2024 年 28 巻 1 号 p. 41-52
背景:日本人の51.0%は,治癒を見込めないときは自宅で最期を迎えたいと望んでいるが,70%は病院で最期を迎えている.
目的:霊的理由から自宅死の慣習があり,2019年の自宅死の割合が40.0%であった鹿児島県与論町の女性が望む最期の環境とその社会的障壁を明らかにすること,とした.
研究方法:半構造化インタビューから得られたデータを質的帰納的に分析した.
結果:対象者11名のうち,2名は自宅での最期を望んだ.対象者の多くは,自分が日常生活に介助を要する状態になった期間の「過ごし方」に重きを置いて語った.一方,身近な人については,本人が望むなら自宅での最期を支持し,みずからも自宅療養を手助けする心づもりであった.社会的障壁には,自宅看取り実現への困難な体験や物理的環境・地域の規範が語られた.
考察:対象者は,自宅死を否定する意図はないと考えられたが,過去の経験から,自分の最期の時には,自宅を望めないことが推察された.社会的障壁として,性差に基づく役割意識,在宅支援体制不足が考えられた.今後,希望する最期を迎えられる地域にするために,家族外支援の希求が許容される地域規範の変化への支援,互助活性化の促進,死について体験を通して学ぶ機会の創出,が考えられた.看護管理者には,個々の看護師が捉えた個人のニーズから地域課題を整理し,他機関と協働して地域包括ケアシステムを推進していく役割が期待されている.