2016 年 12 巻 p. 1-11
本稿は、スウェーデン企業のコーポレート・ガバナンス体制における従業員代表制の役割を、先行研究のアンケート調査の内容をもちいて明らかとした。取締役会における従業員代表は、労働組合によって選出されており、取締役会から職場への速やかな意思決定の伝達を行うとともに、限定された範囲ながら、職場の意向や情報を取締役会へ直接伝えるという、双方向の情報伝達機能を担っていたと考えられる。このような機能をもつ従業員代表制と、それを含むステークホルダー型コーポレート・ガバナンス体制は、労使協調体制の下で20年以上にわたり安定して継続し、スウェーデン企業の特質を形成してきた。ただし近年では、ステークホルダー型コーポレート・ガバナンスの機能が近い将来に低下しうる兆候もみられる。