日本看護管理学会誌
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原著
大学病院の副看護師長が倫理的行動をとる上で感じる困難
安田 美緒辻尾 有利子服部 美景吉岡 とも子中村 尚美吾妻 知美
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2021 年 25 巻 1 号 p. 216-224

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抄録

本研究の目的は,大学病院の副看護師長が倫理的行動をとる上で感じる困難を明らかにし,倫理的行動力の向上に向けた教育と支援体制について考察することである.対象者はA大学病院に所属する副看護師長59名(有効回答50名)である.調査内容は,臨床経験,看護倫理教育経験およびJ. Restの倫理的行動の4つの要素の枠組み(①倫理的感受性②倫理的推論③態度表明④実現)に沿って,具体的事例や自己の行動について問う自由記述とした.分析は,選択肢項目に関しては記述統計を行い,自由記述において困難について表現している文脈を抽出して内容分析を行った.自由記述の内容分析の結果,困難として【患者の尊厳が守れない】【不十分なインフォームドコンセント】【自己決定できない患者の意思決定支援】【医師とのコミュニケーション】【医療に関する価値の相違】【倫理の学習機会の不足】【指導的立場に自信がない】【ケアの不足を招く看護師配置】の8カテゴリーが抽出された.豊かな実践能力をもつ副看護師長は,臨床で多くの倫理課題に気づいているが,上記に述べた困難な状況から,倫理的行動がとれない葛藤を抱いている状態にあった.副看護師長が倫理的行動をとるためには,教育的支援として知識の享受だけでなく,倫理課題を明確化し,それを他者に伝えるために言語化する能力の強化が必要である.さらに,管理者やスペシャリストからの実践的支援が必要であると考える.

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© 2021 一般社団法人 日本看護管理学会
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