医学検査
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尿沈渣検査によるポドサイトと各種円柱の関連性
川満 紀子上原 亜弥酒田 あゆみ
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2026 年 75 巻 1 号 p. 184-189

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Abstract

ポドサイト(糸球体上皮細胞)は糸球体基底膜の外側を覆い,血中蛋白質の最終濾過障壁の機能を果たす細胞である。尿中に剥離したポドサイトの検出は,糸球体硬化につながる腎障害バイオマーカーとして注目されている。現在,尿沈渣においてポドサイトの形態が明らかとなり検出が可能となったが,尿沈渣検査の観察量では検出数が少なく類似した他成分もあり,検出は容易ではない。そのため,尿沈渣での検出率を高めるために,尿中ポドサイト検出症例での背景成分である尿沈渣成分を解析した。尿中ポドサイトを検出した22症例では,全ての症例で尿蛋白と尿潜血がともに陽性であった。また,顆粒円柱,赤血球円柱,白血球円柱も同時に検出され,ポドサイト検出数が多いほど,赤血球円柱と白血球円柱の数も多い傾向であった。この2つの円柱の検出は,既報の尿中ポドサイト数が糸球体腎炎の活動期と相関があることと矛盾しない結果であった。この結果より,赤血球円柱と白血球円柱が検出される糸球体腎炎活動期を示唆する尿沈渣ではポドサイトの検出も念頭に置き観察することで,より検出が高まると考えられる。また尿沈渣からポドサイトを検出することで,侵襲性の高い腎生検を実施する前段階において糸球体疾患の活動性評価や治療効果の判定に有用な情報となり得ると考える。

Translated Abstract

Podocytes (glomerular epithelial cells) are specialized cells that cover the outer aspect of the glomerular basement membrane and serve as the final filtration barrier preventing the leakage of plasma proteins into the urine. The presence of podocytes in urine has been increasingly recognized as a potential biomarker for glomerular injury, particularly in relation to the development of glomerulosclerosis. Although recent advancements have enabled morphological identification of podocytes in urinary sediment, their detection remains challenging due to their low frequency and morphological similarity to other urinary components. In order to improve the detection of urinary podocytes via routine sediment examination, we conducted an analysis of the accompanying urinary sediment components in cases where podocytes were identified. In all 22 cases in which urinary podocytes were detected, both proteinuria and hematuria were concurrently observed. Additionally, granular casts, red blood cell (RBC) casts, and white blood cell (WBC) casts were present. Notably, a positive correlation was observed between the number of detected podocytes and the quantity of RBC and WBC casts. These findings are consistent with previous reports indicating that urinary podocyte counts correlate with disease activity in glomerulonephritis. Based on these results, we propose that in urinary sediment suggestive of active glomerulonephritis—characterized by the presence of RBC and WBC casts—careful observation for podocytes may enhance detection rates. Furthermore, the identification of podocytes through urinary sediment examination may provide clinically relevant information for assessing disease activity and therapeutic response in glomerular disorders, potentially reducing the need for repeated invasive renal biopsies.

I  はじめに

ポドサイト(糸球体上皮細胞)は,糸球体基底膜の外側を覆う細胞であり,血中蛋白質の最終濾過障壁の機能を果たしている1)。増殖能をもたないポドサイトは,障害され糸球体基底膜から脱落すると,周囲の残存しているポドサイトが細胞肥大により基底膜を覆って代償するが,代償しきれなくなるとボウマン嚢上皮細胞がその部分を覆い癒着が形成され,いわゆる糸球体硬化という状態を形成すると考えられている2),3)。そのため,ポドサイトの脱落は糸球体硬化・慢性腎不全につながり,腎障害のバイオマーカーとして尿中ポドサイト検出が注目されている。尿中ポドサイトの検出は,Haraらの報告4)により主に免疫蛍光染色によって行われ研究レベルの普及であったが,横山5),Yokoyamaら6)が既報により尿沈渣検査でのステルンハイマー(Sternheimer)染色による検出を可能としている。しかし,尿沈渣検査でのポドサイトについては,「尿沈渣検査法2010」に記述はあるもののアトラスへの記載はない7)。また,他の上皮細胞と比較し検出数が少ないため,ポドサイトの検出は容易ではない。今回,日常に行われている尿沈渣検査でのポドサイトの検出率を高めるために,ポドサイト検出症例における免疫蛍光染色では確認できない尿沈渣の背景所見について解析したので報告する。

