本研究では,保健政策の改定を受け,地域に根ざした健康教育プログラムへのニーズが高まっている現状から,地域における健康教育プログラムの設立から評価までの過程を分析し,看護職の保健政策実施における役割を提言する.「健康日本21」のもと健康教育プログラムの強化が推奨され,健康増進が個人と社会全体の両方に利益をもたらすと考えられている.また,日本と同じように高齢社会をむかえようとしているアメリカでは,「Healthy People 2000/2010」という国レベルの政策とその達成目標をもとに,高齢者向けの健康維持増進がすすめられている.今回アメリカで実施した地域の健康教育プログラムBABS(Be Able Be Satisfied)では,対象と地域のもつ特性を反映させたプログラムにする必要性が大きかった.保健政策は国のレベルでたてられるが,プログラムの実施は地域レベルで行われる.それぞれの地域の独自性を尊重したプログラムにするためには,計画段階でのニーズ・アセスメントは地域レベルで統合的に行われることが求められる.ここではBABSプログラムの例を用いて,地域レベルでの健康教育の計画から実施,評価の段階を分析する.BABSプログラムの開発にあたっては,サンフランシスコ市内に住む日系人高齢者の健康増進プログラムとして,米国保健政策の理念をもとにすすめた.BABSプログラム計画を実際に運営するにあたっては当初の計画を計画の実施前に再考し変更を加えた.そして,プログラム評価から,このような計画調整段階の有無はプログラム効果の成功を左右することがわかった.本稿では,この分析過程をとおして,地域レベルの活動と国の政策をつなぐ立場にある看護職の政策決定過程における具体的役割を明らかにする.