抄録
ニホンザルの分娩とその行動を取上げて母子関係をみた。分娩に関する手掛りを得る為に指標として一般的行動と身体的生理的変化とをとりあげた。分娩に関する確実な手掛りは得られなかった。分娩期における出産, 産後処理の一連の行動の生起については取扱い方や時間的ずれがみられたにも拘らず同様の過程がみられた。母ザルは分娩後新生児の顔面をなめ順次産後処理を行った。産後処理に際し後産を食べたにも拘らず臍帯は残した。新生児は産声を発せず生後6分以上経過して単音を発した。母子ザルの結びつきは新生児の音声によって新しい段階に入った。産後処理が進むにつれ, 母ザルの注意は新生児や外界に向いた。考察にあたって屋久島ザル (初産+長期飼育) 対勝山ザル (経産+野生), ニホンザル対他種族猿類, 猿類対人類等の比較が試みられ, 分娩時における問題点がとりあげられた。