医学検査
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技術論文
腸内細菌目細菌におけるBDフェニックスM50を用いたNMIC-479パネルの性能評価
足立 紗世, 佐藤 望裕, 鍛治 蒼真, 月野 友歌, 藤社 果林, 中村 竜也
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2026 年 75 巻 4 号 p. 866-872

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Abstract

目的:感染症診療において,迅速かつ正確な薬剤感受性試験は抗菌薬の適正使用に不可欠であり,表現型から薬剤耐性機構を推定可能な自動分析装置は臨床現場で注目されている。そこで,NMIC-479パネルを用いたBDフェニックスM50による薬剤耐性機構推定機能について評価した。方法:カルバペネマーゼを含む薬剤耐性機構が確定している本学保存の腸内細菌目細菌50株を対象とした。BDフェニックスM50による表現型推定結果と遺伝子学的検査結果との一致率を算出した。また,ertapenem(ETP)の薬剤感受性結果を用いたカルバペネマーゼ検出能について評価した。結果:薬剤耐性機構の推定一致率は,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌,AmpC β-ラクタマーゼ産生菌およびカルバペネマーゼ非産生カルバペネム耐性腸内細菌目細菌で100%,カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌で96%であった。ETP感受性結果を用いたカルバペネマーゼ検出の陽性一致率は100%,陰性一致率は60%,陽性的中率は71.4%,陰性的中率は100%であった。結論:本検討により,NMIC-479パネルはβ-ラクタマーゼ産生菌の推定に有用な補助情報を提供し得る一方,Ambler分類の推定には限界が認められた。また,ETP単独によるカルバペネマーゼ検出は高い陰性的中率を示したものの,特異度に課題を有することが示唆された。

Translated Abstract

Rapid and accurate antimicrobial susceptibility testing is essential for the appropriate use of antimicrobials in infectious disease management. Automated analyzers capable of inferring resistance mechanisms from phenotypic data have attracted attention in clinical settings. This study evaluated the performance of the BD Phoenix M50 system with the NMIC-479 panel for inferring antimicrobial resistance mechanisms. A total of 50 Enterobacterales isolates preserved at our institution with previously characterized resistance mechanisms, including carbapenemases, were included. Concordance rates were calculated by comparing resistance mechanisms inferred by the BD Phoenix M50 system with those identified by molecular analysis. In addition, the performance of carbapenemase detection based on ertapenem (ETP) susceptibility results was evaluated. The concordance rates were 100% for extended-spectrum β-lactamase (ESBL), AmpC β-lactamase, and noncarbapenemase carbapenem-resistant Enterobacterales, and 96% for carbapenemase-producing Enterobacterales (CPE). The sensitivity and specificity of ETP-based carbapenemase screening results were 100% and 60%, respectively, with a positive predictive value of 71.4% and a negative predictive value of 100%. The NMIC-479 panel demonstrated high concordance in inferring β-lactamase-mediated resistance mechanisms. However, limitations were observed in the concordance of Ambler classification and the specificity of carbapenemase detection based on ertapenem susceptibility. These findings suggest that the NMIC-479 panel may provide useful supplementary information for inferring resistance mechanisms in clinical practice.

I  目的

近年,腸内細菌目細菌における薬剤耐性菌の出現は多様化しており,その感染拡大が懸念されている。特に,カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales; CRE)のうち,カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(carbapenemase-producing Enterobacterales; CPE)は治療および感染制御の両面において重大な問題となっている。国内におけるカルバペネマーゼ産生菌の遺伝子型はIMP型が主体であるが,近年では海外で流行するNDM型やKPC型の分離報告も増加しており,今後の拡散動向に注意が必要である1)。カルバペネマーゼは一般にカルバペネム系抗菌薬に対して高度耐性を示すが,IMP-6型やOXA-48-like型などMICの上昇が明瞭でない,いわゆるステルス型カルバペネマーゼも存在する。このような遺伝子型は,薬剤感受性試験の結果のみでは検出が困難な場合があり,臨床現場における課題となっている2)。

