医学検査
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資料
2型糖尿病患者の下肢神経障害とその関連因子についての検討
紙田 晃, 小林 知子, 石丸 美架, 岡本 憲省, 戎井 理
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2026 年 75 巻 3 号 p. 580-586

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Abstract

2型糖尿病患者の下肢の神経伝導と患者背景を含めた糖尿病関連検査値との相関性を検討した。2型糖尿病入院患者127名(男女比74:53,66 ± 12歳,平均HbA1c 9.2%)を正常群もしくは異常群に分類した。脛骨神経の複合筋活動電位振幅(tibial amp)5 mV以下,腓腹神経の感覚神経活動電位振幅(sural amp)5 μV以下を異常とし,tibial amp,sural ampの正常群と異常群で糖尿病指標を群間比較した。更に,神経指標と糖尿病指標の数値データを用いて相関分析を行った。Tibial amp,sural ampの異常の割合は各々17%と54%であった。群間比較ではtibial amp,sural amp異常群ともに罹病期間が長かった。Sural amp異常群では尿中アルブミンクレアチニン比が高値であった。相関分析では,tibial ampは罹病期間,足関節/上腕血圧指数,尿中アルブミンクレアチニン比,脛骨神経の運動神経伝導速度は罹病期間,HbA1c,Cペプチド,sural ampは罹病期間,脈波伝播速度,尿中アルブミンクレアチニン比,推算糸球体濾過量,腓腹神経の感覚神経伝導速度は罹病期間と相関を認めた。2型糖尿病患者の下肢の神経障害の進展には罹病期間の長さと強い関連性が示唆された。また,下肢運動・感覚神経の軸索障害には糖尿病に伴う血管障害や腎障害との関連が示唆された。

Translated Abstract

We investigated the association between lower limb nerve conduction and clinical background, including diabetes-related laboratory indices, in patients with type 2 diabetes mellitus (T2DM). A total of 127 hospitalized patients with T2DM (74 men, 53 women; mean age 66 ± 12 years; mean HbA1c 9.2%) were enrolled. Abnormal nerve conduction was defined as a tibial nerve compound muscle action potential amplitude (tibial amp) ≤ 5 mV and a sural nerve sensory nerve action potential amplitude (sural amp) ≤ 5 μV. Patients were divided into normal and abnormal groups for each parameter. Group comparisons of diabetes-related indices and correlations between nerve conduction parameters and clinical variables were analyzed. Abnormal tibial amp and sural amp were observed in 17% and 54% of patients, respectively. Disease duration was significantly longer in both tibial amp- and sural amp-abnormal groups than in the normal groups. The sural amp-abnormal group showed a significantly higher urinary albumin-to-creatinine ratio (UACR). Correlation analyses revealed that tibial amp was correlated with disease duration, ankle-brachial index, and UACR. Tibial motor nerve conduction velocity was correlated with disease duration, HbA1c, and C-peptide levels. Sural amp was correlated with disease duration, pulse wave velocity, UACR, and estimated glomerular filtration rate, while sural sensory nerve conduction velocity was correlated only with disease duration. Lower limb nerve conduction parameters reflect the progression of diabetic neuropathy and are strongly associated with disease duration. Axonal impairment of motor and sensory nerves may also be associated with diabetes-related vascular and renal dysfunction.

 序

糖尿病性神経障害は網膜症,腎症とならぶ糖尿病三大合併症の1つであり,この3つのうち最も早期から出現する1)。自覚症状が乏しいまま重症化している例もまれではなく,糖尿病性壊疽に至って下肢切断を余儀なくされたり2),自律神経障害による心血管イベントで突然死に至るケースもある3),4)。

神経伝導検査(nerve conduction study; NCS)は糖尿病性神経障害の中で最も頻度の高い糖尿病性多発神経障害(diabetic polyneuropathy; DPN)の早期診断,経過観察や重症度の評価,他の神経障害との鑑別に有用である1)。しかし,NCSは筋電計の設置と検査に習熟した臨床検査技師が常駐している必要があることから必ずしも簡便に実施可能な検査ではない。

八木橋5)は糖尿病性神経障害について,「診断の根拠となる自覚症状や他覚的神経所見はその有無によって表現され,その定量的な点については論じられてこなかった」と述べている。つまり,NCSの検査結果に関する検討はこれまで十分になされていないと考える。

