2024 年 28 巻 1 号 p. 143-152
【目的】看護管理者の医療安全管理行動のうち,事故後対応ではなく先行視的に対応する医療安全管理行動(以下Safety-Ⅱ)の関連要因を明らかにする.
【方法】医療安全対策加算1を届出している19病院に勤務する看護管理者876名に自記式質問用紙を配布し,そのうち回答欠損等を除いた377名(有効回答率43.0%)を分析対象とした.医療安全管理行動のうち能動的な医療安全管理行動であるSafety-Ⅱに該当する13項目を従属変数,医療安全に関する経験・組織からの支援の有無,および医療事故後における困難感を独立変数としたt検定を行った.その後,性別,経験年数を調整変数として投入した共分散分析を行った.
【結果】インシデントレベル 3b以上の経験,家族から事故経験を活かしてほしいと言われた経験,医療安全管理部門の対策立案の支援,医療安全管理者の病棟ラウンドがある方が,医療安全管理行動の得点が有意に高かった.また,事故後に医師の協力が得られない,医師や上司との情報共有や部署の危機管理意識を持続させることに困難を感じている方が医療安全管理行動の得点が有意に低かった.
【考察】看護管理者のSafety-Ⅱの医療安全管理行動は,医療事故の経験,家族との関わり,医療安全管理部門からの支援が促進する要因,医師との関係性が阻害要因となることが示唆された.