近年,薬剤感受性試験結果から薬剤耐性機構を推定可能なアルゴリズムを搭載した自動分析装置が広く普及している。BDフェニックスM50(日本BD)はその代表的な装置の一つであり,新規パネルであるNMIC-479では,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)の推定機能に加え,低濃度メロペネムの搭載やエルタペネムを活用したカルバペネマーゼ推定アルゴリズムの強化が図られている。これらの改良により,ステルス型を含むカルバペネマーゼ産生菌の検出精度向上が期待される。しかしながら,NMIC-479パネルによる薬剤耐性機構推定の性能,特にステルス型カルバペネマーゼを含むカルバペネマーゼ産生菌の検出能については十分な検証がなされておらず,その有用性および限界は明らかでない。

そこで本研究では,NMIC-479パネルを用いたBDフェニックスM50による薬剤耐性機構推定結果を遺伝子学的解析結果と比較し,カルバペネマーゼを中心とした耐性機構推定の精度,臨床的有用性,およびその限界について評価した。

II  対象および方法

1. 対象

対象は,近畿地方の医療機関において臨床検体より分離され,研究目的で提供・保存されていた本学保存の腸内細菌目細菌50株とした。本研究では菌株のみを解析対象とし,患者情報(年齢,性別,診療情報,検体情報など)は収集していない。対象株は,遺伝子学的解析結果に基づき,評価目的のため以下の3群に分類した。内訳は,CPEが25株,カルバペネマーゼ非産生カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(non-carbapenemase producing carbapenem-resistant Enterobacterales; non-CP CRE)10株,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase; ESBL)およびAmpC β-ラクタマーゼ産生菌15株とした。詳細な遺伝子型については,カルバペネマーゼ遺伝子はIMP-1型5株,IMP-6型4株,NDM 3株,KPC 2株,GES型カルバペネマーゼ4株,OXA型カルバペネマーゼ4株,VIM,KHM,SMBおよびNmcAが各1株とした。ESBLに関しては,CTX-M-1 groupが5株,CTX-M-9型が4株,CTX-M-2およびCTX-M-8,TEM,SHVそれぞれ1株とした。AmpC β-ラクタマーゼは,CIT,CMY,DHA,EBC,MOXの各1株とした。なお,患者情報および検体情報については収集していないため,重複については考慮していない。non-CP CREについては,modified carbapenem inactivation method(mCIM)陰性であり,qPCR法を用いたmRNA発現量解析にて,外膜蛋白(ompK35, ompK36, ompC, ompF)の発現量低下または欠損を認め,カルバペネム系抗菌薬に対する耐性機序がカルバペネマーゼ産生以外に起因すると判断された株とした。また,本検討は性能評価を目的とし,遺伝子学的に耐性機序が確定した株を選択した。

2. 方法

1) 薬剤感受性試験

薬剤感受性試験は,NMIC-479パネルを用い,BDフェニックスM50にて添付文書に従い実施した3)。品質管理株として,Escherichia coli ATCC25922およびKlebsiella pneumoniae ATCC700603を使用した。判定はClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)M100(第34版)4)に基づき行った。

2) 薬剤耐性遺伝子の同定

薬剤耐性遺伝子の同定は主にPCR法により実施し,必要に応じて次世代シーケンサー(next generation sequencing; NGS)を追加した。PCR法は,既報の方法5)~10)に従い,カルバペネマーゼ遺伝子,ESBLおよびAmpC β-ラクタマーゼ遺伝子を検出した。PCR産物はシーケンス解析を行い,得られた塩基配列をResFinder Ver 4.7.2(Center for Genomic Epidemiology; CGE)により解析し,CTX-M型,SHV型,TEM型β-ラクタマーゼの遺伝子型を決定した。NGS解析はNovaSeq 6000(Illumina)を用いて実施し,得られた配列はde novoアセンブリ後,ResFinder Ver 4.7.2(CGE)とAMRFinderPlus Ver 3.12.8(NCBI,Galaxyにて実施)を用いて薬剤耐性遺伝子の同定を行った。遺伝子同定はidentity 90%以上,coverage 60%以上を陽性と判定した。

3) 各薬剤耐性機構の評価

薬剤耐性機構の推定は,BDフェニックスM50により付与された判定コメントに基づいて行った。装置により付与されたコメントと,本研究で用いた薬剤耐性機構の分類との対応をTable 1に示す。PCR法およびNGSにより同定された薬剤耐性遺伝子の結果を基準とし,装置による推定結果との一致率を算出した。さらに,CPEを対象に,遺伝子学的に同定されたカルバペネマーゼ遺伝子をもとに,推定されたAmbler分類との一致率についても評価した。また,IMP-6型やOXA-48-like型,GES型を含むステルス型カルバペネマーゼについては,各カルバペネム系抗菌薬(エルタペネム,イミペネム,メロペネム)のMICおよび装置による推定結果について評価した。

