動物心理学年報
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Elマウスの行動発達とけいれん発作における遺伝と母親環境の分析
児玉 典子佐藤 比登美関口 茂久
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1987 年 37 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

遺伝的にてんかん性のけいれん発作を起こすElマウスは情動的特徴を持っているとされているが, その行動的特徴はこれまでほとんど知られていない。本研究では, このけいれん発作が発達的に変化するとされているところから, Elマウスの行動発達特性 (特に情動的反応の発達), その遺伝的優性度, それらに及ぼす母親環境の効果, 行動発達とけいれん発作との関係を, Elマウス, その祖先系統であるddNマウス, これらの間の正逆交雑によって得られた雑種第一代 (F1) を用いて検討した。その結果, ElマウスはddNマウスに比較して情動的反応の発達が早いことが明らかになった。また, 行動発達の遺伝的優性度は, 完全優性, 部分優性, 超優性と, 様々であった。これらのことは, 行動発達への遺伝要因の規定は強いが複雑であることを示している。正逆交雑による母親効果は情動的反応に顕著に認められ, 受精から出生後にかけての母親環境の影響が大であることが明らかとなった。けいれん発作の発現率はElマウスでは100%であったが, ddNマウスでは18.8%, F1では15.6%であり, F1はddNマウスに類似した。この結果は, Elマウスの発作の発現が優性であるとされていることと矛盾している。情動的反応の発達とけいれん発作の発現との遺伝的対応を認めることは困難であった。

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