1973 年 22 巻 2 号 p. 71-81
本実験は海馬脳波に関する諸説, 特にVANDERWOLF (11, 12) の仮説と比較検討するために, シロネズミを使って, 自由行動時とMILLER-MOWRER boxでの電撃回避学習時の海馬背側部脳波を分析することを目的とする。
自由行動時において, 海馬θ波を伴なう行動は移動を伴なわない頭部の動き, 体動, searching, およびrearing, locomotionであり, 一方, 脱同期はgrooming, sniffing, licking, food intake時に出現した。動きがみられない時は主として不規則波であったが, θ波が出現する場合もあった。
電撃回避実験では, 試行につれて, 7~9, 9~11Hzの規則的な海馬θ波が出現するようになった。また, 回避反応が十分安定した時点ではCS呈示直後から動物の動きの有無に関係なく7~9Hzの規則的な海馬θ波が出現するようになり, 回避反応に伴ない9~11Hzの速いθ波に移行した。
このことは, 海馬θ波が単に随意運動と一義的に関係しているのではなく, 覚醒水準ないし一般的注意とも関係していることを示唆するものである。