Table 1 BDフェニックスM50により付与されたコメントとそれに基づく薬剤耐性機構の分類

BDフェニックスM50の判定結果(コメント) 薬剤耐性機構の分類
カルバペネマーゼ産生株 CPE
単剤またはカルバペネマーゼとの合剤で複数の耐性メカニズムを有する場合がある non-CP CRE
ESBL産生株 ESBL
獲得性AmpCの過剰産生 AmpC

4) エルタペネム薬剤感受性結果を用いたカルバペネマーゼ検出性能の評価

エルタペネム(ertapenem; ETP)の薬剤感受性結果を用いて,カルバペネマーゼの検出性能について評価した。PCR法およびNGSにて同定したカルバペネマーゼ遺伝子の有無を基準とし,ETPの薬剤感受性結果(非感受性/感受性)に基づいて,感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率を算出した。

5) 統計解析

統計解析はPython(ver. 3.13.9)を用いて実施した。一致率および診断性能指標(感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率)の95%信頼区間(95% confidence interval; 95% CI)はWilson法により算出した。Ambler分類の一致度はCohen’s κ係数により評価し,BDフェニックスM50にて「Ambler分類不可」と判定された株については,独立したカテゴリーとして扱った。

III  結果

1. 各薬剤耐性機構の評価

各薬剤耐性機構に関するBDフェニックスM50と遺伝子学的結果との一致率は,CPEで96.0%(24/25株,95% CI:80.5–99.3%),non-CP CRE,ESBL,AmpC β-ラクタマーゼ産生菌のいずれも100%であった(Table 2A)。

Table 2A 各耐性機序の性能評価(一致率および95% CI)

耐性機構の分類 一致率(n=, 95%CI)
CPE 96%(24/25, 81–99%)
non-CP CRE 100%(10/10, 72–100%)
ESBL 100%(10/10, 72–100%)
AmpC 100%(5/5, 57–100%)
Table 2B カルバペネマーゼ非産生株と誤判定された株との比較

菌種 薬剤耐性遺伝子 MIC(μg/mL)・カテゴリー判定 BDフェニックスM50の判定結果
(コメント)
ETP IPM MEPM
E. coli IMP-66,TEM-1B 2(R) 1(S) 2(I) カルバペネム耐性
K. pneumoniae IMP-66,TEM-1B,SHV-11 > 2(R) > 8(R) > 8(R) クラスBカルバペネマーゼ産生菌

ETP: ertapenem, IPM: imipenem, MEPM: meropenem

ステルス型カルバペネマーゼを保有する株では,カルバペネム系抗菌薬に対するMICの上昇が明瞭でない株が複数認められた。GES-24産生株でAmbler分類を誤判定した1株およびOXA-232産生株で分類不可と判定された1株を除き,8/10株でカルバペネマーゼ産生が推定された。

IMP-66産生の1株で,遺伝子を保有しているのにもかかわらずBDフェニックスM50にてカルバペネマーゼ非産生と判定された。この株では,同遺伝子を保有し,クラスBカルバペネマーゼ産生菌と正しく判定した株と比較して,イミペネムおよびメロペネムのMICが低値を示した(Table 2B)。

2. CPEにおけるAmbler分類の一致率

CPEにおけるAmbler分類の一致率は76%(19/25株)であり,Cohen’s κ係数は0.624であった。クラス別では,ステルス型カルバペネマーゼを含むクラスBで90%以上の一致率を示した。一方,クラスAおよびDでは66.7%にとどまった(Table 3A)。

Table 3A Ambler分類のクラス別の一致率

Ambler分類 一致率
クラスA 66.7%(4/6株)
クラスB 92.9%(13/14株)
クラスD 66.7%(2/3株)
クラスA &クラスB 0%(0/1株)
クラスB &クラスD 0%(0/1株)
Table 3B 不一致を示した株の内訳(各1株)

