医学検査
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輸血検査用採血管ラベル名称統一と容量変更による検体管理効率化の効果
外山 真彦津久井 明子海野 友梨廣木 輝雄長谷川 雄一
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2026 年 75 巻 3 号 p. 608-613

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Abstract

茨城県立中央病院では,輸血検査用採血管のラベル名称を従来の5種類(血液型,不規則抗体,クロスマッチ,Type & Screen[T&S],クームス)から「輸血検査」に統一し,依頼項目略称を併記する運用に変更した。移行期間を除く変更前後1年間の検査依頼状況を比較した結果,オーダー件数は1.5%,検査項目件数は5.1%増加した一方,採血管本数は5,231本,30.8%減少した。検体検索性が向上,交差適合試験用検体の保管期間も1週間から1か月に延長可能となった。また,血液型検査採血管容量を7 mLに変更したことで追加検査や精査に必要な検体量を確保でき,再採血の回避や検査の円滑な実施に寄与した。これらの結果から,ラベル名称統一と容量変更は検体管理の効率化および業務負担軽減に有効であることが示された。

Translated Abstract

The labels for blood collection tubes used in transfusion testing at Ibaraki Prefectural Central Hospital were standardized into a single label designated as “transfusion testing,” with abbreviated test names appended. Previously, five separate labels (blood type, irregular antibody, crossmatch, type and screen, and Coombs) were used. A comparison of test request patterns during the one-year periods before and after the change was conducted. While the number of orders increased by 1.5% and the number of test items increased by 5.1%, the number of blood collection tubes decreased by 5,231, a 30.8% reduction. This change improved specimen retrieval efficiency and allowed the storage period for crossmatch specimens to be extended from one week to one month. Increasing the blood collection volume for blood typing from 2 mL to 7 mL provided sufficient specimen volume for additional or confirmatory testing, reducing the need for repeat sampling and facilitating more efficient laboratory operations. These findings suggest that label standardization and increased tube volume were effective in improving specimen management efficiency and reducing laboratory workload.

I  はじめに

茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンターは茨城県笠間市に位置する500床規模の二次救急医療機関であり,輸血部門は臨床検査科内に設置されている。日本輸血・細胞治療学会の輸血機能評価認定制度(I&A)およびISO 15189を取得しており,輸血検査の品質管理に注力している。2024年度の血液製剤使用量は,赤血球製剤5,424単位,新鮮凍結血漿1,928単位,血小板製剤13,300単位であった。

従来,輸血検査用採血管のラベルはABOおよびRh D血液型(以下,血液型)検査の「血液型」,不規則抗体検査の「不規則抗体」,交差適合試験用の「クロスマッチ」,手術においてType & Screen(T&S)依頼がある「T&S」,直接抗グロブリン試験および間接抗グロブリン試験の「クームス」の5種類が存在し,複数項目依頼時にはそれぞれ個別にラベルが発行されるため,1回の検査で複数本の採血が必要であった。

そのため,手術予定患者や救急外来では検査オーダー1回あたり3本以上の採血管が提出されることも多く,患者の採血量増加,採血担当者の業務負担増加,輸血部門での検体の受付・遠心・測定・保管作業が煩雑化していた。さらに,受付番号が同一の検体が複数存在することで,ラックへの規則的な検体保管ができないため検索性が低下し,交差適合試験や輸血前検体保管などで過去の検体を使用する際に困難を伴っていた。保管スペースの制約から,検体の保管期間も短くせざるを得ないため,遅発性溶血性輸血反応の検査が必要になった場合,輸血前の検体が廃棄されている事例もあった。

また,採血管の種類は,血液型検査用採血管はEDTA-2K添加容量2 mL(積水メディカル,インセパックII-D,SMD520EK-キイロ-ST),その他はEDTA-2Na添加7 mL(積水メディカル,インセパックII-D,SMD770ENA-ムラサキ-ST)であったため,血液型検査で精査や追加検査が必要な場合,例えば冷式不規則抗体を疑う場合,同定に必要な血漿が不足し,原因の特定と対応が困難であった。

本研究では,採血管ラベルの名称統一と容量変更による検体管理効率化の効果を検証した。

II  方法

電子カルテおよび部門システムでのマスター変更により採血管ラベルを各依頼項目名から「輸血検査」に統一し,複数項目を1枚のラベルで依頼可能とした(Figure 1)。依頼項目を識別するために項目略称をラベル下部に表記した。血液型検査を「血」,不規則抗体検査を「不」,交差適合試験用検体を「ク」,T&Sを「T」,直接抗グロブリン試験を「C」,間接抗グロブリン試験を「c」とした。直接抗グロブリン試験は,試験管法で測定しており,自動分析装置に架設しないため,直接・間接抗グロブリン試験を大文字と小文字で識別した。採血管はEDTA-2Na添加7 mLとした。ラベルの表記変更,電子カルテシステム変更にあたり,臨床検査技術科で承認後,輸血療法管理委員会で承認を受けた。クリニカルパスについては,電子カルテのベンダーの協力によりシステムのプログラムを修正し,クリニカルパスで登録されている血液型検査用採血管は変更後の採血管で依頼が可能となったため,変更は不要となった。

