遠隔診断には様々な形態があるが,画像伝送を用いるものとしては遠隔画像診断があり,遠隔放射線診断と遠隔病理診断の2つが主体である。近年,病理スライドをデジタル画像化する技術や画像解析処理技術,AIなどの発展,ネットワーク整備が進み,遠隔病理診断の保険診療が遠隔放射線診断に大きく遅れたもののようやく可能となった。遠隔病理診断は,従来顕微鏡画像の一部分のみの静止画で行っていた。近年WSI(whole slide imaging)というプレパラート全体をデジタル画像化する技術が確立されたことで,モニター上で病理診断を行うシステムへの移行が構想されている。この技術は遠隔診断だけでなく,日常診療や教育,コンサルテーション,精度管理などへの活用が期待される。しかし,高額なスキャナの導入,膨大な画像データの保管管理やネットワーク環境などWSI環境管理の導入は必ずしも容易ではないため,導入に際してこれらの課題を認識しておく必要がある。本章では,遠隔診断の中でも,遠隔病理診断システムに重点を置き概要ならびに運用の実際を解説する。