当院では,1991年から血糖コントロールの不良な2型糖尿病患者を中心に糖尿病教育入院を行っている。今回我々は,糖尿病教育入院患者で施行したNCSの結果を用い,糖尿病性神経障害の進展に関連する因子を明らかにする目的で解析・検討を行った。

I  方法

1. 対象

対象は2017年8月1日~2018年1月31日の間にNCSを行った2型糖尿病入院患者127名(男女比74:53,66 ± 12歳)である。

2. 検査機器

筋電計はニューロパックX1(日本光電)を用いた。

3. NCS

脛骨神経の運動神経伝導検査(motor nerve conduction study; MCS)では,膝窩と内果で刺激を加え,母趾外転筋より複合筋活動電位(compound muscle action potential; CMAP)を導出した。腓腹神経の感覚神経伝導検査(sensory nerve conduction study; SCS)では,下腿の後方外側寄り,探査電極から14 cmの点で刺激を加え,外果側方の腓腹神経上に設置された探査電極より逆行性に感覚神経活動電位(sensory nerve action potential; SNAP)を導出した。SCSでは波形が安定するまで必要に応じて加算平均を行った。得られた波形から振幅(amplitude; amp)および運動/感覚神経伝導速度(motor nerve conduction velocity; MCV/sensory nerve conduction velocity; SCV)を算出した。

4. 検討内容

電子カルテから脛骨神経CMAP振幅(tibial amp)とMCV(tibial MCV),腓腹神経SNAP振幅(sural amp)とSCV(sural SCV)の検査結果を収集し,これらを神経指標とした。糖尿病指標は年齢,性別,罹病期間,BMI,喫煙歴,収縮期血圧,拡張期血圧,HbA1c,中性脂肪(triglyceride; TG),HDLコレステロール(HDL-C),LDLコレステロール(LDL-C),Cペプチド(connecting peptide immunoreactivity; CPR),足関節/上腕血圧指数(ankle-brachial index; ABI),脈波伝播速度(pulse wave velocity; PWV),頸動脈プラークの有無,頸動脈内膜中膜複合体厚(intima media thickness; IMT),糖尿病性網膜症の有無,尿中アルブミンクレアチニン比(urinary albumin-to-creatinine ratio; UACR),推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR)の各データを用いた。

神経指標異常群をtibial amp 5 mV以下およびsural amp 5 μV以下と定義した6)。次に,異常群の割合の算出を行った後,神経指標正常群と異常群で糖尿病指標を群間比較した。さらに,数値データに関して神経指標と糖尿病指標との相関分析を行った。全対象からすべての検討項目は得られなかったが,可能な範囲で検討を行った。

統計解析はSPSS Statistics 21(IBM)を用い,χ2検定,t検定,Mann-Whitney検定,Pearson相関分析,Spearman相関分析で検討した。P < 0.05を統計学的に有意とした。

本研究は当院の臨床研究倫理審査委員会において承認されている(研究申請番号31-42)。なお,当院とは筆者の以前の勤務地である愛媛県立中央病院を指す。

II  結果

1. 異常の割合

対象患者127名の平均HbA1cは9.2%で,そのうちtibial amp,sural ampの異常に該当する患者数は各々21名,68名,その割合は各々17%,54%であった(Figure 1)。

Figure 1  異常の割合

2. 群間比較

Tibial amp,sural amp各々の群間比較の結果をTable 1に示す。Tibial amp異常群は罹病期間が23 ± 13年,正常群は14 ± 10年であり,異常群は正常群と比較し有意に高値であった(p < 0.005)。Sural amp異常群は罹病期間が18 ± 11年,正常群は13 ± 11年で,tibial ampと同様に異常群は正常群と比較し有意に高値であった(p < 0.01)。また,sural amp異常群はUACRが471.37 ± 1,235.64 mg/gCr,正常群は116.77 ± 259.46 mg/gCrであり,異常群は正常群と比較し有意に高値であった(p < 0.05)。有意差を認めた項目の箱ひげ図をFigure 2に示す。