Figure 1  輸血検査用採血管ラベル名称統一の概要

ラベル名称変更前後のオーダー件数・項目件数・採血管数・T&S依頼件数について,検体検査システム(A&T)および輸血管理システムRhoOBA(オネスト)を用いて集計した。解析は,入院・外来別,検査項目別,診療科別に行った。対象期間は,移行期間の2022年12月を除いた前後1年間とした。統計学的解析は,1オーダーあたりの項目数の分布の比較にχ2検定を用い,p値が0.05未満を統計的に有意とした。解析には,IBM SPSS Statistics 27を使用した。また,血液型検査用採血管の容量を2 mLから7 mLに変更したことによる追加検査対応,検体保管期間や検索性の変化も評価した。

III  結果

1. 採血管本数

採血管数は,変更前後で5,231本(30.8%)減少した。入院・外来の減少数および減少率は,入院946本(17.0%),外来4,284本(37.5%)であった。診療科別では,変更前は血液内科,外科,救急センター,婦人科,整形外科の順に多く,変更後は血液内科,婦人科,外科,整形外科,救急センターの順に多かった。変更後の減少数(減少率)は救急センター1,122本(53.2%),外科1,101本(47.7%),泌尿器科527本(43.7%),婦人科525本(29.4%),産科338本(47.3%)の順に多かった(Table 1)。

Table 1 採血管数・検査項目数・オーダー件数の前後比較

変更前 変更後 増減数 増減率%
採血管本数 入院 5,562 4,616 −946 −17.0
外来 11,433 7,149 −4,284 −37.5
合計 16,996 11,765 −5,231 −30.8
診療科別採血本数 血液内科 2,795 2,620 −175 −6.3
外科 2,307 1,206 −1,101 −47.7
救急センター 2,109 987 −1,122 −53.2
婦人科 1,783 1,258 −525 −29.4
整形外科 1,455 1,167 −288 −19.8
泌尿器科 1,205 678 −527 −43.7
呼吸器外科 786 547 −239 −30.4
消化器内科 722 621 −101 −14.0
産科 715 377 −338 −47.3
循環器内科 420 187 −233 −55.5
乳腺外科 370 181 −189 −51.1
化学療法センター 317 308 −9 −2.8
耳鼻咽喉科 308 394 86 27.9
呼吸器内科 250 224 −26 −10.4
歯科口腔外科 218 134 −84 −38.5
その他 1,206 876 −330 −27.4
検査項目数 血液型 5,957 6,220 263 4.4
不規則抗体 4,671 5,130 459 9.8
クロスマッチ 5,071 4,978 −93 −1.8
T&S 1,167 1,446 279 23.9
間接抗グロブリン試験 101 66 −35 −34.7
直接抗グロブリン試験 76 79 3 3.9
合計 17,043 17,919 876 5.1
診療科別検査項目数 血液内科 2,824 3,158 334 11.8
外科 2,308 2,109 −199 −8.6
救急センター 2,111 1,998 −113 −5.4
婦人科 1,783 2,263 480 26.9
整形外科 1,456 1,856 400 27.5
その他 6,561 6,535 −26 −0.4
オーダー件数 入院 4,398 4,616 218 5.0
外来 7,194 7,147 −47 −0.7
合計 11,592 11,763 171 1.5

2. 検査項目数

項目数は,変更前後で876件(5.1%)増加した。検査項目別では,血液型263件(4.4%),不規則抗体459件(9.8%),T&S 279件(23.9%)と増加したが,クロスマッチは93件(1.8%)減少した。主要な診療科別では,整形外科400件(27.5%),婦人科480件(26.9%),血液内科334件(11.8%)の順に増加率が高かったが,外科199件(8.6%),救急センター113件(5.4%)で減少した(Table 1)。

3. オーダー件数

オーダー件数は,変更前後で171件(1.5%)増加した。入院・外来では入院で218件(5.0%)増加した。変更前のオーダー1件あたりの採血管数は,1本が60.4%,2本が32.9%,3本が6.2%,4本が0.4%であり,39.6%が2本以上であった。1オーダーあたりの項目数の構成比は変更前後でχ2検定により分布に有意差を認めた。1項目が減少し,2~4項目で増加した(Table 2)。T&Sの輸血オーダーは変更前1,130件,変更後1,501件で371件(32.8%)増加した。

