ノンプロフィット・レビュー
Print ISSN : 1346-4116
研究論文
格差感と幸福感形成におけるコミュニティ機能と機会の公平の役割
八木 匡
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 11 巻 1 号 p. 21-31

詳細
抄録
本研究は,移動性の状態を明らかにした上で,格差感及び幸福感がどのような要因によって決定されるかを明らかにする中で,コミュニティ機能が与える影響について分析した.その結果,コミュニティの相互扶助機能の向上は,格差感に対しては大きな影響を与えないものの,幸福感を増大させることが分析結果から確認された.これは,格差感が格差の公平性に関する認識によって大きく決定されているのに対し,幸福感については生活の安定感が大きな決定要因になっていることを示唆している.コミュニティ機能の向上をもたらすソーシャル・キャピタルは,人々の地域社会での助け合いといったリスク回避能力を高め,幸福感に影響を与えると考えられる.経済成長に伴う所得の上昇が,雇用の不安定化とかコミュニティ機能等の社会構造を変化させる場合には,本稿の分析結果は,幸福感を逆に引き下げる可能性を示唆している.
著者関連情報
© Japan NPO Research Association 2011
前の記事 次の記事
feedback
Top