日本看護管理学会誌
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原著
地域医療計画による周産期医療再編に直面した助産師のトランジションの経験
佐藤 初美定方 美恵子
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 25 巻 1 号 p. 85-95

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抄録

目的:地域医療構想が策定される中,少子化に伴う周産期医療再編は避けて通れない課題である.本研究は,組織的移行に臨んだ助産師のトランジションの経験を明らかにする事を目的に進めた.

方法:質的記述的研究方法を選択し,医療再編後の新設病院に勤務継続をした助産師計8名を対象に,周産期医療再編に伴って起きた選択と将来展望について半構造化面接を行い,意味ある語りのデータを分類,コード化しテーマを抽出した.

結果と考察:周産期医療再編を経た助産師のトランジションの経験は,4テーマと11カテゴリ,34サブカテゴリで構成され, 4テーマは〝終わりの意識化〟〝新体制構築への相反する思い〟〝期待と現実の差異に抱く混乱〟〝礎を築く責任感への気づき〟というプロセスを示した.

助産師のトランジションの経験は,旧体制との終わりを自覚しながらも,現実味の無さや納得感が得られない苦悩を抱く事から始まった.アイデンティティの再統合が十分に行えないまま,旧体制の幕引きと新体制構築を決断した助産師は,再編後の体制に期待に反する感情を抱き,準備や知識の欠如を感じる混乱を経験した.しかし,新体制構築の責任を全うするために挑戦する直向きな意思を表わし,スタッフや患者との連帯感の気づきから移行の潜在的プロセスを促進させていった.

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© 2021 一般社団法人 日本看護管理学会
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