2008 年 18 巻 1 号 p. 21-31
本研究の目的は、救急初療下における患者の率直な思いを探索することによって、患者の体験の構造を明らかにすることである。救急初療を受けた心臓・血管系に障害をもつ患者15名を対象とし、対象者の全身状態が安定した時点において半構成的面接を実施した。
その結果、患者の体験からは【信じて身を委ねる】【自分が自分でない感覚】【現状への驚愕】【今後をイメージできる情報を希求】のカテゴリーと、これらに関係づけられる『生を求め捉えようとする』コアカテゴリーが生成された。患者は、著しい症状と非日常性の中で専門的支援を受けながら、自分自身で生きることを求め、生に意識を向けてその場に存在し状況を見極めていた。
救急初療に関わる看護師には、この患者の思いを的確に把握し理解するための実践能力、とりわけ生の危機的状況下にある患者の人間理解をふまえたコミュニケーションスキルの習得が必要である。
本研究結果は、救急初療を受ける患者への理解を促し深めることに寄与すると考えられる。