II  対象と解析方法

1. 対象

対象は,2020年4月~2022年10月の間に九州大学病院にて尿沈渣検査を実施し,ポドサイトを認めた22症例とした。尿沈渣検査でのポドサイトの鑑別は,横山5),Yokoyamaら6)の論文に基づき『細胞質がきめ細かく滑らかな表面構造』を呈し,他の上皮細胞類と明らかに異なる細胞質の形態特徴をもった細胞とした(Figure 1)。全視野で1/WF以上とし,再現性のある検体を対象とした。なお本研究は,九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:23431)。

Figure 1  尿沈渣中でのポドサイト(Sternheimer染色 ×400)

2. 解析方法

解析項目は,ポドサイトを検出した対象症例の疾患名,推算糸球体濾過量(eGFR),尿定性検査結果(蛋白,潜血),尿沈渣検査結果(顆粒円柱,脂肪円柱,赤血球円柱,白血球円柱,ろう様円柱,幅広円柱)について,ポドサイトの検出数と併せて解析を行った。複数回ポドサイトを検出した症例は,初回の尿検査結果を集計に用いた。

尿定性検査は,ウロペーパーαIII(栄研化学)を用いて,全自動尿分析装置US-3500(栄研化学)で測定した。尿沈渣検査は,目視によって鑑別を行った。

III  結果

1. ポドサイト検出症例の疾患名,生化学検査結果

尿沈渣検査でポドサイトを検出した22症例の内訳は,男性:7例,女性:15例,平均34歳(12歳~86歳)であった。診療科は,小児科4例,腎臓内科14例,免疫膠原病内科2例,泌尿器科2例であった。該当症例の疾患名とポドサイトの検出数をTable 1に示す。IgA腎症が22例中11例,ループス腎炎4例,その他IgA血管炎,膜性増殖性糸球体腎炎,Alport症候群,壊死性糸球体腎炎が1例ずつであり,3例が腎生検未実施であった。

Table 1 尿沈渣でポドサイトを検出した症例の疾患名とポドサイト数

疾患名 症例数 平均検出数(/WF)
IgA腎症 11 4.4(2–15)
ループス腎炎 4 4.2(2–8)
IgA血管炎 1 8
膜性増殖性糸球体腎炎 1 8
Alport症候群 1 2
壊死性糸球体腎炎 1 5
腎生検 未実施
(抗がん剤治療,肥満腎症)
3 2.3(1–3)

ポドサイト検出症例でのeGFRは,18歳未満の6症例を除いた16症例の平均値が,69.3(11.7~116.7)mL/min/1.73 m2であった。

2. 尿定性検査結果

尿蛋白定性,尿潜血定性検査結果の各々の分布をFigure 2に示した。尿蛋白,尿潜血は全ての症例で(1+)以上の陽性であり,陰性検体はなかった。対象検体の半数以上が,尿蛋白,尿潜血が(3+)と強陽性であった。また尿蛋白と尿潜血の結果とポドサイトの検出数の分布についてFigure 3に示した。ポドサイトの検出は尿蛋白,潜血がともに強陽性の症例が多く,ポドサイトの検出数が多いほどその傾向にあった。

Figure 2  尿蛋白と尿潜血結果の分布
Figure 3  尿蛋白と尿潜血結果とポドサイト検出数との関連

3. 尿沈渣(円柱成分)検査結果

対象検体の尿沈渣での顆粒円柱,脂肪円柱,赤血球円柱,白血球円柱の検出数の分布をFigure 4に示した。ろう様円柱,幅広円柱については,対象検体では検出されなかった。顆粒円柱,赤血球円柱,白血球円柱は全ての症例で認められた。また,赤血球円柱および白血球円柱とポドサイトの検出数との関係についてFigure 5に示した。ポドサイトの検出数が多いほど,赤血球円柱,白血球円柱がともに増加していた。

