日本看護管理学会誌
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看護職員の勤務環境改善に向けた各医療施設の取り組み:複数事例研究
木田 亮平武村 雪絵
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 25 巻 1 号 p. 20-33

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抄録

看護職員を中長期的に確保するためにはワーク・ライフ・バランス(WLB)確保を目的とした勤務環境の改善が必須である.本研究は,労働時間を含む看護職員の勤務環境改善に先駆的に取り組んでいる医療施設の看護部門責任者の語りから,施設の背景,課題,対処方針,具体的な取り組み,職員への影響を抽出し,複数の施設に共通する課題と課題に対する方略の共通性を考察することで他施設でも応用可能な参照枠組みを得ることを目的とした.2019年11月~2020年3月に研究協力の得られた5施設の看護管理者等を対象にインタビュー調査を行い,各施設の背景,課題及び具体的な取り組み内容や対処方針,組織の変化について,ナラティブ分析の一類型であるテーマ分析手法を参考に施設ごとに分析した後,課題と課題に対する方略の共通性について考察した.特定の勤務帯の担い手増加,休暇取得や超過勤務の是正,子育て中の職員の就業継続,業務負担軽減のための看護補助者の増加といった共通の課題が抽出された.具体的な取り組み内容は様々であったが,勤務帯の配置人員の変更,新たな組織の姿にむけた採用計画の見直し,データに基づく適正な人員管理,WLB制度の積極的運用と仕事への動機づけを促す職場環境の提供,WLB確保や勤務環境改善に対する看護管理者の姿勢と職場風土の醸成などが中長期的に人材確保につながり,勤務環境を改善する上で重要であることが示唆された.

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© 2021 一般社団法人 日本看護管理学会
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