フィンランドの教育輸出プロジェクトは、2010 年に策定された教育輸出戦略を出発点として本格的に開始した。主要言語圏の高等教育での展開にほぼ独占された国際教育市場においてユニークな存在である。本稿は、このユニークネスを生み出した背景について、政府公式文書、専門家への聞取調査結果等をもとに、教育輸出に至った経緯と理由、他国の一般的な状況との比較、事例を通じて、2010 年代半ばまでの状況を検討した。フィンランドは、高等教育だけでなく、初等・中等教育を含めた教育システムを商品とするという独自性を活かし、新たな市場開拓をしつつある。このような独自性を持つ一方で、事業展開を詳細にみると、留学からオフショア教育へ、開発から貿易へという国際教育市場の2 つの大きな変化に沿ったもので、途上国等での高等教育需要などの環境変化の増大に対応したものであった。