理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 254
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神経系理学療法
脳性麻痺児の膝伸展筋力と立位・歩行能力との関連
川原田 里美横山 恵里田澤 優子中村 あゆみ
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抄録
【目的】
膝伸展筋力は下肢の支持性を反映する筋力指標であり、身体に障害をもつ人の移動能力に影響を与える重要な要因といわれている。この研究の目的は、脳性麻痺児の膝伸展筋力と立位・歩行能力との関連について調査することである。
【方法】
対象は歩行可能な脳性麻痺児27名。粗大運動機能分類システム(以下、GMFCS)レベル1が11名、レベル2が9名、レベル3が7名であった。年齢は4歳~18歳(平均9.4歳)であり、麻痺型は片麻痺4名、両麻痺23名であった。
筋力測定はアニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターμTasMF-01(以下、HHD)を用いて行った。測定肢位は背もたれなしの腰掛座位で座面に両手でつかまり、下腿下垂位(膝90°屈曲位)とした。HHDのセンサーは下腿遠位部前面にベルトで固定して下腿後面のベッド支柱と連結させ、3~5秒間の最大等尺性収縮を約5秒の休息を入れて5回測定した。左右それぞれの最大値から筋力体重比を算出し、左右平均を求めて膝伸展筋力値とした。筋力測定と同時期(2週間前後)に粗大運動能力尺度の立位の領域(以下、GMFM立位)と歩行・走行およびジャンプの領域(以下、GMFM歩行)を実施した。
GMFM立位およびGMFM歩行のスコアと膝伸展筋力値との関連はSpearmanの順位相関係数を算出した。GMFCSレベルごとの膝伸展筋力値の比較にはKruscal Wallis検定および多重比較検定を用いて有意水準を5%とした。
【結果】
膝伸展筋力の平均値は、0.43±0.16Kgf/Kg、GMFMの平均スコアは立位76.8±22.8%、歩行66.5±28.4%であった。GMFM立位およびGMFM歩行と膝伸展筋力値との相関は、GMFM立位と膝伸展筋力値でrs=0.637(p<0.01)、GMFM歩行と膝伸展筋力値でrs=0.626(p<0.01)であり、GMFM立位、GMFM歩行ともに膝伸展筋力値との相関が認められた。GMFCSレベルごとの膝伸展筋力の平均値は、レベル1で0.51±0.14Kgf/Kg、レベル2で0.46±0.15Kgf/Kg、レベル3で0.26±0.07Kgf/Kgであった。これらは3群間比較で有意差が認められ、多重比較検定ではGMFCSレベル1とレベル3、GMFCSレベル2とレベル3の間で有意差が認められた。
【考察】
歩行可能な脳性麻痺児では、膝伸展筋力は立位・歩行能力と関連があり、膝伸展筋力が脳性麻痺児の粗大運動能力を示す有用な指標となることが予測された。このことは、歩行可能な脳性麻痺児に対する筋力増強のための介入が立位・歩行能力に前向きの変化をもたらす可能性を示していると考えられた。GMFCSレベル1とレベル2の児では膝伸展筋力値に有意差がみられなかったことから、対象者数を増やすとともに膝伸展筋力以外の下肢の抗重力筋の筋力についても調査していく必要があると考えられた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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