岡山大学病院では外来患者の多い曜日や時間帯には,院内駐車場の渋滞や院内各部署で待ち時間が長くなる傾向がある。採血室では午前8時から10台の採血台(2台は化学療法前の優先採血用)で採血を行っているが,採血開始前から100人以上が待っていることもあり,「待ち時間が長い」といったご意見が寄せられることが度々あった。このような状況を改善するために,混雑した待合いで長時間待つことなく,採血以外の検査などへ移動することで待ち時間を有効に活用できるように,スマートフォンなどで病院内外を問わずリアルタイムで採血待ち状況が確認できるYouTubeライブ配信を2022年6月20日より開始した。なお,ライブ配信に必要なStreamlabs Desktopなどのソフトウエアや機材などを職員自らが準備・設定を行い,ライブ配信の仕組みを構築することで,コストを抑えつつ,現場のニーズに即した柔軟な運用が可能となっている。YouTubeチャンネルの登録者数は,岡大病院アプリ「コンシェルジュ」(以下,岡大病院アプリ)からYouTubeライブ配信を視聴できるよう設定したこともあり2025年12月末時点で161人にとどまった。同時点における岡大病院アプリの登録者数は13,582人であり,これと比較するとYouTubeチャンネル登録者数の増加は緩やかであった。
At Okayama University Hospital, traffic congestion in the hospital parking lot and prolonged waiting times in various departments tend to occur on days and during time periods with a high volume of outpatients. In the blood collection room, blood sampling begins at 8:00 a.m. using 10 collection stations (2 of which are prioritized for pre-chemotherapy sampling). However, there were occasions when more than 100 patients were already waiting before the start of sampling, and feedback such as “the waiting time is too long” was frequently received. To address this situation, YouTube live streaming service was launched on June 20, 2022, enabling patients to check the real-time blood collection waiting status via smartphones both inside and outside the hospital. This allowed patients to make better use of their waiting time by moving to other examinations instead of waiting in a crowded waiting area. The necessary software and equipment for live streaming, such as Streamlabs Desktop, were prepared and configured by hospital staff themselves, and by building the live streaming system, a cost-effective and flexible operation tailored to on-site needs was successfully achieved. The number of YouTube channel subscribers remained at 161 by the end of December 2025, because the live stream could be accessed through the Okayama University Hospital app “Concierge.” At the same time, the app had 13,582 subscribers, indicating that the increase in YouTube channel subscribers was relatively modest.
岡山大学病院では,2014年の採血・採尿業務支援システム更新時に採血整理番号表示ディスプレイを採血待合いに5台設置した。その後,採血待ち時間を有効利用するために,採血室待合い以外でも表示して欲しいという要望が寄せられ2017年にネットワークカメラによる院内配信を行ったが,カメラ設置場所や画質など,運用上の課題があった。2018年の生理検査システム更新時に超音波診断センターと生理検査室の待合いに1台ずつ整理番号表示ディスプレイを設置し,運用上の課題が多かったネットワークカメラによる院内配信を中止した。このため,採血待ち時間の有効利用は一部の場所に限定されることとなった。その後,採血待ち状況をより多くの場所で確認できるようにするため,採血室待合いに設置したテレビへMiracastを用いて整理番号表示ディスプレイの画面をミラーリングする方法を試みたが,距離が離れていることが要因と考えられ,通信が安定せず正常に作動しなかった。
多くの施設では,採血システム更新に伴うレイアウト変更や採血台の増設などで待ち時間の解消1),2)を行っており,当院でも同様に待ち時間の解消を図るために場所を移転し採血台の増設を行ったが,待ち時間の解消には至らなかった。これまで,採血室の待合い以外では超音波診断センターと生理検査室の待合いに設置しているディスプレイでのみ確認可能であった採血待ち状況を,2022年6月20日よりYouTubeによる採血待ち状況のライブ配信を開始したことで,院内のどこにいてもスマートフォンなどでリアルタイムの待ち状況を確認できるようになった。この取り組みにより,患者は採血の順番を気にすることなく,他の検査や院内での移動・休憩などを自由に行えるようになり,待ち時間の有効活用が可能となったので報告する。
当院では,2003年より採血室を設置し臨床検査技師が採血業務を看護部と共同で開始した。開始当初の採血台は4台で,その後昇降付きの採血台を1台追加し5台で採血を行っていた。
当時は,採血前日に外来より採血室へ送付されてきた採血ラベルを患者氏名の五十音順に並べて準備し,採血当日に患者が来室した際に迅速に採血ラベルを採取容器へ手貼りできるようにしていた。また,化学療法前の採血は血液検査室で実施していたため,送付されてきた化学療法前採血ラベルを血液検査室へ送付していた。その後,採血ラベルの貼り間違えを含めたインシデントの発生を防ぐことなどを目的とした採血・採尿業務支援システム(株式会社テクノメディカ)を2004年に導入し,これにより,入院患者の採血管準備も可能となり,採血業務の効率化を進めることができた。さらに,採血室での採血件数の増加と朝の混雑解消を目的として採血業務開始時間を8時30分から8時へ変更するとともに,採血台の数を10台へ増やすため現在の場所へ2014年8月に移転し,10台のうち2台を化学療法前優先採血用として運用を開始した(Figure 1)。

No. 9 and No. 10 are blood collection chairs prioritized for patients before chemotherapy.
