2009 年 12 巻 2 号 p. 94-105
本研究の目的は,日本とフィリピンにおける病院看護業務内容と観察回数の比較から,フィリピン人看護師を受け入れる際の臨床研修内容を検討することとした.タイムスタディー法を用い,1名の調査対象者に1名の調査要員が追従し,30秒ごとに業務内容を記録,コード化し業務分類表に基づき集計した.その結果,両国の内科,外科病棟で観察回数が多い上位3業務は,『書類の記録・点検』,『報告・連絡・情報交換』,『診療の介助』で共通だった.しかし,『診療の介助』に属する小項目業務は異なっていた.
一方,4位以下の業務には違いがみられた.日本では4位以降に続いた『身の回りの世話』,『療養上の指導』,『観察・巡視』は直接患者に関わるケアという特徴があり,フィリピンの4位以下の業務は,患者に直接関わるケアが少ないという傾向が明らかになった.
以上より,日本とフィリピンでは,主たる看護業務に共通性がある一方で,医療事情や文化などによる違いが認められた.フィリピン人看護師を日本で受け入れるためには,①記録や情報交換に必要な日本語の習得への継続的支援,②患者に直接関わるケアの実践能力を高める,③日本独自の看護制度や社会・文化の理解,を含めた研修が必要である.