Table 2 1オーダーあたりの採血管数および項目数の変化

変更前 変更後
採血管数構成比 1本 7,007(60.4%) 11,763(100.0%)
2本 3,815(32.9%) 0(0%)
3本 721(6.2%) 0(0%)
4本 49(0.4%) 0(0%)
項目数構成比* 1項目 6,988(60.3%) 6,687(56.8%)
2項目 3,826(33.0%) 4,060(35.0%)
3項目 714(6.2%) 939(8.1%)
4項目 56(0.5%) 68(0.6%)
5項目 8(0.1%) 9(0.1%)

*: p < 0.001

4. 検体の管理

1) 採血・検体処理

変更により,採血管数が減少したことにより採血業務の負担が軽減した。検体検査システムでの受付時のバーコード読み取り,受付番号の記入,遠心機への架設,測定時の自動分析装置での架設時のキャップ取り外し・取り出しの再栓操作が効率化した(Table 3)。

Table 3 輸血検査用採血管ラベル名称統一と採血量変更による検体管理への影響

変更前 変更後
ラベル種類 5種類(血液型,不規則抗体,クロスマッチ,T&S,クームス) 1種類(輸血検査)
採血・検体処理 採血管本数が複数の場合があり,採血担当者の業務負担が大きく,受付~測定操作が煩雑 採血管本数が1本のため,採血担当者の業務負担が減少,受付~測定操作が効率化
保管方法 ラベルごとにラックを分別 受付番号順に一元保管
検索性 規則的な配置で保管困難であり,検索性が低い 日付と受付番号で容易に検索可能
保管期間 1週間(クロスマッチ,T&S)
3~4週間(血液型,不規則抗体など)
1か月,遅発性溶血性輸血反応発生時に輸血前検体を利用できる可能性が高い
血液型検査採血量 2 mL,追加検査の検体量が不足 7 mL,追加検査に対応可能

2) 検体保管

測定済み検体のラックへの保管は,変更前は血液型,不規則抗体とクームス,クロスマッチとT&Sのラベルごと3種類に分けて保管していた。そのため分別をする操作の増加や入れ間違いのリスクがあったが,変更後は同じラックで保管するためこれらの問題は解消された。検体の廃棄までの保管期間は,変更前は,血液型,不規則抗体,クームスの検体は3~4週間,クロスマッチ,T&Sの検体は1週間であった。変更後は,臨床検査技術科の検体保管手順で定めた1か月間保管が可能となった。これによって,輸血後に不規則抗体が産生される遅発性溶血性輸血反応の場合に,不規則抗体同定の際に輸血前の検体を用いて患者赤血球の抗原を検査することが可能となった(Table 3)。

3) 検索性

変更前は,同一オーダーで検体検査システムの受付番号が同じとなる検体が複数存在することがあるため,規則的な保管が困難であった。そのため,追加検査や過去日の検体を用いて交差適合試験を実施する際に,日付と受付番号からのおおよその場所から検体を取り出して確認していたため,検索性が低かった。変更後は,日付ごとに受付番号順に保管できるため,検体検査システムで患者番号を入力し,受付番号を検索することで,検体の場所を特定することが可能となった(Table 3)。

5. 血液型検査用採血管(2 mL→7 mL)の変更とその効果

1) 血液型検査以外の追加検査への対応

不規則抗体スクリーニングおよび同定検査において一定量の血漿が必要であり,交差適合試験においても「輸血療法の実施に関する指針」に基づき,輸血前の血漿を2 mL保管する必要がある1)。そのため,従来の採血量2 mLでは追加検査の依頼に対応できず,再度採血を依頼するケースが見られた。採血量を7 mLに変更したことで,これらの追加検査に柔軟に対応可能となった(Table 3)。

2) 予期せぬ反応の対応に必要な検体量の確保

血液型判定において,オモテ検査とウラ検査の結果が一致しない場合や反応が減弱する場合など,予期せぬ反応が生じた際には追加検査を実施する必要がある2)。低温反応性の不規則抗体や寒冷凝集素の確認には十分な血漿量が求められるが,従来の採血量2 mLでは検体量が不足する事例があった。今回の変更により,7 mLの採血で必要量を確保できるようになり,追加検査の円滑な実施が可能となった(Table 3)。