Figure 4  各種円柱成分の検出数の分布
Figure 5  赤血球円柱と白血球円柱の結果とポドサイト検出数との関連

4. 尿中ポドサイト検出数と円柱成分の経時的変化

対象検体で,経時的にポドサイトを検出した1例のポドサイト数,尿定性検査,尿沈渣成分の結果についてTable 2に示した。該当症例は10歳代,女性,X年3月から9月の経過を示した。X年4月に腎生検を施行し,IgA腎症と診断され,その後ステロイドパルスによる治療が行われた。

Table 2 ポドサイト検出症例の経時的変化

3月 4月 5月 7月 9月
血清CRE(mg/dL) 0.47 0.58 0.59 0.58 0.58
尿蛋白 2+ 3+ 2+ 2+ 1+
尿潜血 3+ 3+ 3+ 2+ 1+
尿沈渣
ポドサイト(/WF) 3–5 5–8 (−) (−) (−)
硝子円柱(/WF) > 100 50–99 50–99 10–19 1–4
顆粒円柱(/WF) 5–9 1–4 1–4 1–4
上皮円柱(/WF) 20–39 5–9 5–9 5–9 1–4
脂肪円柱(/WF) 1–4 1–4 1–4 1–4
赤血球円柱(/WF) 30–49 5–9 10–19 5–9 1–4
白血球円柱(/WF) 10–19 5–9 5–9

ステロイドパルスによる治療後,ポドサイトは減少したが,尿蛋白,潜血は陽性であった。また遅れて白血球円柱,赤血球円柱が減少していた。

その後,経口ステロイド薬を段階的に減量し,潜血陽性,赤血球円柱は持続するものの蛋白尿は改善し,治療開始から1年後に経口ステロイド薬の内服を終了した。

IV  考察

今回の検討では,尿沈渣で検出の難しいポドサイトの背景成分について解析した。尿沈渣でポドサイトを検出した症例は,尿蛋白と尿潜血がともに陽性であった。円柱成分は,ろう様円柱,幅広円柱を認めず,顆粒円柱は少数検出の症例が多く,末期腎障害に該当する症例はなかった。また,脂肪円柱を認めない症例はあるものの,赤血球円柱,白血球円柱は同時に検出されており,ポドサイト検出数が多いほどこの2つの円柱検出数が増加していた。脂肪円柱はネフローゼ症候群でみられ,リポ蛋白漏出を反映していることから,蛋白濾過に関わるポドサイト検出とも関連があることが考えられるが,今回の検討結果から必ずしも検出するとは限らなかった。赤血球円柱は糸球体からの出血,白血球円柱はネフロンでの炎症活動期を反映することから7),糸球体腎炎での炎症活動期にポドサイトが脱落していることが考えられる。Haraら,松田の研究8)~10)では,尿中ポドサイト数は急性糸球体病変の活動性を反映しており,腎組織障害としては細胞性半月体形成,基底膜の破壊等を主とする急性管外性病変と強い相関があることが報告されている。尿沈渣での白血球円柱は,糸球体疾患での炎症活動期を示唆する所見であり,今回の検討による尿沈渣成分は,文献の報告と矛盾しない結果であった。

疾患では,IgA腎症,ループス腎炎で多く検出されていた。どちらの疾患も炎症性の糸球体疾患であり,とりわけ病期が多彩なこれらの疾患では,赤血球円柱および白血球円柱を検出する急性期の病態を反映していると考えられた。症例数は少ないものの炎症の少ない微小変化型ネフローゼ症候群,膜性腎症の症例は認めなかった。またポドサイト障害が憎悪要因となる疾患の一つである糖尿病性腎症は,今回の検討では認めなかった。Nakamuraらの報告11)では糖尿病性腎症において尿中ポドサイトを認めるものの,数は1.62 ± 0.46個/mLであり健常者より有意に多いが,急性管外性病変の報告数よりは少ない。後にも述べるが,尿沈渣で検出できる最低検出数に影響すると考えられる。しかしポドサイト検出の意義は高いため,検出感度の向上も必要であるといえる。

