抄録
日本のNPO法人界においては,「活動成果をあげるためのマネジメント」より上のレベルで,組織全体を指揮,制御し,アカウンタビリティを果す「ガバナンス=統治」に関する議論が欠けている.NPO法においては,理事の職務・役割,理事と総会・事務局との関係などを規定するガバナンスの構造を明らかにしていない.理事の選任が社員総会の議決事項とされていないことは特に問題である.一方,アメリカのNPOにおいては,理事会がガバナンスの頂点にたち,社会全体に対して公益を守っていく受託者責任,アカウンタビリティを負うとされるが,この理論と実態との間には差があり,さまざまな改革が提言されている.我が国においても,NPOガバナンスの構築は,NPOのマネジメント力を伸ばし,その社会的信頼性を高めていく上で重要な課題である.各NPO法人は,定款と組織を見直し,アカウンタブルなガバナンスの仕組みに変えていくべきである.