採血待ち時間が長くなる要因として,採血開始前にすでに多くの患者が待っていることや,一定時間帯に患者が集中することなどがある。採血室周辺に設置した5台の採血整理番号表示ディスプレイは,距離が近いこともありVGAケーブルで接続した。2018年に超音波診断センターと生理検査室の待合いに採血整理番号表示を行う液晶ディスプレイを設置する際は,採血室と距離が離れているため,VGAケーブルで接続すると画質が劣化する。そのため,エクステンダーを介してLANケーブル接続して,採血整理番号表示を行うディスプレイを設置し(Figure 2),採血待ち時間の有効利用を図ったが,その効果は限定されていた。さらに,2019年には採血を診察日前の午後に行う事前午後採血運用を導入したが,待ち時間の解消には至らなかった。

採血業務には,常勤の臨床検査技師2名を配置し,看護師のパート職員を10名まで増員し曜日ごとの勤務時間を調整するなどして,時間帯によるが2名から10名の体制で採血業務に対応している。しかし,採血開始時間前までに100人を超える患者が待っている日もあり,その場合には待ち時間が延長する傾向が認められる。待ち時間の延長は採血以外の検査にも影響を及ぼし,診察の遅延に繋がることになる。
待ち時間の有効活用のために心電図検査や胸部X線撮影など,予定されている他の検査を案内し移動していただくことがある。しかし,採血室を離れると超音波診断センターと生理検査室の待合い以外の場所には採血待ち状況,すなわち採血整理番号を確認できるディスプレイが設置されていないため,採血室へ戻るタイミングを判断することが困難であるという課題があった。採血待ち状況をリアルタイムに確認できるシステムはなく,院内他部署からも改善の要望があった。この課題に対応するため,YouTubeライブ配信を可能にする無料のソフトウエアや採血整理番号表示動画をキャプチャーする機材などを職員自らが準備・設定を行い,2022年6月20日よりYouTubeによる採血待ち状況のライブ配信を開始した。加えて,2022年5月16日より導入した岡大病院アプリに採血待ち状況ライブ配信のリンク(以下,採血状況アイコン)を登録することで,より一層スマートフォンなどを利用し,院内のどこにいても採血待ち状況をリアルタイムで確認できるようになった。
ライブ配信環境構築に際しては,事前に当院医療情報部へ仕様説明を行い,承認を得たうえで環境構築を行った。また,試験ライブ配信の際には,(1)院内には来院者が無料で利用できるWi-Fi環境が無いので利用者の通信料負担軽減を考慮し画質を少し低下させること,(2)岡山大学サーバーへの埋め込み配信にすること,(3)配信動画内に現在の日時と通信料負担に関する注意喚起メッセージを表示すること,の3点について提案があった。
ライブ配信を実施するために,YouTubeアカウントを作成し,YouTubeチャンネル「岡山大学病院採血室の待ち状況」(以下,YouTubeチャンネル)を2022年3月4日に開設した。岡山大学の職員が職務上ソーシャルメディアを利用するために必要な事務手続きとして,岡山大学ソーシャルメディアガイドラインに沿ったアカウント開設を申請し,許可を得た。ただ,岡山大学のYouTubeアカウントの利用許可は得られなかったため,検査部のアカウントを作成し使用することになった。YouTubeライブ配信に必要な周辺機材として,採血・採尿業務支援システムから出力される採血整理番号表示動画をVGA分配するVGA8分配装置とYouTubeライブ配信用パソコン(以下,配信用PC)は既存のものを活用し,必要な周辺機器としてVGAキャプチャーカードとVGAケーブルを新たに購入した。
