目的:病気を抱えながら就業している看護職に対して,看護師長が支援提供をした際の体験を記述することである.
方法:病気を抱えながら就業している看護職へ支援経験がある看護師長10名を対象に,オンライン通信を用いた半構造化面接を実施し,支援提供した際の出来事やその際に生じた思いについて経時的に自由に語ってもらった.分析は質的帰納法に基づき,看護師長の支援提供における体験が含まれる語りに着目し,カテゴリーまで抽象化を行った.
結果と考察:看護師長の支援提供における体験として,【病気に負けず頑張っている看護職を大切に思う】【師長としての役割以上に寄り添って関わる】【看護職だからこそ病気体験に意味を見出す】【立場上でのスタッフとの距離の取り方に試行錯誤する】【師長としての対応力の不十分さと直面する】【病状に合わせた個別的な介入の難しさを痛感する】【病気と仕事を両立する組織風土の構築に努める】【周囲と相談しつつ円滑な病棟運営を図る】という8カテゴリーで構成された.看護師長は,病気に負けずに頑張っている看護職を大切に思う一方で,スタッフ全体と適切な距離感で関係性を保つことへ葛藤を抱いていた.また,安全かつ質が担保された看護ケアを提供するための人材管理として,関係各所との密な関わり合いを持ちながらも,病気を抱えながら就業することを容認できる組織風土の構築に向けた対応を図っていた.