北ヨーロッパ研究
Online ISSN : 2433-4596
Print ISSN : 1880-2834
ISSN-L : 1880-2834
論文
フィンランドにおける普遍主義の特質とベーシックインカム社会実験
徳丸 宜穂柴山 由理子
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 15 巻 p. 13-24

詳細
抄録

ベーシックインカムは、個人を対象にした無条件の現金給付によって一定程度の生活を保障する構想である。フィンランドでは2017 年1月より世界初の国単位での社会実験が行われており、国際的な注目を集めている。本稿は、フィンランドにおけるベーシックインカム構想とその社会実験の歴史的・政治的・経済的コンテキストを明らかにすることと、ベーシックインカムとその社会実験が、フィンランドの福祉国家の刷新にとってどのような意味を持ちうるのかを検討することを目的とする。結論は以下の通りである。(1)ベーシックインカムはフィンランドに特徴的な普遍主義の自然な帰結であり、ラディカルな手段とは言えない。(2)ベーシックインカムは短期的および長期的な問題解決策として広範に支持されるが、前者へと換骨奪胎される傾向がある。(3)北欧福祉国家の刷新手段としては限界があるが、議論の起爆剤としての可能性を持っている。

著者関連情報
2019 『北ヨーロッパ研究』に掲載された著作物の著作権は,著者に帰属するものとします.
前の記事 次の記事
feedback
Top