ライブ配信動画は採血・採尿業務支援システムの採血整理番号表示制御パソコンからVGA出力される採血整理番号表示動画をVGAキャプチャーカード経由で配信用PCに取り込む。その動画を無料ライブ配信ソフトウエアStreamlabs Desktopで配信用に設定と編集を行い,ライブ配信ストリームキーでYouTubeチャンネルとの紐づけを行いライブ配信する。YouTubeで受信した動画をYouTube Studioでライブ配信設定を行ったうえで岡大サーバーに埋め込み,採血室の待ち状況として採血整理番号表示動画をライブ配信している(Figure 3)。

配信用PCからのライブ配信を終了または配信用PCのインターネット接続の切断によりライブ配信が中断すると,YouTubeチャンネルの動画管理ツールYouTube Studioの一部設定が初期化され,ライブ配信されなくなることを踏まえ,配信用PCのインターネットは常時接続し,24時間ライブ配信している。しかし,学内ネットワークの不安定または不具合,保守などにより配信用PCのインターネット接続が切断され,ライブ配信が中断した場合は,YouTube Studioの設定をライブ配信用に修正しなければライブ配信を再開することができない。さらに,配信用PCを24時間稼働させているために発生する配信用PCの動作遅延・不良またはVGA動画取り込み不良,Streamlabs Desktopの動作不良などによるライブ配信不良,配信用PCの保守(OS更新,PC再起動など)の有無などを随時管理者が監視し,ライブ配信の安定配信に努めている。ライブ配信不良が発生またはPC保守が必要になった場合,採血室外のPCから採血室の配信用PC(Figure 1)へChromeリモートデスクトップを使用してリモート接続を行い,必要な処置を施している。これにより,患者対応で混雑している採血室に出向くことなく対応でき,ライブ配信の中断時間を最小限に抑え,患者サービスの継続に努めている。
スマートフォンなどの契約内容によっては,ライブ配信の視聴に伴いデータ通信料が発生する場合があるため,見やすさを損なわない範囲内でデータ容量を抑えた設定にしている。このため,配信画質は多少不鮮明に感じられるが,通信に係る負担を軽減しつつ,快適に利用していただけるよう配慮した配信を行っている。また,岡大サーバーに埋め込み配信することで,サーバーの負荷を軽減するとともに,ライブ配信画面以外のYouTube画像を見ることなく視聴することを可能にしている。
院内でライブ配信について周知するために,総合受付や再来受付機,診療科などで使用しているデジタルサイネージを利用することを考えた。しかし,各デジタルサイネージには多くの情報が掲載されており,場所によっては一巡するまでに1時間ほどかかるデジタルサイネージもあるため,二次元バーコードやURLを掲載した案内を採血室の待合いなどへ貼付してライブ配信を周知した。
岡山大学病院はDigital Transformation(DX)を推進しており,その対応として2022年5月16日より岡大病院アプリを導入し運用を開始している。この岡大病院アプリには以下のような主な機能がある。
・診察日や検査前日の注意事項などを自動で通知するアラートリマインド
・病院の入り口を通るだけで再来受付が可能な自動チェックイン
・診察の順番が近づくと通知がある診察状況のお知らせ
・クレジットカードでの後払いが可能となるらくらく会計
さらに,岡大病院アプリにライブ配信のURLを設定して,岡大病院アプリの初期画面にある採血状況アイコンから採血待ち状況を確認できるようにした。これにより,スマートフォンに岡大病院アプリを登録すれば,岡大病院アプリの初期画面から採血待ち状況を確認することが可能となり,案内掲示している採血待ち状況URLの二次元バーコードを読み取ることなくリアルタイムで採血待ち状況を確認できるようになった(Figure 4)。

Clicking the icon displays the current blood collection status.
