抄録
スウェーデンの1998年の養育規定改正で、「子どもの最善」 を最優先することが謳われ、一方の親が異議を唱えても共同養育権の判決が可能となる。2006年改正では、共同養育できる両親の能力や子どもの被るリスクへの留意を規定する。2004-05年の地方裁判所の養育訴訟の事例分析から、養育権訴訟では3 段階の判断プロセスがあり、 そこで‹養育者適性›や‹現状維持›の原則の作用を明らかにした。また、居住訴訟では‹安定化・ 現状維持› ‹子どもの意向尊重› ‹きょうだい同居› の原則、面会訴訟では‹規則的面会設定› ‹リスク回避› ‹子どもの意向尊重› ‹性同一化のモデル› の原則を析出した。「子どもの最善」 の学術的知見が流動的である今日的状況において、「子どもの最善」の「法システム」 内での一貫性は担保されず、 養育判決は社会環境に強く影響を受けている。判決ではジェンダーに公平であり、母親ないしは父親により厳しい基準を設けているわけでない。