カルバペネマーゼ遺伝子 Ambler分類 BDフェニックスM50の判定
GES-24 クラスA クラスB 誤判定
IMP-66 クラスB カルバペネマーゼ非産生 誤判定
KPC-3 クラスA Ambler分類不可 判定不能
OXA-232 クラスD Ambler分類不可 判定不能
IMP-1 & GES-24 クラスA &クラスB Ambler分類不可 判定不能
NDM-1 & OXA-181 クラスB &クラスD Ambler分類不可 判定不能

不一致を示した株の内訳をTable 3Bに示す。GES-24産生株はクラスBと誤判定され,IMP-66産生株でカルバペネマーゼ非産生と判定され,KPC-3,OXA-232産生株ならびに2種類のカルバペネマーゼ遺伝子を保有している株では,Ambler分類は判定不可であった。

3. エルタペネムによるカルバペネマーゼ検出性能

ETPの薬剤感受性結果を用いたカルバペネマーゼの検出性能は,陽性一致率100%(25/25株,95% CI:86.7–100%),陰性一致率60.0%(15/25株,95% CI:40.7–76.6%),陽性的中率71.4%(25/35株,95% CI:54.9–83.7%),陰性的中率100%(15/15株,95% CI:79.6–100%)であった。

ETP非感受性を示した株のうち,カルバペネマーゼ陰性であった10株はいずれもnon-CP CREであった。これらの株については,NGS解析を含む遺伝子学的解析およびqPCR法によるmRNA発現量解析にて,外膜蛋白(ompK35, ompK36, ompC, ompF)の発現量低下または欠損を認め,カルバペネム系抗菌薬に対する耐性機構が確認された。一方,ETP感受性株にカルバペネマーゼ産生菌は認められなかった。

IV  考察

本検討では,新規パネルであるNMIC-479を用いてBDフェニックスM50による薬剤耐性機構推定性能を評価した。その結果,non-CP CRE,ESBL産生菌およびAmpC β-ラクタマーゼ産生菌で高い一致率を示し,CPEについても1株を除きカルバペネマーゼ産生菌と判定された。Murataら11)はBD Phoenix CPO Detectパネルを用いた検討において,カルバペネマーゼ産生菌に対する高い検出性能を報告しており,本研究の結果も概ね一致するものであった。これらの結果から,NMIC-479パネルはカルバペネマーゼを含む主要なβ-ラクタマーゼ産生菌の推定に有用な補助情報を提供できる可能性が示された。

一方,IMP-66産生株ではカルバペネマーゼ非産生と判定された。本株が誤判定された要因として,カルバペネム系抗菌薬に対するMICの上昇が明瞭でなかったことに加え,阻害剤添加による表現型変化が十分に検出されなかった可能性が考えられた。一般に,本システムの推定アルゴリズムはMICパターンと阻害剤による変化を組み合わせて判定するため,これらの変化が乏しい場合にはカルバペネマーゼ産生菌であっても検出されない可能性がある。近年,IMP-6やOXA-48-likeに代表されるステルス型カルバペネマーゼは,カルバペネム系抗菌薬に対するMIC上昇が軽度であり,表現型試験による検出が困難であることが報告されている12),13)。本研究で誤判定されたIMP-66産生株も同様の特徴を有していた可能性があり,低MICを示すカルバペネマーゼに対する表現型推定の限界を示す結果と考えられた。したがって,本システムによる耐性機構推定は有用なスクリーニング情報を提供するものの,結果のみでカルバペネマーゼ産生を否定することは困難であり,mCIM法や遺伝子検査など他の検査法と併せて総合的に判断することが重要である。また,薬剤感受性試験の初期段階においてステルス型カルバペネマーゼの存在を疑う契機となり得る点は,本システムの臨床的意義の一つと考えられた。

本研究では,国内で主流であるIMP型カルバペネマーゼに加え,KHM,SMB,NDM,KPC,OXAおよびGES型カルバペネマーゼを含めて評価した点に特徴がある。国内のCPEはIMP型が主体であることが報告されており1),KPC型やNDM型を主体とした海外の報告とは異なる遺伝子型分布を反映している。そのような背景の中で,本研究ではIMP-66産生株において誤判定を認めた。対象株数は限られているものの,本結果は国内で流行するIMP型カルバペネマーゼに対する表現型推定の課題を示唆する知見であり,今後の推定アルゴリズムの改良や追加検査の必要性を考える上で有用な情報になると考えられた。