配信している採血整理番号は,個人情報と紐づけられない番号情報のみであり,患者氏名,診療情報,検査内容などの個人情報は一切含まれていない。録画・保存は行っておらず,リアルタイム表示のみとしている。また,本報告は,患者個人を特定できる情報を含まない施設運用の評価を目的としているため,著者らは倫理審査の対象外と判断した。
YouTubeチャンネル開設の目的は,待ち時間状況をリアルタイムに可視化することで,患者が混雑した待合いにとどまることなく,他の検査への移動やその他の院内移動を患者自身が選択できる環境を提供することである。本目的の達成状況を評価するため,YouTubeライブ配信を開始した2022年6月20日から2025年12月末までの期間を対象とした。本ライブ配信は岡大病院アプリおよび岡山大学サーバー経由でYouTubeチャンネル登録を行わなくても視聴可能である。このため,チャンネル登録者数は利用実態を過小評価する可能性があることから補助的な指標として扱い,主な利用状況を反映する指標として再生回数および視聴時間を評価対象とした。再生回数および視聴時間はYouTube Studioから取得した。ただし,岡大病院アプリおよび岡山大学サーバー経由の視聴がこれらの指標にどの程度反映されているかは不明であり,実際の利用状況を反映していない可能性がある。なお,月次指標は各月ごと,年次指標は各年ごとに集計した登録者数,再生回数および視聴時間と定義した。累計値は,岡大病院アプリおよびYouTubeライブ配信について,それぞれ運用開始時点から各時点までの登録者数の累積値とした。
外来診療棟入口における岡大病院アプリ登録受付窓口の設置は2022年8月に開始され,さらに,外来診療棟1階ロビーには大型の岡大病院アプリ案内表示を掲示した。これらの取り組みにより,岡大病院アプリの登録者数は毎月概ね200人以上の新規登録が続いている。これらの推移の結果,2024年10月には累計登録者数が1万人を超え,2025年12月末時点では13,582人が登録している(Figure 5)。

一方,YouTubeチャンネルの登録者数は,岡大病院アプリから採血待ち状況のYouTubeライブ配信を確認できるように設定したこともあり,YouTubeライブ配信を開始してから2025年12月末時点で161人にとどまった。同時点における岡大病院アプリと比較するとYouTubeチャンネル登録者数の増加は緩やかであった(Figure 6)。

YouTubeチャンネルにおける月次の再生回数および視聴時間の推移においては,月次再生回数は期間を通じて変動を示しながら推移しており,特定の月では比較的高い再生回数が認められた。月次視聴時間についても同様に月ごとの変動が見られ,再生回数の増加と一致する月もあった(Figure 7)。

月次推移とは別に,年次の再生回数,視聴時間および登録者数はいずれも年ごとに変動して推移した。ただし,2022年はYouTubeライブ配信を開始した2022年6月20日から12月31日までの集計であり,他の年とは集計期間が異なる。登録者数と視聴時間の推移は概ね一致する傾向を示し,特に再生回数および登録者数は2024年に比較的高い値を示した(Figure 8)。

Data for 2022 were aggregated from June 20 to December 31, whereas data for 2023–2025 represent full calendar years.
近年,当院でも導入している診察や検査の予約時間などを考慮した採血システムを導入し,採血開始前までに待つ患者数を減らすことで待ち時間の短縮を図っている施設が報告されている3)~5)。このシステムは,採血業務の平準化や採血開始前に滞留する患者数の削減を目的とした有効なシステムである。一方で,当施設で取り組んだYouTubeを活用した採血待ち状況のライブ配信は,待ち人数そのものを直接制御するのではなく,採血待ちに関する情報をリアルタイムに可視化することにより,院内での過ごし方を患者自身の判断で調整できる。この点については,採血システムとは異なり,患者の主体性を尊重した情報提供型のアプローチであり,採血までの患者の心理的負担やストレスの軽減を図ることが可能となる点で大きな違いがある。
当院がライブ配信を開始した当時には,採血の待ち時間を有効活用するためにリアルタイムで採血待ち状況を把握できるシステムや製品に関する有益な情報はシステムベンダーおよび機器メーカーから得られなかった。
ライブ配信するために費用を抑えて,院内向けと来院者向けに自前で何が可能かそれぞれ検討した。院内向けでは病院情報システムのネットワークを利用して院内の必要な部署・場所に配信できないか検討したが,岡山大学病院病院情報システム運用管理要項に従い,採血整理番号表示動画を病院情報システムで共有できるネットワーク構成になっていなかったので早々に断念した。
