北ヨーロッパ研究
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研究ノート
ノルウェーにおける少数先住民族の教育に関する考察
キリスト教布教期の南サーメ地域における寄宿制「サーメ学校」
長谷川 紀子
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 9 巻 p. 73-82

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抄録

ノルウェーでは、ナショナルカリキュラムの中で、サーメのための教育の項が設けられ、サーメが居住する地域の学校で示唆に富んだ実践が展開されている。特に、南サーメ地域は、現存するサーメ学校における言語教育の保障や、1800年代後半のノルウェー化政策期におけるサーメ学校設立の要求運動など、サーメ教育に重要な役割を果たしてきた。本稿は、南サーメ地域の教育の特質を明らかにする研究の第一段階として、キリスト教布教期の「サーメ学校」に着目した。この学校の実態を詳細に描くことにより、キリスト教布教を目的としたサーメへの啓蒙活動が、当時の南サーメの教育に与えた影響を明らかにした。キリスト教化と国防・ 国家統治を主目的とする布教活動であったが、結果的には、サーメ社会で尽力した宣教師による「サーメ学校」が、サーメの生活向上の一端を担いサーメ教師を育成した。それは、南サーメ地域における教育の源流ともいえる。

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2013 『北ヨーロッパ研究』に掲載された著作物の著作権は,著者に帰属するものとします.
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