CPEにおけるAmbler分類の一致率は76%であり,特にクラスAおよびDで低値を示した。Phoenix CPO DetectによるAmbler分類の性能は報告によって大きく異なり,Class Aでは14.3~100%,Class Bでは65.9~100%,Class Dでは56.3~100%の一致率が報告されている。特にKPC変異株やOXA-48-likeカルバペネマーゼでは分類精度の低下が指摘されている14)~17)。本研究結果もこれらの報告と同様の傾向を示した。クラスBカルバペネマーゼは金属イオン依存性酵素であり,阻害剤に対する反応が比較的明瞭であることから高い一致率が得られたと考えられた。一方,複数のカルバペネマーゼ遺伝子を保有する株や,有効なβ-ラクタマーゼ阻害剤が限られるクラスDカルバペネマーゼ産生株では,表現型のみから正確な分類を行うことが困難であると考えられた。また,KPC-3産生株およびOXA-232産生株ではAmbler分類が判定不能であった。特にOXA-48-likeカルバペネマーゼはカルバペネム系抗菌薬に対する加水分解活性が弱く,低MICを示すことが知られている11),18)。そのため,従来の表現型試験では見逃される可能性が指摘されており19),本研究における分類不能も同様の特徴を反映した結果である可能性が考えられた。

ETPの薬剤感受性結果を用いたカルバペネマーゼ検出では,陽性一致率および陰性的中率がいずれも100%であり,カルバペネマーゼ産生菌の除外には有用であった。一方で,陰性一致率および陽性的中率が低く,ETP非感受性株にはnon-CP CREが含まれていた。ETPはカルバペネマーゼ産生菌のスクリーニング薬として広く利用されており,CLSIおよびEUCASTにおいても重要な指標薬として位置付けられている4),20)。本研究においてもETP感受性株にカルバペネマーゼ産生菌は認められず,ETP感受性はカルバペネマーゼ産生菌を除外する指標として有用である可能性が示された。一方で,ETP非感受性を示した10株はいずれもnon-CP CREであった。近年,外膜蛋白欠損や発現低下にESBLあるいはAmpC β-ラクタマーゼ産生が加わることでカルバペネム耐性を獲得するnon-CP CREの増加が報告されている21),22)。本研究においても,ETP非感受性株では外膜蛋白の発現低下あるいは欠損が確認されており,既報と一致する結果であった。したがって,ETPの薬剤感受性試験結果は単独での判定には限界があるものの,追加検査を実施するための有用なスクリーニング指標であると考えられた。

本研究にはいくつかの限界がある。第一に,本研究は耐性機構が既知の株を対象とした性能評価であり,実臨床における耐性菌の分離頻度を反映した集団ではない。そのため,陽性的中率および陰性的中率は実際の臨床現場とは異なる可能性があり,診断性能の解釈には注意を要する。第二に,対象株数が限られており,特にカルバペネマーゼ遺伝子型ごとの評価では症例数が少ないことから,推定精度には一定の不確実性が残る。また,non-CP CREおよびAmpC β-ラクタマーゼ産生菌についても十分な株数を確保できておらず,今後さらなる検証が必要である。第三に,本研究では遺伝子学的解析結果を基準として評価を行ったが,遺伝子の保有が必ずしも酵素発現や耐性表現型を反映するとは限らない。実際に,本研究ではIMP-66産生株において表現型推定との乖離が認められており,遺伝子発現量や酵素活性などの影響については検討できていない。今後は連続分離株を対象とした前向き検討や,多施設共同研究による大規模な評価に加え,遺伝子発現量を考慮した解析が必要であると考えられた。

V  結語

以上より,NMIC-479パネルを用いたBDフェニックスM50は,カルバペネマーゼを含む薬剤耐性機構の表現型推定において良好な性能を示した。一方で,低いMICを示すステルス型カルバペネマーゼや一部のクラスAおよびDカルバペネマーゼでは検出限界が認められ,表現型に基づく推定には一定の限界が存在することが明らかとなった。したがって,本システムによる推定結果は有用な補助情報として活用できる一方,必要に応じてmCIM法などの表現型確認試験や遺伝子学的検査を併用し,総合的に評価することが重要である。

 COI開示

本発表に関して,日本ベクトン・ディッキンソン株式会社との共同研究により測定試薬の提供を受けて実施した。ほかに開示すべきCOIはない。

文献
 
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