IV  考察

診療科別に採血管数の変化をみると,外科系および救急センターにおいて減少が認められた。これは,救急外来や手術に際して血液型,不規則抗体,クロスマッチ,T&Sなど複数項目の検査が一括でオーダーされる傾向があり,ラベル名称統一により1本の採血管で対応可能となったことが主因と考えられる。一方,血液内科では変更前後を通じて採血管数が最も多く,これはクロスマッチのみの依頼が中心であり,他の内科系診療科も同様の理由により減少率が低かったと推察される。

オーダー件数は総数としては大きな変化はなかったが,入院患者において増加が認められた。項目数の増加率が高かった要因としては,整形外科,婦人科での増加およびT&Sの輸血オーダーが変更後に増加したことが挙げられる。これは,COVID-19による診療制限の解除後,輸血準備を要する手術件数が増加した影響や診療科の依頼方針の変更が考えられる。

項目別にみると,クロスマッチの件数は減少していた。これは,異なる時点に採血された別検体でABO血液型の二重チェックにより血液型の確定した患者で輸血検査用検体がすでに存在する場合,再度の採血を要せず,血液型検査のみでも交差適合試験が可能であることが医師に浸透してきたためと考えられる。なお,交差適合試験は,既存検体にクロスマッチの項目の追加を必要としない運用である。1オーダーあたりの項目数について,2~4項目が変更後において増加した理由として,ラベル名称統一により複数項目を1本で対応できるようになったことが考えられる。1オーダーあたり最大6項目,変更前は採血管数5本まで依頼可能であるが,実際は最大が5項目,採血管数4本であった理由として,クームス(間接クームス,直接クームス)とT&Sが同時に依頼されなかったためであると考えられる。

ラベル名称の統一により,採血業務および検体処理の効率化が図られ,看護師からも採血負担軽減に関する肯定的な意見が寄せられた。血液型検査の採血管容量の増加により,追加検査依頼時の再採血の回避にもつながっていると推察される。また,保管期間の延長は,遅発性溶血性輸血反応における患者赤血球の抗原検査だけでなく,自己抗体や寒冷凝集素を有する患者に対して輸血前の患者赤血球を用いた抗体吸着操作においても実施機会の増加にもつながる可能性がある3),4)

血液型検査のみ実施する場合,採血量が5 mL増加するため患者負担が増加する懸念があるが,繰り返し採血を要するクロスマッチなどと異なり,血液型を確定するまでの検査回数は限られているため影響は限定的であると考えられる3)

1. 本研究の直接効果

本研究では,輸血検査用採血管のラベル名称を統一し,容量を統一した結果,採血管数が大幅に減少し,オーダー1件あたりの採血管数も低下した。これにより,採血業務および検体処理業務の効率化が達成され,看護師や臨床検査技師の業務負担軽減につながった。また,ラベルの名称統一により検体の検索性が向上し,保管期間を最短1週間から1か月に延長したため,過去検体の利用が容易となった。さらに,血液型検査の採血管容量を7 mLに統一したことで,採血量増加による血液型を確定するまでの患者負担が懸念される一方で,追加検査や精査に必要な検体量を確保できるようになり,再採血の回避や検査の円滑な実施に寄与した。これらの成果は,ラベル名称統一と容量統一という介入が直接的にもたらした効果と考えられる。

2. 外的要因の影響

一方で,検査依頼件数や項目数の変化には,介入以外の要因も影響している可能性がある。特に,T&S検査項目数の増加は,COVID-19による診療制限解除後にT&Sの輸血オーダーのある手術件数が増加したことが一因と考えられる。また,クロスマッチ検査項目数の減少については,既存検体を用いた交差適合試験が可能であることが医師に浸透してきたことが背景にあると推察される。院内の運用では,原則としてT&Sの輸血オーダーの際,検査項目はT&Sのみ依頼し,クロスマッチは不要であるため,T&Sの増加とクロスマッチの減少は異なる背景が考えられる。さらに,診療科ごとの患者構成や症例数の変化も,採血管数の減少率に影響を与えた可能性がある。これらの外的要因は,本研究の介入効果と区別して解釈する必要がある。

3. 普遍性と今後の展望

本研究は単施設での検討であるため,結果の一般化には限界がある。しかし,ラベル名称統一による検体管理効率化や容量統一による追加検査対応力の向上は,他施設においても応用可能な普遍的な改善策であると考えられる。今後は,全国規模での導入事例を通じて,より広範な有効性の検証が望まれる。

V  結論

採血管ラベル名称統一と容量統一は,検体管理効率化,業務負担軽減,検索性向上に有効であった。

本論文の要旨は第74回日本医学検査学会(令和7年5月,大阪)にて発表した。

茨城県立中央病院倫理委員会の承認(申請番号No. 1741)を受けている。

COI開示

本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。

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