そこで,来院者向けに絞って,インターネット環境があれば誰でも利用でき,多様な分野で利用され,リアルタイムで情報共有できるライブ配信を使って,採血整理番号表示動画を採血待ち状況として配信できるかを検討した。無料で利用できるライブ配信プラットフォームにはいくつかあるが,総務省が毎年実施している「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」6)において,動画共有・配信サービスなどの利用率が全年代・年代別共に最も利用率が高いYouTubeを利用することにした。ライブ配信は民間のプラットフォームであるYouTubeに依存していることから,将来的な仕様変更や配信制限が生じる可能性は否定できないものの,汎用的かつ多くの利用者にとって馴染みのあるYouTubeを利用することで,導入および運用のハードルが低くなる点もYouTubeを用いる大きな利点である。
一方で,岡大病院アプリと比較すると,YouTubeチャンネルの登録者数は伸び悩む傾向がみられた。この背景には,両媒体の利用目的および患者の行動の性質の違いが大きく影響していると考えられる。岡大病院アプリは,診療予約,受診情報の確認,病院からの重要なお知らせの受信など,医療行動に直結した実用的機能を有しており,患者にとってインストールおよび継続利用の動機が明確である。つまり,患者の医療ニーズと直接結びついており,能動的な選択肢というよりも,半ば自動的な継続利用が生じやすいといった機能特性により,岡大病院アプリは登録者数の安定的な増加につながったと考えられる。
これとは異なり,YouTubeチャンネルは岡大病院アプリと比較して,患者の自発的な関心に基づく媒体である。また,岡大病院アプリにリンクを登録したことで,チャンネル登録を行わなくても採血待ち状況の情報を得ることが可能となっており,この点も登録者数が伸び悩んだ一因であると考えられる。したがって,チャンネル登録者数は利用者数そのものを示す指標ではなく,本ライブ配信の利用実態を過小評価している可能性がある。そのため,利用状況を評価する際には,再生回数や視聴時間を併せて解釈する必要がある。しかしながら,岡大病院アプリおよび岡山大学サーバー経由での視聴がYouTube Studio上の再生回数や視聴時間へ十分反映されていない可能性もあることから,視聴指標は利用状況を過小評価している可能性があり,結果の解釈には注意を要する。
YouTubeチャンネルにおける視聴指標をみると,短期的(月次)には再生回数および視聴時間の増減が必ずしも一貫していないものの,中長期的(年次)には特定の年において視聴時間が顕著な伸びを示したことが明らかになった。特に,年次推移では,登録者数と再生回数が概ね同様の変動傾向を示していた。登録者数は利用実態を十分に反映しない可能性があるため,利用状況は再生回数および視聴時間を中心に評価する必要がある。ただし,Figure 8に示した2022年の集計値は2022年6月20日から12月31日までの期間を対象としているため,他の年次集計値とは単純比較できないことに注意する必要がある。
待ち時間に関する苦情件数や満足度調査などの定量的なアウトカム評価を実施していないため,YouTubeチャンネル開設前後での有効性を客観的に判断することは困難である。しかしながら,ライブ配信による採血待ち状況の可視化は,患者が採血室待合い以外の場所でも待ち状況を確認できる環境を提供するものであり,院内での行動様式に一定の影響を与えた可能性が示唆される。従来は,採血待ち時間に関する情報は採血整理番号を確認できるディスプレイか職員の案内に依存しており,患者は自らの順番がいつ来るのかを把握できないまま,採血室待合いに滞留する傾向があった。
これに対し,採血待ち状況のライブ配信を導入することで,患者は採血室の待合いにとどまることなく,院内の様々な場所で自由に過ごすことが可能となった。これは,待ち時間そのものを短縮するものではないものの,患者は採血待ち時間を有効活用できるようになった。さらに,感染症が流行するパンデミック時には,院内にとどまることなく車中などで順番が来るまで待機することも可能になり,感染リスクの軽減にもつながると考えられ,登録者数や再生回数といった指標のみでは評価できない有用性をYouTubeライブ配信は有すると考えられる。
一方で,患者の院内行動や患者満足度を直接評価しておらず,ライブ配信導入による行動変容や満足度向上を実証することはできていない。また,再生回数や視聴時間は利用状況を示す指標ではあるものの,患者満足度の向上や待ち時間の有効活用を直接示すものではない。そのため,YouTubeチャンネルの利用実績および安定した運用が可能であったことにとどまる。今後は利用者アンケートや待ち時間に対する満足度調査,院内での行動変容に関する評価を行い,患者満足度や待ち時間の有効活用に与える影響について検証する必要がある。
現在,採血待ち状況をリアルタイムで確認できるライブ配信については,2025年12月にリニューアルした検査部門のホームページの案内に加え,岡大病院アプリの初期画面から採血待ち状況を確認できるようになっている。今後は,採血室待合いなどにYouTubeライブ配信に関する案内を再度掲示することで,YouTubeチャンネルの認知度向上と利用促進を図り,再生回数および視聴時間の増加につなげていきたいと考えている。さらに,外来患者が集まる場所にWi-Fi機能付きディスプレイを設置することで,スマートフォンなどの操作に不慣れな患者を含め,より多くの患者が採血待ち状況を確認できる環境の整備を進めていくことが今後の課題である。
本論文の趣旨は,第69回日本臨床検査医学会学術集会にて発表した。
本論文に関連して,著者が開示すべき利益相反(COI)はありません。