Table 1 正常群,異常群の群間比較データ

指標 tibial amp sural amp
正常群 異常群 p値 手法 正常群 異常群 p値 手法
年齢(歳) 66 ± 12 67 ± 11 0.972 M 65 ± 14 68 ± 10 0.382 M
性別 男60/女46 男14/女7 0.393 χ 男34/女25 男40/女28 0.892 χ
罹病期間(年) 14 ± 10 23 ± 13 0.004 M 13 ± 11 18 ± 11 0.005 M
BMI(kg/m2) 26.3 ± 5.3 28.9 ± 8.1 0.367 M 26.6 ± 6.7 26.9 ± 5.1 0.299 M
喫煙歴 無47/有57 無9/有12 0.844 χ 無27/有31 無29/有38 0.714 χ
収縮期血圧(mmHg) 138 ± 20 142 ± 23 0.683 M 135 ± 17 141 ± 22 0.125 M
拡張期血圧(mmHg) 78 ± 12 78 ± 14 0.969 t 77 ± 10 78 ± 13 0.606 t
HbA1c(%) 9.2 ± 1.8 9.3 ± 1.9 0.701 t 9.0 ± 1.7 9.4 ± 1.9 0.276 t
TG(mg/dL) 174 ± 119 178 ± 224 0.229 M 153 ± 78 193 ± 178 0.202 M
HDL-C(mg/dL) 44 ± 13 41 ± 9 0.314 M 45 ± 14 43 ± 11 0.471 M
LDL-C(mg/dL) 115 ± 40 124 ± 50 0.427 M 113 ± 41 120 ± 42 0.160 M
CPR(ng/mL) 2.04 ± 1.03 1.76 ± 0.97 0.224 M 2.03 ± 1.02 1.96 ± 1.04 0.516 M
ABI 1.10 ± 0.11 1.02 ± 0.23 0.190 M 1.10 ± 0.12 1.07 ± 0.16 0.317 M
PWV(cm/s) 1,865 ± 451 1,858 ± 315 0.551 M 1,797 ± 451 1,926 ± 409 0.083 M
頸動脈プラーク 無37/有64 無5/有15 0.318 χ 無22/有35 無20/有44 0.397 χ
IMT(mm) 0.91 ± 0.33 1.03 ± 0.39 0.242 M 0.92 ± 0.37 0.93 ± 0.32 0.627 M
糖尿病性網膜症 無58/有38 無8/有12 0.093 χ 無37/有19 無29/有31 0.054 χ
UACR(mg/gCr) 255.05 ± 819.40 566.98 ± 1,360.88 0.073 M 116.77 ± 259.46 471.37 ± 1,235.64 0.020 M
eGFR(mL/min/1.73 m2) 69 ± 26 69 ± 23 0.984 t 73 ± 24 65 ± 25 0.081 t

手法列には使用した統計手法を表し,χ2検定を「χ」,t検定を「t」,Mann-Whitney検定を「M」と示す。

数値データに関しては,統計手法の種類を問わず,平均値 ± SDで示す。

Figure 2  有意差を認めた項目の箱ひげ図

×は平均値を示す。

なお,sural amp異常群におけるUACR 1,000 mg/gCr以上の6例(1,375.8 mg/gCr, 2,037.6 mg/gCr, 4,063.1 mg/gCr, 4,637.17 mg/gCr, 4,796.9 mg/gCr, 6,898.2 mg/gCr)については,書面の都合上,グラフから省略する。

3. 相関分析

神経指標と糖尿病指標の相関分析結果をTable 2に示す。Tibial ampと罹病期間(r = −0.317, p < 0.001),ABI(r = 0.236, p < 0.01),UACR(r = −0.256, p < 0.01),tibial MCVと罹病期間(r = −0.337, p < 0.001),HbA1c(r = −0.294, p < 0.01),CPR(r = 0.286, p < 0.01),sural ampと罹病期間(r = −0.361, p < 0.001),PWV(r = −0.219, p < 0.05),UACR(r = −0.234, p < 0.05),eGFR(r = 0.242, p < 0.01),sural SCVと罹病期間(r = −0.245, p < 0.01)との間に正もしくは負の弱い相関が認められた。相関を認めた項目の散布図をFigure 3に示す。

