあり,有意な比例系統誤差を認めた。また,切片b = 0は,切片の信頼区間外にあり,有意な一定系統誤差を認めた。

a) Correlation between serum sIL-2R values determined by LTIA using Nanopia IL-2R conventional reagent and CLEIA using Lumipulse Presto IL-2R reagent
b) Correlation between serum sIL-2R values determined by LTIA using Nanopia IL-2R improved reagent and CLEIA using Lumipulse Presto IL-2R reagent
一方,ルミパルス試薬と改良試薬の回帰式はy = 0.947x + 132.01,相関係数はr = 0.977であった(Figure 7b)。標準主軸回帰式の傾きaおよび切片bについて,それぞれブートストラップ法により95%信頼区間を求めたところ,傾きaは0.918~0.977,切片bは117.73~145.79であった。傾きa = 1は傾きの信頼区間外にあり,有意な比例系統誤差を認めた。また,切片b = 0は,切片の信頼区間外にあり,有意な一定系統誤差を認めた。
9. 乖離検体の解析ルミパルス試薬との相関分析で従来試薬または改良試薬で37例の乖離検体を認めた。内訳として,従来試薬のみで乖離を認めたのが24例,改良試薬のみでは6例,従来試薬・改良試薬の両方で認めたのは7例であった。
1) ELISA法を用いた測定非特異反応を疑った乖離検体37例のうち,ELISA法による測定が可能だった検体は29例であった。ELISA法と従来試薬の回帰式はy = 0.771x + 770.97,相関係数はr = 0.422であった(Figure 8a)。また,ELISA法と改良試薬の回帰式はy = 1.014x + 97.95,相関係数はr = 0.829であった(Figure 8b)。

a) Correlation between serum sIL-2R values determined by LTIA using Nanopia IL-2R conventional reagent and ELISA using mouse/rat anti-human IL-2R monoclonal antibody in samples from discrepant cases
b) Correlation between serum sIL-2R values determined by LTIA using Nanopia IL-2R improved reagent and ELISA using mouse/rat anti-human IL-2R monoclonal antibody in samples from discrepant cases
乖離検体37例のうち,免疫グロブリン吸収試験が実施可能だった症例は21例であった(Table 3)。従来試薬では免疫グロブリン吸収試験で18例の測定値低下を認めた。そのうち,Protein Gでは11例低下した。一方,Protein Gで低下を認めずProtein A,Protein Lのいずれかまたは両方で低下した検体は7例であった。
| Conventional reagent | Improved reagent | |
|---|---|---|
| Decreased by Protein G | 11 | 2 |
| Decreased by Protein A, Protein L, or both, but not by Protein G | 7 | 5 |
| Not decreased by any protein | 3 | 14 |
一方,改良試薬は免疫グロブリン吸収試験で7例の低下を認めた。そのうち,Protein Gで低下した検体が2例,Protein Gで低下を認めずProtein A,Protein Lのいずれかまたは両方で低下した検体は5例であった。
本研究では,(Nタイプ)ナノピア IL-2Rの基礎的性能と,非特異反応に対する従来試薬からの改良効果について検討した。その結果は,基礎的性能は良好であり,また,非特異反応の抑制効果が従来試薬と比較して高いことを示した。
今回,基礎的性能評価として,併行精度,直線性試験,検出限界/定量限界,および従来試薬とルミパルス試薬との相関性を評価した。併行精度はCV 2.5%以下,室内再現精度はCV 3.3%以下であり,試薬添付文書の正確性の範囲である85~115%を基準とすると本検討の結果は良好であった。直線性試験の結果から,改良試薬の測定上限は9,959.1 U/mLであり,ルミパルス試薬(CLEIA法)の添付文書に記載された測定上限150,000.0 U/mLと比較すると,改良試薬の測定上限は低かった。しかし,本検討で改良試薬の測定上限を超過した検体は1,822例中7例(0.3%)であったことから,測定上限は十分であると考える。改良試薬の検出限界および定量限界は,ルミパルス試薬添付文書記載の検出限界1.9 U/mL,定量限界6.6 U/mLと比較するといずれも高い。しかし,sIL-2R濃度は低濃度域において臨床的意義がほとんど認められないことから14),日常的な測定において問題はないと考える。従来試薬と改良試薬の相関は概ね良好であった。ルミパルス試薬との相関性試験では,従来試薬との相関係数は0.967,改良試薬との相関係数は0.977といずれも高い相関を示した。また,改良試薬は従来試薬と比較して僅かに高い相関係数を示しており,より高い一致性を有する傾向を認めた。ルミパルス試薬と従来試薬・改良試薬では負の比例系統誤差・一定系統誤差を認め,ルミパルス試薬の値が低値傾向であることを示した。これはsIL-2R濃度が標準化されておらず,試薬製造元によって抗体の反応性や作製方法が異なるためと考える。また,ルミパルス試薬との相関性試験に使用した1,815例中37例の乖離検体が認められたが,従来試薬では31例(全体の1.7%)であったのに対して改良試薬では13例(全体の0.7%)と良好な改良効果を示した。
非特異反応物質に対する測定法の頑健性を評価するため,乖離例29例についてELISA法との比較を行った。今回行ったELISA法は,LTIA法の従来試薬・改良試薬と同一の抗体を使用し,かつCLEIA法と同様に非特異反応物質を除去する洗浄工程を有する測定系である。改良試薬では,従来試薬と比較してELISA法との相関性が向上していることから,非特異反応物質の影響をより抑制できていることを示していた。
免疫グロブリン吸収試験では,乖離検体21例のうちsIL-2R濃度が低下した検体は従来試薬で18検体(85.7%)であり,改良試薬では7検体(33.3%)であった。この結果は,改良試薬が従来試薬と比較して,免疫グロブリンによる非特異反応の影響が抑制されていることを示唆した。免疫グロブリン吸着担体の結合特性13)より,Protein Gで低下した検体,すなわちIgGに対する非特異反応が原因と考えられる検体は,従来試薬で11検体,改良試薬で2検体であった。一方,Protein Gでは低下せず,Protein A,Protein Lのいずれか,または両方が低下した検体,すなわちIgG以外の免疫グロブリンに対する非特異反応が原因と考えられる検体は,従来試薬7検体,改良試薬で5検体であった。この結果は,改良試薬が従来試薬と比較して,検体中の免疫グロブリン,特にIgGに対する非特異反応の影響を抑制していることを示唆している。
以上の結果から,改良試薬は,日常測定における基礎的性能は良好であり,またIgGによる非特異反応に対して従来試薬よりも抑制効果を発揮していると言える。
(Nタイプ)ナノピア IL-2Rの基礎的性能は良好であり日常使用には十分な性能を有していた。また,改良試薬は,洗浄工程を有するELISA法に近い性能で非特異反応物質の影響を抑制しており,特にIgGに対する非特異反応物質の影響を抑制できていることを示した。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。