尿中ポドサイトと腎組織内ポドサイトと疾患慢性度の関連をCKD分類で調べた論文では,CKD stage 2~4の患者では,尿中ポドサイトの排泄が多く,stage 5の末期腎不全では,腎組織内ポドサイトは著減し,尿中ポドサイト排泄がわずかであったと報告されている12)。今回の検討においても,腎生検未実施である急速進行性糸球体腎炎の1例(eGFR 69.3 mL/min/1.73 m2)を除いて,腎機能は平均eGFR 69.3 mL/min/1.73 m2と保たれ,慢性腎不全の症例は該当しなかった。慢性腎不全に進行していると腎組織では腎硬化が進み,すでに組織内のポドサイトが脱落し尿中の排泄が減少していることが考えられる。そのため,ポドサイトを検出することは腎組織で管外性病変があるものの,現在進行形で障害が生じている病態で治療介入の必要性が推測される。

さらに尿中ポドサイト数の推移は,ネフローゼ症候群において治療反応性13)やFSGSでの腎予後を予測するうえで有用であることが報告されており14),今回の対象症例においても尿蛋白,白血球円柱よりも尿沈渣でのポドサイトが早期に減少していることから,従来の治療効果の確認より早く反映していると考えられた。

尿中ポドサイトの臨床的意義としては,糸球体疾患の鑑別,糸球体障害の活動性の評価,糸球体硬化の進行予測,治療判定マーカーとして有用であることが報告されている。この尿中ポドサイトを日常検査である尿沈渣検査で検出することが横山5),Yokoyamaら6)の報告により可能となったが,尿細管上皮細胞や大食細胞との鑑別が必要であり,アトラスも少ないことから現在では容易ではない。また,尿中ポドサイトの検出は免疫蛍光染色においても少数であり,ネフローゼ症候群で多くの症例は尿1 mLあたり2個未満であった10)。尿沈渣検査は10 mLの尿を遠心処理した0.2 mLの沈渣の一部15 μLを観察したものであり,換算すると750 μL中の尿成分の観察となる。そのため,尿沈渣を全視野観察したとしてもポドサイトの数は少なく,検出が難しい要因であると考えられる。今回の検討では,免疫蛍光染色での確認は行っていないため,数が少ない症例では尿沈渣でポドサイトを見落としていることも考えられる。特に尿中ポドサイト数が1個/mL未満の場合は,尿沈渣での検出は難しい。今後は免疫蛍光染色も行い尿沈渣でのポドサイトの検出感度を含めて,尿沈渣の背景成分の確認も必要であると考える。文献では,健常正常コントロール200症例でのポドサイト数は中央値0個,最大0.8個/mLという結果12)より,尿沈渣で1個/WF以上の検出は明らかにポドサイト障害を示唆し臨床に有用な情報であると考えられる。

今回の検討から赤血球円柱,白血球円柱の報告だけでも糸球体の炎症活動期を示唆する重要な所見であると考えられるが,必ずしも同時にポドサイトを検出する訳ではない。白血球円柱だけでは炎症を反映するが間質性腎炎や腎盂腎炎といった病態も含み,腎組織病態の推測は難しい。ポドサイトの検出は管外性病変を示唆する重要な所見であり,尿沈渣検査でポドサイトの検出が容易にできることは,侵襲性の高い腎生検を実施する前段階において糸球体疾患の活動性評価や治療効果の判定に有用な情報となり得る。尿沈渣でのポドサイト検出は難しいものの,白血球円柱・赤血球円柱を同時に検出する場合にポドサイトを念頭に置き観察することで,より検出感度が上がると考えられる。

V  結語

尿中ポドサイトは,急性管外性病変を反映しており腎障害の有用なバイオマーカーとして注目されている。尿沈渣で赤血球円柱,白血球円柱が出現する糸球体腎炎の炎症活動期を示唆する沈渣像でポドサイトの検出を念頭に置き観察することで,日常検査でも検出が可能であると考えられる。また尿沈渣からポドサイトを検出することで,侵襲性の高い腎生検を実施する前段階において糸球体疾患の活動性評価や治療効果の判定に有用な情報となり得ると考える。

本論文の要旨は第73回日本医学検査学会(2023年5月,金沢市)で発表した。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

 謝辞

本論文作成に際しご指導いただきました,九州大学大学院医学研究院臨床検査医学分野 國﨑祐哉教授に深謝いたします。

文献
 
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