Table 2 神経指標と糖尿病指標の相関分析データ

指標 tibial amp tibial MCV sural amp sural SCV
r p値 手法 r p値 手法 r p値 手法 r p値 手法
年齢 −0.145 0.104 P −0.022 0.803 S −0.084 0.364 S −0.151 0.102 P
罹病期間 −0.317 < 0.001 P −0.337 < 0.001 P −0.361 < 0.001 P −0.245 0.009 P
BMI −0.129 0.151 P 0.153 0.087 S −0.169 0.068 S 0.033 0.719 P
収縮期血圧 −0.045 0.613 P 0.114 0.204 P −0.181 0.049 P −0.043 0.647 P
拡張期血圧 0.067 0.457 P 0.020 0.821 P −0.041 0.657 P −0.100 0.281 P
HbA1c −0.034 0.708 P −0.294 0.001 P 0.050 0.599 P 0.009 0.924 P
TG −0.037 0.682 P 0.017 0.848 S −0.066 0.476 S 0.001 0.989 P
HDL−C 0.101 0.259 P −0.095 0.289 S 0.063 0.497 S −0.035 0.706 P
LDL−C −0.063 0.487 P −0.026 0.774 S 0.032 0.735 S 0.063 0.500 P
CPR 0.054 0.547 P 0.286 0.001 S 0.150 0.106 S 0.166 0.073 P
ABI 0.236 0.009 P 0.103 0.258 S 0.003 0.974 S −0.079 0.404 P
PWV −0.118 0.210 P −0.170 0.069 S −0.219 0.022 S −0.164 0.089 P
IMT −0.168 0.067 P −0.129 0.160 S −0.094 0.323 S −0.049 0.607 P
UACR −0.256 0.004 P −0.173 0.053 S −0.234 0.011 S 0.003 0.978 P
eGFR 0.093 0.300 P 0.017 0.846 P 0.242 0.008 P 0.094 0.310 P

手法列には使用した統計手法を表し,Pearson相関分析を「P」,Spearman相関分析を「S」と示す。

Figure 3  相関を認めた項目の散布図

III  考察

本検討では,tibial amp,sural amp各々5 mV以下,5 μV以下を神経異常群としてその割合を算出したところ,tibial ampが17%,sural ampが54%であった。既報告では神経障害の有病率は5~60%程度と報告されている7)。本研究で算出したsural ampの異常率は糖尿病性神経障害をとらえる上で妥当な指標であると考えた。腓腹神経SNAPの振幅は軸索密度減少を最も確実にとらえる指標として重視されている6)。脛骨神経CMAPの振幅の異常率が腓腹神経SNAPの振幅の異常率と比較し低値であったのは,糖尿病性神経障害の主要病型であるDPNでは平均的には感覚神経,自律神経,運動神経の順に障害による臨床症状が発現する8)からだと考える。

Tibial amp異常群,sural amp異常群は正常群と比較し罹病期間が有意に高値であり,今回検討を行った下肢のすべての神経指標と罹病期間との間に負の相関が認められた。この結果から,2型糖尿病患者における下肢の神経障害の進展には罹病期間の長さが最も強く関連していることが示唆された。馬場9)は,糖尿病性神経障害では,慢性高血糖から派生した代謝異常・虚血・炎症などによって神経線維の末梢部から変性・脱落が引き起こされるが,軽症期には再生神経が豊富に生じて神経機能低下を防止するものの,高血糖下では最終的に再生神経も変性する結果,神経線維総数は徐々に減少していくことを報告している。罹病期間が長い患者では高血糖状態が相対的に長く続いていることが推察され,この変化が神経伝導検査の異常として現れているものと考えられる。また,日本人2型糖尿病患者の糖尿病性対称性多発神経障害の有病率と特徴を調査したJDCP研究第10報では,糖尿病性対称性多発神経障害の有意なリスク因子として,年齢,糖尿病罹病期間,BMI,収縮期血圧などを報告しているが,特に,年齢や罹病期間のオッズ比が高く10),本研究の結果とも合致している。

