抄録
デンマークの大学改革は、1990年代から進められてきた。2000年代以降の大学改革には次の三つの契機があった。第一に、2003年の大学法改正である。このときに、大学の理事⻑を含む理事の過半数を、大学の外部から選出する自己統治組織となることが要請されるようになった。第二に、独立採算制の導入である。特に土地所有ルールの変更が大きな影響を 与えた。第三に、2012 年の研究費配分モデルの変更である。論文刊行数といった業績に応じた配分方法が導入された。2021年6月には、デンマーク議会が「特定研究分野における過度なアクティビズムについて」という動議を可決するなど、学問の自由のあり方が継続して議論の的となっている。デンマークの大学改革からは、まずは財政的な問題が提示され、次に統治機構の改革が行われたのちに、研究費や研究内容に対する政府の介入が始まる、といった一連の動きを確認することができるのではないか。