Sural amp異常群は正常群と比較しUACRが有意に高値であり,tibial ampとABI,UACRとの間,sural ampとPWV,UACR,eGFRとの間にも相関が認められた。有意差はなかったものの,tibial amp異常群は正常群と比較しUACRが高値傾向で,tibial amp,sural amp異常群ともに正常群と比較して糖尿病性網膜症の併存の割合が高かった。下肢の運動・感覚神経の軸索障害は糖尿病に伴う血管障害や腎障害との関連性が示唆された。また,tibial MCVは罹病期間,HbA1c,CPRとの間に相関が認められたが,sural SCVは罹病期間以外の糖尿病指標との間に相関は認められなかった。馬場の報告11),12)にもあるが,速度系の神経指標は最大径有髄線維の脱落を反映するのみであり,軸索密度低下で規定されるDPNの重症度は振幅で判断するのがむしろ合理的であると考える。そのため,糖尿病の病態に関する指標との関連性は振幅と比較して乏しいと考えられた。

今回の検討と同様に神経の指標と患者背景や糖尿病関連検査の結果との関連を検討した報告が少数ながら散見される。DPNの重症度に関するリスク因子を調査したロチェスター糖尿病性神経障害研究では,糖尿病性微小血管障害,慢性高血糖,糖尿病病型がDPNの重症度と関連すると報告している13)。インスリン非依存の糖尿病患者における神経障害の発症率と自然経過を10年間にわたり追跡したPartanenら14)の研究では,多発神経障害の有病率は時間とともに増加し,低インスリン血症患者ではその増加がより顕著な可能性があるとしている。安部ら15)は腓腹神経の神経伝導異常が罹病期間,eGFRの低下,蛋白尿,ビリルビンと明らかな相関を認めたと報告している。小林ら16)の報告では,腓腹神経の伝導速度とBMIに有意な正の相関,尿蛋白/Cr比に有意な負の相関,心臓足首血管指数(cardio-ankle vascular index; CAVI)高値と伝導速度および振幅との間に有意な関連がみられた。小河ら17)は,正中神経のSCVとSNAP,尺骨神経のMCVを含めた複数の神経指標とさまざまな項目を比較検討した結果,長期の糖尿病罹病と高血圧がほぼすべての神経機能障害の危険因子であることを報告している。さらに,神経伝導障害の危険因子として男性であること,HbA1cが高いこと,低体重は神経伝導障害および自律神経機能障害と有意に関連していたと報告している。

本検討では神経伝導異常と罹病期間,腎障害,動脈硬化指標,HbA1cとの相関が認められ,前述の報告とも概ね矛盾しない結果であった。ただし,体型や性別との関連は見出せず,過去の報告と異なる。小河らの報告17)では,NCSの検査成績(正中神経SCV,SNAP,尺骨神経MCV)と臨床的因子との関連性を重回帰分析,ロジスティック回帰分析によって詳細に検討しているが,罹病期間とすべての検査成績との間に関連を見出しているのに対し,性別,身長,体重は一部の検査成績とのみ関連を見出している。この報告からもやはり,罹病期間は下肢の神経障害の進展への関連が強く,それに比較し性別や体型は関連の強さがやや劣る可能性がある。神経指標とUACRとの関連性については,今回とりあげた既報告に記載はなされておらず,新たな知見であったと考える。今後,さらにデータを蓄積して検討したいと考える。

最後に,本検討の限界として,検査を実施した時点でDPNの診断に影響を及ぼす神経疾患が併存していた可能性は否定できないが,少なくとも,結果に影響を及ぼす確率の高いビタミン欠乏等の栄養障害,膠原病等の自己免疫疾患,悪性腫瘍,薬剤性ニューロパチーを合併する症例は対象に含まれておらず,本検討の対象はDPNを主病態とする症例で構成されていると判断している。また,本検討ではF波やA波など末梢神経全般にわたる障害の指標に関する検討は行っていない。Andersenら18)はDPNにおいてF波潜時の異常が初期から認められることを指摘している。また,Koharaら19)はSNAP振幅は検者の違いを含め変動しやすいパラメーターであり,F波最小潜時が最も安定して記録できるパラメーターであると述べている。糖尿病患者では,下肢の刺激でA波が高率に出現することが知られている20)。F波,A波に関しては今後の検討課題としたい。

IV  結語

2型糖尿病患者における下肢の神経障害の進展には罹病期間の長さが最も強く関連していることが示唆された。また,下肢運動・感覚神経の軸索障害の進展には罹病期間の他に糖尿病に伴う血管障害や腎障害との関連が示唆された。

本研究の論旨ならびに結果は,2023年5月第63回日本神経学会学術大会(東京)にて発表した。

COI開示

本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。

文献
 
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